長崎先生講義録
倫理・動向・自己陶冶・学習法 2002.9/1

ストレッチの効用
 カラダのウォーミングアップから。カラダを前に曲げ、図のように前屈する。もちろん個人差があり、床に指先が届く人もいれば、届かない人もいる。

 そこで次のようなストレッチを行う。まず両手の指先をつけ、人差し指同士をくるくる10回まわす。さらに逆方向にもまわす。それを人差し指から順に小指まで行う。その上でもう一度前屈すると、不思議なことに先回よりもカラダがよく曲がるようになる。

 ストレッチをするとなぜケガが起こらないのか。人間のカラダ、筋肉には可動域というものがある。それ以上のばせば壊れる、という範囲である。だがバレーボールなど瞬発力型のスポーツでは可動域を超えてカラダを動かすことがある。可動域を超えて力がかかれば、切れたりケガをしたりする。そこで、あらかじめストレッチをして可動域を広げておくことが大切になるのである。

 また前屈の際、よく曲がるようにと上から押したりするが、まったく逆に、もう一人が上から押さえ、当人はそれに反発して押し返して起きあがるトレーニングを何度か繰り返すと、筋肉が伸びてまたよく曲がるようになる。上から無理矢理力を加えると、実はこれは防衛反応が起きてしまう。

 「これはいいから」と「やりなさい、やりなさい」と力を加えると反発の力がかかる。かえって逆のことをしたほうがうまくいくこともある。



カウンセラー
 カウンセラーになるにはどうしたらよいか。医師には医師免許があり、詐称すれば罪に問われる。だがカウンセラーにはそのような資格はない。したがって「自分はカウンセラーである」と名乗ればよい。

 カウンセリングの世界で有名な人物に河合隼雄という人がいる。箱庭療法を日本に広めた人で、臨床心理士の資格を作った人物である。これを西の先生とすると、一方東には國分康孝という先生がいる。國分先生は長崎先生の筑波大学大学院での指導教官である。

 さて、様々な情報が本となって溢れているが、書物になるような例は成功例である。業績や、「たくさんの著作があるから」という理由でエライ人だなと恐れ入ったりするが、実はそんなことはない。國分先生にしても、江崎玲於奈にしても言行不一致の部分や端から見ておかしな部分は当然ある。その人の本質的な部分は変わるものではない。

河合隼雄 かわいはやお 1928〜 
 臨床心理学者。兵庫県多紀郡篠山町(現、篠山市)生まれ。兄に霊長類学者の河合雅雄。弟に脳神経学者の河合逸雄(故人)がいる。
 カリフォルニア大学にてユング心理学をまなぶ。さらに、62年スイスのユング研究所に留学、ユングの高弟といわれるマイヤーらのもとでまなび、65年に日本神話をテーマに日本人ではじめてユング派分析家の資格を取得した。
 スイスの分析家カルフが考案した箱庭療法を日本国内に普及。イメージや夢を積極的に素材としてもちいるユング派の分析技法を洗練させ、日本での心理療法実践の土台をつくった。88年には日本臨床心理士資格認定協会を設立。心理技術者の専門的職域を確立した。

江崎玲於奈 えさきれおな 1925〜
 日本の物理学者。半導体の研究をおこない、量子力学のトンネル効果を実験によって確認し、1973年にノーベル物理学賞を受賞。さらにこのトンネル効果を応用して、エサキダイオードとよばれる画期的な素子を開発した。
 5代目の筑波大学学長に就任するため、32年間の滞米生活に終止符をうって帰国した際は、「頭脳転職」といわれた。在任中は、学生との対話を重視し、独創性をそだてる大学と社会のあり方について積極的に発言をつづけた。

 

悩み
 悩みのない人は世の中にはいない。だれかしら悩みはあるものである。悩みの構造は、通常図のように理想と現実の間のズレから生じる。

 理想と現実に差があれば欲求不満が生じる。キレる、というのも思い通りにならないという欲求不満から起こることが多い。これを乗り越えるには「モデリング」が必要である。 理想に近づけようと努力することで、実際にうまくいったのは1970年代までである。そのころまではテレビ、冷蔵庫が入る、というように生活の向上が実感できた。しかし現在では、子どもの頃からそういったものに触れているので努力と結果が結合しない。

 子どもが鉛筆を削れなくなった、などと言うが、それは鉛筆削りができたからである。さらに電動鉛筆削りができ、危険を避けるストッパーが装備され、こうして子どもたちの危険回避能力は低下していく。



後半
カウンセリングとは

 カウンセリングとは「トラブルを抱えた人に対する援助的な人間関係」といえる。これはあくまでも援助であり、問題を解決するのは本人である。

 そしてカウンセリングの本質はリレーションにある、といえる。「良好な関係」とは、と考えると、信頼できる、平等である、安心できる、心が開かれる、気にならない、本年で話し合える、心で通じ合う、苦痛でない、誤解がない、イヤな感じがしない、などいろいろな考え方があるが、「お互いに欲求が満足している状態」と考えることができるのではないだろうか。これ「良好な関係」の反対の状態をイメージするとよくわかる。

 カウンセリングの対象になる人は、周囲と上手に人間関係を結べない。それは「周囲と満足できる人間関係を作れない」と言い換えてもよい。例えば「よい子」といわれる子は、実は様々に自分を抑え、欲求をがまんしていることが多い。それが不適応の原因となるのである。



カウンセラーの条件
 例えば「夏休み、勉強できなかったんだよー」と生徒に言われたとき、勉強のできる子どもだった先生は「努力が足りないんだよ」としかいうことができない。自分ができなかった、またできなかい子どもの気持ちが理解できて「そうか、頑張ろうと思ったんだけど、できなかったんだよね」と気持ちに沿った返答ができる。

 実はそれが上手なのはスナックのママである。「会社でこんなことがあってさ」という愚痴に「それは辛かったね」「あんたは悪くないよ」と返す。「あんな高いビールを飲むなんて」と言う人もいるが、高いビール代には、そういう部分も含まれているのである。

 これができるようになるためには、自己分析をすることが大切である。未開民族は必ず一日一回「魂の時間」とも呼ばれるメディテーション(瞑想)の時間を持つという。一人で、また集団で、今日一日がどんな日であったか思い起こし、自分を振り返るのである。現代の生活に一番欠けているのは、そういった時間ではないだろうか。

 カウンセラーの条件としては、「様々な人と接すること」が挙げられる。つい同じ仕事の人とばかり接することが多いが、いろいろな人のものの見方、考え方を知ることは重要である。
 (文責:菊田)
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