長崎先生講義録
こころのなりたち 2003.6/1

現代の読み・書き・そろばん
 「お金があれば」「時間があれば」。つい人はそう言う。そう言うのは、実は面倒くさいからである。面倒くさいのを誰かのせいにしているのだ。人のせいにした方がラクなのだ。ある意味、文句を言うのは楽しい。はけ口になるからである。例えばマスコミなどが「学校が悪い」と言うと、それに乗って全てを学校のせいにする人がいる。これも同様である。ただマスコミの言う通り繰り返しているだけであり、マスコミ教(狂)と言える。久米宏や筑紫哲也の言うことをそのまま受け容れれば「考える」ことすら必要ない。そういう意味ではマスコミは「考えない人」を生産している、といえる。
 子どもがモノを買って欲しいとき、よく「みんな持ってる」と言う。そう言われるとつい親は買ってしまうのだが、「うちは違うんだよ」ということを教えるのが「個性」ということのはずである。
 ある人は、「一番大切なことは『読み・書き・そろばん』」だという。現代風に言えば「読み」とは「情報を得ること」であり、「書き」とは「情報を発信すること」、そして「そろばん」は「経済的に自立すること」である。多くの人は「読み=情報を得る」ことには取り組んでいるが、「書き」即ち「情報の発信」が足りないことが多い。いくら学んでもその気のないことはなかなか覚わらないし、進まない。学ぶときにはそれをどう活用するか考えながら取り組んだほうがよい。

T字の法則とは
 講演などの出席者の座る位置とやる気の関係を現した「T字の法則」というのがある。
聞く意思のある出席者は前列か、会場の真ん中に座ることが多い。一方、後方の隅には研修として命じられたり、数あわせで出席させられた人など、意欲のない人が多い。前で話をする時は、聞く気のない人に向かって話をしても仕方がない。T字ゾーンに並んでいる意欲の高い人に向かって話すのがよい。
保護者を静かにさせる方法
 最近、授業参観を行うと、後ろの保護者が騒がしいことが多い。これを嘆くのもいいが、対処法は別にあるのではないだろうか。例えば参加型にすることで、親も一緒に共同して何かやるカタチにすればよい。普段教員は、子どもたちに「あの先生はすごい」と思ってもらえるような授業をしようと思っているはずである。同じように保護者にも「あの先生はすごい」と思ってもらえる授業をすればいいということである。社会が豊かになり、周囲の生活レベルが上がれば相対的に学校に対する見方は下がることになる。学校はサービス業である、という視点に立てばこれまでとは違う発想ができるはずである。

タンスと心の
 具合の悪い子を更正させるにはどうしたらよいか。ある人は「親に弁当を作らせる」ことがポイントだという。その弁当を見て、先輩の職人さんが「立派な弁当だなぁ。お前も早く一人前にならなきゃダメだぞ」などと話しかける、これによって自分がいろんな人からの援助を受けて今の自分があることに気が付くのだ。そして今度は自分が人を助けられる人になろうと考え、世話になった恩を返そうとするようになる。恩が増えれば人とのつながりが増えることになる。
 このような心理療法に「内観法」というのがある。2畳ぐらいのスペースに1週間ほど泊まり込み、一日中「してもらったこと」「して返したこと」の2つを思いだしていくのである。
 心の中というのはタンスと同じであり、全部空けない限り整理はできない。全部すっきりさせてはじめて全体を整理できる。

心理テストの活用
 カウンセラーは自己分析が重要だと言える。つい他人を治そう、治そうとしてしまうが、これは自分を治したくないからという面がある。教員のカウンセラーは自己分析をせずにやっている人が多い。カウンセラーはきちんと自己分析をすることが必須である。
 自己分析に有用な心理テストの1つにSCTSentenceCompletionTest文章完成法がある。その中にTSTTwentyStatementsTest20答法と呼ばれるものがある。「私は〜である」という文章を20文書くというのである。
 人には「外面」と「内面」がある。外面は客観であり、内面は主観である。客観の部分は誰が見ても同じだが、主観の部分はさまざまである。「私は充実しています」とポジティブに書くか「私は悩んでいます」とネガティブに書くか、それは自分自身の自分自身に対する認知のしかたを表しており、それはその人のクセといってよい。そこで、できるだけ何か1つ「よかった」を見つけるクセをつけるとよい。子どもの頃は楽しい事ばかりであることが多い。だが大人になるにつれ、要求が高くなり不満も増えてくる。活き活きと生きている人は「自分も縛られているが、相手もみんなも縛られている」と考え、その中で上手くやろうと思える人である。心底自由な人など存在しない。それは子どもだけである。ただ大人は自分自身の式をポジティブに変えていくことができる。

 後半
グループワーク「円卓ミステリー」

 次の内容のカードから出席者9人の座席配置を考える。ただし、テーブルは円卓である。

1 園田氏と小川氏は隣り合っていません。
2 山川夫人と高田夫人とは隣りあっていません。
3 小川夫人は小川氏のひとつおいて右隣にすわっています。
4 のり子嬢は山川夫人の妹です。
5 山川氏の左隣にも2人の女性、右隣にも2人の女性がならんですわっています。
6 園田氏は園田夫人のひとつおいて隣にすわっています。
7 高田氏はのり子嬢の2つおいて隣にすわっています。
8 小川氏は園田夫人の弟です。
9 小川夫人は、実の息子と実の娘の間にすわっています。
10 園田夫人は2人の男性の間にすわっています。
11 山川氏は入り口に背を向けてすわっています。

 かなりの時間を費やしたが、結局座席配置を明らかにすることはできなかった。
 もう一度考えると、次のようになる。


解法
 まず、出席者をリストアップする。単純に名前を挙げると、

  園田氏、小川氏、山川夫人、高田夫人、小川夫人、
  のり子嬢、山川氏、園田夫人、高田氏

 の9人となる。だが文中には

  小川夫人の実の息子、小川夫人の実の娘

 が登場する。さらに

  小川氏は園田夫人の弟である、のり子嬢は山川夫人の妹である

 という情報もある。混乱するので、登場人物を男女別に整理すると次のようになる。

園田氏
小川氏(園田夫人の弟)
山川氏
高田氏
園田夫人
小川夫人
山川夫人
高田夫人
のり子嬢(山川夫人の妹)
名前が挙がっており、
存在が明らかな人
小川夫人の実の息子 小川夫人の実の娘 名前不明で重複している
と考えられる人
計4名 計5名


 たくさんの人間が出てくるので、訳がわからなくなるが、全員で9人だということは指定されているので、名前が挙がって存在が明らかな9人で全員であり、それ以外の名前が不明な人は、明らかな9人の誰かと重なっていると考えられる。また男性が4名、女性が5名であることも確認しておきたい。

 その上で、座席位置を確定していく。
 まず、

  11 山川氏は入り口に背を向けてすわっています。

 これにより、山川氏の位置を固定する。
 次に、

  5 山川氏の左隣にも2人の女性、右隣にも2人の女性がならんですわっています。

 ことから、両隣の合計4人が女性であることがわかる。
 すると、残りは4席である。女性は全員で5人なので、残りの1人がこの4席のいずれかに座ることは明らかである。また山川氏以外の男性は3人であるので、この3人もこの4席に座ることになる。結局、この4席に座るのは男性3人と女性1人であり、男性3人とは山川氏以外の園田氏、小川氏、高田氏であることがわかる。

 さらにこの4席について考えると、

  10 園田夫人は2人の男性の間にすわっています。

 とある。これが成立するのは、この4席の中でしか考えられない。従ってこの4席に座る女性とは園田夫人であることがわかる。結局この4席に座るのは、園田氏、小川氏、高田氏、園田夫人であることになる。また園田夫人が4席の両端に座ることはないことも明らかである。
 次いで、

  1 園田氏と小川氏は隣り合っていません。
  6 園田氏は園田夫人のひとつおいて隣にすわっています。
  10 園田夫人は2人の男性の間にすわっています。






 この3つの条件が成立するのは、上図のように園田氏と小川氏が4席の両端である場合だけである。また園田夫人は小川氏の隣に座ることになる。
 さらに、残りの席には最後の男性である高田氏が来るはずである。これで4席の配置が確定する。ただし、鏡像(左右逆)である可能性はある。



 今度は、この4席が鏡像(左右逆)のどちらかであるか決定する。
 これは、

  3 小川夫人は小川氏のひとつおいて右隣にすわっています。
 
 が鍵となる。円卓であるのでそもそも「右隣」とはどちら側なのかと迷うかもしれないが、「自分が皆と円卓を囲んでいるとき、自分の右隣はどちら側か」と考えればわかるだろう。
 小川夫人は山川氏の左隣2席か左側2席のいずれかに座っているはずである。以上を考え合わせると、先ほどの4席の鏡像2パターンを並べて成立するのは、下図のような配置しかあり得ない。さらに小川夫人の座席も確定する。





 次に、

  9 小川夫人は、実の息子と実の娘の間にすわっています。

 これにより、山川氏が実は小川夫人の実の息子であることが判明する。
 さらに、

  7 高田氏はのり子嬢の2つおいて隣にすわっています。

 これにより、のり子嬢の座席は山川氏の右隣Aであることが確定する。
 残りの座席はBCの2つとなる。まだ座席が判明していないメンバーを考えると、ここに来るのは山川夫人と高田夫人のいずれかである。
 これは、

  2 山川夫人と高田夫人とは隣りあっていません。

に合致する。だが、山川夫人と高田夫人のどちらがBCに来るのかは座席情報からは判断できない。
 しかし、小川夫人の隣の席Bに座るのは小川夫人の娘であることが明らかになっている。 そこで血縁関係をまとめて家系図を書いてみる。
 まず、

  4 のり子嬢は山川夫人の妹です。
  8 小川氏は園田夫人の弟です。
  9 小川夫人は、実の息子と実の娘の間にすわっています。

 これにより、





 の2つの家系図が描ける。
 さらに、これまでに「小川夫人の実の息子とは山川氏のことである」ことが判明しているので、2つの家系図がドッキングして次のような家系図となる。




 これにより、「山川夫人は、小川夫人の実の息子の嫁にあたる」ことがわかる。このため小川夫人の実の娘が山川夫人であることはあり得ない。結局小川夫人の隣に座る実の娘は高田夫人であることがわかる。
 また園田氏と園田夫人、高田氏と高田夫人は当然夫婦であるから、最終的には次ページのような家系図が完成する。また、最終的な座席配置も次ページのようになる。

最後に
 このようなグループワークの後ではきちんとシェアリングをすることが重要である。集団には自己組織力があり、集団が集団で規範を作る。そのことを伝えていくことが大切ではないだろうか。



 (文責:菊田)
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