八十川先生講義録
不登校(2) 2000.7/19
 引き続き、200事例以上(300くらい?)の不登校児との関わりの中からお話をしていただきました。

<復習>
「不登校」とは、「学校に行けない」という「症状名」
  体が弱い、お金がないといった事例を別にすると「年齢相応の行動(=学校へ行く)ができない」ということ  

9 最初の不登校
・1950(昭和25)年代、岡山の児童相談所で 佐藤修策心理士(当時)不登校が「発見」
・世界的には1941年Jhonsonがschoolphobia(学校恐怖)として報告
・八十川先生の経験では1978ドイツ・ボンのギムナジゥムでは「不登校は全くないわけではない」
・昔は「学校に行けない」という子はそれほど存在しなかったはず  

10 原因
〜人は周囲と調和しながら生きていく → それがうまくいかなくなる=不登校
@母親との人間関係=愛されているという実感(=「耐える力」の根底にあるもの)
A育てられ方 
・過保護・過干渉で面倒を見すぎた子供は不登校になりやすい
・過保護・過干渉=面倒を見すぎる=親が先にやってしまう=子供が色々体験できない=子供が育たない
・試行錯誤で子供は学習する。過保護・過干渉は子供をダメにする。
・こうした子は、失敗することを悪いことだと思いこんでいる。
・校内暴力で暴れる子は100人が100人「こんな俺に誰がした」と言う。過保護に育てられる=力がない=自分で生きている実感がない=劣等感を持つ・自信がない
・オオカミに育てられるとオオカミらしくなる。子供は本来白紙であって教育して初めて文字・色が描かれる。2本足で立つ・歩くことですら教えられなければできない。  

11 背景 ・母親(=女性)の社会進出
・母乳と人工乳。人工乳の方がschoolrefusalが多いのでは?  

12 ほめる
・子供をほめることは大事、でもほめすぎはダメ
・ほめすぎる=ほめられるために行動する=依頼心を作る=常に親に確認を求め、その通りに行動 → 反抗期はものすごく大事

13 生育歴を聞くこと
・乳幼児期にミルクをよく飲んだか。夜泣きしたか・おむつが取れるのは早かったか遅かったか。友達と遊ぶときはどうだったか。  

14 不登校の段階 〜不登校を一言で言うと「自我の未成熟」
@初期 ・気がつかないことが多い
・1週間の内、2日休んだら不登校。もちろん風邪など明らかな理由があれば別。
・1週間に3日休んだら立派な不登校。
・身体症状を訴える。ex.熱。吐き気、腹痛(おへその当たり)
・医者に診てもらっても「どこも悪くない」
・これは必ずしも仮病ではない。ウソではない。学校行きたくない → 不安緊張 → 血管収縮 → 酸素が行き渡らない → 頭痛など。じゃあ今日は学校行かなくていいよ、と言うと治る。
・この時期に関われば100%治る(八十川先生なら)。
A中期 ・全然学校に来なくなる。この時期に気がついたのでは遅い。
・学校へ行く用意をして準備をする → でも朝になると学校には行けない。  
B後期
・昼夜逆転が見られる
・風呂にも入らない。
C回復期 ・昼夜逆転が治り始める  

15 治療 ・長いと、数年〜10年程度かかる。
@「登校刺激を与えない」
・これは基本。子供は行きたいのに行けないのだ。できないから困っているのに、それをやれと言われるほど辛いことはない。
・下手に言うと、言われたことが感情的なしこりとして残る。傷口に触られると、痛みだけにこだわってしまう。自分を守ろうとして、治そうと思わなくなってしまう。
・わかっていることを言われる=傷つく → 拒否する → イライラ → 暴力
・「押してダメなら引いてみな」言わないことの効果はある。むしろ「1年くらい休んでもいいよ」と言うくらいのつもりで。
・過保護な親の場合、諦めかけた頃行くようになる。
・ただし小学校低学年位だと上手にごまかして行かせることもできる。「お姉ちゃん学校行くよ。お前も早く行きな」などと。しかし小学校4年以上は無理。
A先生が迎えに行くのは絶対やめるべき。迎えに行けば閉じこもる、逃げる。親が車に乗せていくのも止めるべき。
B「頼むから行ってね」などと親が絶対に言うべきでない。 ・学校に行くのは子供自分自身のためである。親が頼んでいってもらう筋合いのものではない。
C家にいる間は仕事をさせる
・「学校行かなくていいよ。でも朝起きて一緒にご飯を食べよう」
・怠惰にさせない。怠け癖をつけない。「お茶碗洗っておいて」「洗濯物取り入れておいて」「犬にご飯やってね」など。子供と相談して子供ができること、できそうなことをやらせる。
・難しいことはやらせない。やるなら徐々に。
・子供としても学校行かないのは肩身が狭い。仕事をすることで、役に立っているという余裕ができる=子供の存在感を認めてやる。
Dお母さんはできるだけ子供に話しかける。
・食べ物の話し(=本能に訴えかける)が一番よい。「何食べたい?」「母さん何にしようか困っているの」「カレーにする?」「うん」「カレー作ったけど久しぶりでおいしいね」 → 自分の意思表示を受け入れてもらえたという気持ちを持つ、実感する=自分の存在感=自信を持つ ・返事がなくても問いかけ続ける。
E普段から子供に考えさせる。
・「母さんね、父さんと別れようと思うんだけどどう思う?」「家作るんだけど、自分お部屋をどうしたいか設計図作ってごらん」
Fこれまでの人生のやり直しをする
・以上のようなことを今までやってこなかったから不登校になったのである。それならばここでやり直すしかないし、やり直せばよい。
・わざと雨になりそうなときに洗濯物を干しておいて、電話で「取り入れておいてね」
・暴れてものを壊したら放っておく。足りなければないでも良い。欠けたら欠けたままでよい。
・悲しんでみせる。他人に辛い思いをさせていることに気づかせる。
・自分で片付けはじめたら黙って手伝う。
G支えになってやること〜家族・カウンセラー
・野口英世の父は酒飲みだった。先生が父親代わりだった。
Hお母さんは弱い方がよい。
・特に男の子の場合はお母さんが弱い方が男気が育つ。お母さんが強いとグズになる。  

16 精神病(分裂病・うつ病・どちらにも入らないものをボーダー=境界例という)
・精神病はカウンセラーではなくドクターの範疇
@分裂病 ・不登校の原因として分裂病もある。ただし診断は難しい。
・自分の行動が何科の声にさせられている=「させられ体験」=神の声
・10代半ばに発生するのは破瓜型分裂病。
Aうつ病 ・うつ病が不登校の原因となることもある
・完全主義のひとは可能性がある  

17 神経症(不安神経症など)
・角がこわい(先端恐怖)
・体を石けんがなくなるまで洗う。
・色々なものが汚いと感じる  


17 引きこもり
・引きこもりも不登校も同じ=自信がない
・たいていの不登校はわがまま=自我の未成熟である。 → かわいくない不登校
・完璧主義で人のために努力する子供 → かわいい不登校  

18 カウンセラーとしてできること
・「この1週間どうだった?」と問う。
・できるだけopenquestion(YesNoでこたえられない質問)で聞く。  

19 転校は絶対考えない
・問題の解決にはならない。必ず転校先で再発する。自分で解決する必要がある。
・どうしてもというなら、転校先を自分で探させる。 → そんなに簡単に引き受けてくれるところはない。  

8月も不登校の続き。                
 (文責:菊田)