八十川先生講義録
精神分析(2) 2000.11/15
前回の続き・復習

・精神分析とは、「無意識を意識化(気付く・洞察)すること」。気付けばどうしたらよいのか、という方向に進む。だが実際には気付いても治らないことは多い。
・「精神分析的カウンセリング」はまだ体系付けられてはいない。
・精神分析は1つの理論でもって人間のいろいろな行動を説明できる。個としての人間だけでなく、集団の行動にも説明がつく。すなわち理論の守備範囲が広い。
・ただ一部では、精神分析にかわって今は家族療法という声もある。「アメリカでは精神分析は毎日葬式だよ」といわれたこともある。
・注意点は「他人を分析しないこと」他人の行動の偏りに説明がつくようになるが、分析内容を伝えるとまず嫌われる。
・「幼少期の体験が人間の性格の核になる」のだが、幼少期とは思春期ぐらい(青年中期、高校生くらいまで)。2〜3才で決まる、小学生くらいまでに決まるという説もある。
・精神分析は過去指向である。人間は過去で作られる、と考える。ロジャースの来談者中心療法、特にエンカウンターグループは現在指向。Here&Nowである。
・精神分析は長くかかる。週5回で2〜3年かかる。また精神分析をするためには教育分析を受ける。その場合でも6ヶ程度かかる。
・自分を受け入れない人は他人とトラブる。他人とトラブるひとは自己嫌悪が強いなど、自己の中にあるイヤな部分を他人に見つけて攻撃している。八十川先生が扱った不登校事例を検討したとき、うまくいかなかったケースは「その子を好きになれなかった」ケースだという。生徒指導の根本は子供を好きになること。「雨降って地固める」と考える。

4 フロイトの生涯
・1856 チェコのモラビアで生まれる
・4才の時ウイーンへ
・ナチスのユダヤ狩りに合う
・たばこ好きで、舌ガンになる。これは愛情飢餓の状態。

5 人間観
・本能が人間を動かす=人間はイヌ・ネコと同じ
・本能とは最後に残る欲求 例.食欲、性欲
・ロジャースは「自分はどうであるか」すなわち自己概念が大切だという。それは他者から言われてできるもの。
・マルクスは「生きている社会が人間を作る」
・アドラーは「劣等感が人間を動かす」
・行動療法では「条件付けで行動が決まる」

6 「生きる」とは
・欲求充足のプロセス。どういう形で欲求を満たしたか。

7 行動の三大原則
1)快楽原則 … 本能充足傾向。本能を満たそうとする。快楽を求めて生きようとする。
2)現実原則 … 個人の本能をコントロールし、周囲に合わせる。
→ 大人になるとは現実原則を取り入れていくこと
→ その両方を満たすことがI'mOK,You'reOKである。それは公共の福祉に反しない限り、という言葉とも通じる。











3)反復脅迫 … あることをいつまでも繰り返し思い出す。楽しかったことより辛かったことを思い出すもの。思い出すことでそこから逃げ出そうとする。つらいとじっとしていられないもの。
・ルール(現実原則)を守ることが楽しいと思える(快楽原則と合致する)ことが理想である。しかしそれはなかなか難しい。少なくとも負担でないと思えるように。
 
8 精神分析の主要理論
I 力動論(防衛規制など)日常生活の中で性格はどのように作動するか
II 経済論(発達的見地)性格はどのように作られたか
III 構造論(局所論)性格はどのように構成されているか
IV コンプレックス論 性格の偏りはどこに原因があるか
(以上の内容+αを3月まで講義する予定)


I 力動論〜性格は日常生活の中でどのように動いているか 
・「心は静止していない。いつも動いている。その動いている姿が性格である。その動き方は自分を守る方向に動く」
・人間は基本的には自己中である。
 
1)抑圧repression<無意識で>
・感情を抑えること。その結果行動も抑圧される・
・日本人は感情を抑圧することが多い。特に女性は感情を表に出すことははしたないと考えられてきた。現在はその反動で我慢できなくなっている。
・押さえることで、ひがみ・ひねくれが生じる。
・なぜ押さえるか。本音を知られるのが怖いから。 
例 武士は食わねど高楊枝
  プレゼントをその場で開けない
  弱虫だと思われたくないから肩で風切って歩く
・特に日本では抑制の強い人を、できた人、修行を積んだ人と賞賛する傾向がある
 
Cf.抑制suppression<意識して>
・抑圧は無意識で、抑制は意識してとる行動
・抑制は怖くない。自分で意識しているから病気にならない。しかし抑圧は無意識だから知らない間に一杯になって爆発する可能性がある。
 
2)反動形成(攻撃)
・本音を出すのが怖いから(弱さをカバーするために)逆に行動する。
例 弱い人が強がる。
  しっかり者(本当は弱いのだが、弱さを知られたくないために)
  後家のがんばり(女一人でバカにされたくない)
  すごく丁寧な人(実は威張りたい) → 別にいけないわけではない
 
3)感情転移transference
・ある人に対する感情を他の人に向ける。
・人から人への動きである
例 「先生、先生」と甘える(本当は父親に甘えたい)
  
4)置き換えdisplacement
・人に対する感情をモノに向ける
例 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」
  「先生の授業が好きです」(先生が好き)
  職を継がない(父が嫌い)
 
次回も精神分析の続き
                      
 (文責:菊田)