八十川先生講義録
精神分析(4) 2001.1/17
 引き続き防衛機制について。
 
17)擬人化
・東北石器文化研究所の藤村氏が石器をねつ造した事件に関して、「魔が差した」と言った。これは、自分の意志ではなく、誰かもう一人の自分がやらせた、という意味である。擬人化の典型的な例である。
 
 人は、つい「一事が万事」と考え、藤村氏の過去を全て信用しなくなる。だが彼も初めからそうだったわけでない。マスコミがあまりにも発掘成果をセンセーショナルに扱うため、功を焦った、というのだ。何かあると「全部ダメ」と考えてしまうが、カウンセリング的な考え方としては、それはふさわしくない。全てを美化したり、全てを悪く言ったりではない。人間はいろんな部分を併せ持っている。そこに注意する必要がある。




II 経済論(性格論・リビドー発達論)〜発達的見地〜性格はどのようにして作られているか
 
・リビドーとは
  1 性的エネルギー、性欲
  2 生の本能
     生命の本能 ←→ 死の本能  どちらも含む
    (つくるcreate)  (壊す、破壊destoroy)
 
→ 「リビドーの満たされ方」=性格 これを5つの段階に分けて考える



A 口唇期oral stage(0〜1歳)
 
a 出産の仕方(親の受け入れ方)
・子供ができたことを、親が嬉しいと感じたか、嬉しくないと感じたかwanted or unwanted
 → 接し方がかわってくる(例えば、夜中の授乳を喜んでできるかetc)
    =子供が親に受け入れられたか、受け入れられないか
例 女の子のつもりで出産したら男の子だったのでびっくりした。男の子なので「厳しく」育てなければ、と思ったという。まずこれは母親の合理化である。子供は愛情飢餓の状態である。その後男の子は高校に入ってから不登校になるが、母親と一緒に風呂に入ったり一緒に寝ることで愛情を満たし直し、治った。


b 授乳のしかた
・作った料理を全部食べてくれると嬉しいと思い、残されると拒否された感じがする。「食べ物(口にするもの)」とは「愛、愛情」なのである。お年寄りも同じ、痴呆の老人が済ませたにもかかわらず「ご飯が食べたい」というのは、満たされていないからである。幼児も全く同様。
・泣いたらすぐ与える → 与えられすぎると与えられるのが当たり前になり、快楽オンリーになる。
・泣いてもすぐ与えられない → 周囲に敵意を持ち、ひがみっぽくなる。
・泣けばすぐ与えるもダメ。決められた時間に、決められた亮を与えるのがベスト。
・板前、コック(料理人)になる人は、愛が十分に与えられなかった人である。


c 離乳のしかた・ミルク(=愛)との別れ → 不安が伴う(分離不安)
・大切なこと・・少しずつ、徐々に行う。
例 離乳時、センブリをおっぱいに塗って飲ませたら、赤ん坊は「ギャッ」と叫んだ。その子は常に不安がり泣きむしな子になったという。

センブリ(千振)
 リンドウ科センブリ属の一年草または越年草。日当たりのよい山野の草地に生える薬用植物で、林道や山道のわきなど、ほかの植物があまり生育しない場所でもみられる。草全体にある苦みが千度振り出しても(振って成分を出しても)なくならないといわれることから千振の名があり、また「当(まさ)に薬である」の意味から、当薬(トウヤク)ともよばれる。北海道西南部から九州にあり、中国、朝鮮半島に分布する。
 高さ5〜20cmになり、茎はあわく紫色をおびる。茎につく葉は長さ1.5〜3.5cmの線形で、縁が外側にわずかに反る。花期は8〜11月で、円錐花序(えんすいかじょ)に白い小さい花を多数咲かせる。花冠は白色で5深裂し、裂片には紫の筋がはいっている。果実は刮ハ(さくか)で、花冠より少し長くなり、茎や萼(がく)裂片の縁は滑らかである。(Microsoft Encarta99)


・カウンセリングの際には「乳離れはどうでしたか」と聞くことがある。一般的にはあまり早くないほうがよい。近年は女性の社会進出に伴い、愛情不足の傾向がある。そういう意味でも早くないほうがよい。もちろん愛情過多でも快楽傾向が強くなったり、常に不満を持つ子になるなどのおそれもある。



B 肛門期anal stage(1〜2歳)
・トイレットトレーニングの時期(排泄のしつけ)=がまん(耐性)の練習
・おむつが取れるのが遅い → 我慢できない=快楽傾向
・「出せ、出せ」と厳しく早い時期にしつけ → 反抗 → 出し渋る=ケチ、几帳面
・何事も程々がよい。
・時間にだらしない、ルーズといった性格も。きちんとトイレットトレーニングをされなかったというところからくる。



C 男根期phablic stage(3〜6歳)
・男根=ペニス、おちんちん=「力(ちから)」を意味する。立つものは全て力を表す。従って、あるなしが子供に心理的な影響を及ぼす。
・男の子は「ペニス(=力)がある」ことに気づく。女の子は「ない(=自分に力がない)」ことに気付き、「(ペニス=力が)欲しい」と思う。
例 「お兄ちゃんはいいなあ、おちんちんがあって」「なぜ?」「おしっこするときにお尻出さなきゃいけないんだもん」「お父さんにもらえば」=ペニス願望(=男になりたい=力が欲しい)
・どのように対処するか。「お母さんもないのよ、あなたもお母さんのようにかわいい赤ちゃんが産めるのよ」と言えば、自分の性(女性であること)を受け入れられる(性同一性)。しかし「そうね、女って損ね」と返せば逆になる。
・ツッパリの子は髪を逆立てる。これは力の象徴。不動明王や十二神将を見ても同様。
・逆に不登校の子で、髪の毛をジョキジョキ切ることがある。また失敗したとき頭を剃ったり丸めたりする。出家も同様。また年をとれば髪の毛が薄くなる。これらは力がない、ことの象徴。
・女の子はペニス(=力)がないことに気付く=男根羨望(エディプスコンプレックス)
・一方男の子は自然に自分が男であるというアイデンティティができる。できなければ自信を持って女性と面と向かい合えない。
・気の強い母親に育てられた男の子は、子供が母親を乗り越えられず、去勢的な男の子になる。
・逆に気の弱い母親に育てられると、男の子は自分の強さの部分を意識し、強い男として独り立ちしていく。



D 潜在期latent stage(6〜12歳 小学生期)
・小学校にあがり、学校に通う時期=社会化の時期
  = みんなと仲良くするために欲望を抑え、世の中の約束事(現実原則)を学習する。
  = 禁止、命令を受け入れる = ストレスがたまる
  = ストレスを上手に逃がす、発散させてやる
  = 昇華 = 社会的に通用する形で発散 ex.運動、一生懸命遊ぶ
・この時期は悪ガキでもよい。悪ガキを通して、どうしたらストレスを社会的に認められる形で発散できるか学ぶ。
・ストレスがたまると(=抑圧)、
  体に現れる → 心身症、胃潰瘍、アレルギー、どもり、書痙(ふるえ)、チック
  心に現れる → 神経症、強迫神経症、ノイローゼ
  行動に現れる → 不登校、非行



E 性器期(性愛期)genital stage(13〜20歳 思春期)
1)同性愛期(青年前期 小学校高学年〜中学生ころ)
・同性への友情がつくられる
  男同士仲良くなる、女同士仲良くなる → 自分の性を確認し、自信を持つ時期
・Give and Takeを学ぶ。これは「してもらったらして返す」ことであり「対等」を学ぶということである。子供はもらうtakeばかりである。giveとtakeの両方ができるようになって一人前の大人になっていく。
 
※ 精神分析ではGive and Takeと表現し、交流分析ではI am OK,You are OK.と表現する。内容は同じ。
 
2)異性愛期(青年中後期)
・罪意識なく(=自信を持って)女性の前に立てる
 
 次回は構造論。                         
 (文責:菊田)