八十川先生講義録
来談者中心療法(3) 2001.10/21

来談者中心療法の人間観
・人間観=「自己実現、成長の傾向」
・人間には、本来よりよい方向に向かっていく力が生まれながらに備わっている。
・「人間=生き物」 → 生きようとする力がある。
・カウンセリングの講習会へ行って学ぶと、技法しか教えてくれない。なぜ「うんうん、はあはあ、なるほど」と聞くことで治るのか、そこがわからない。また種々の技法があるため、どの講習会でも言っていることが違う。それは全て、理論が背景にあることから生じる。
・薬を飲むと病気が治る。それだけを見ると薬が偉いようにも思えるが、死んだ人に薬を与えても治らない。つまり人間に「生きようとする力」があるから薬が効くのである。
・では「自己実現」とは何か。「自律、独立」であり、一人前になろう、独り立ちしようとすること。
・そこに気がつくのを手助けするのがカウンセリングである。
・ではそこに気がつく人、気がつかない人はどう違うのか。それは「知能があるかないか」である。知能とは見えないものが見えること。例えば、知能テストには「積み木の数を数える」というのがある。裏側にあって見えない積み木を想像して数えることができるか、ということである。また危険を察知する能力も同様である。危険を予測できるか、それは見通しであり、洞察である。
・では能力の低いものに対するカウンセリングはどうするか。それは行動療法である。



4技法
5)明確化(つづき)

・感情の明確化をする。筋道の明確化ではない。
・例12「自分に自信がないんですね」は感情の明確化
・例16 不登校か? 行きたい気持ちと行きたくない気持ちの両方が出ている。
・例17 「よい成績〜」は枕ことばでしかない。主訴は「傷つけられる気がして、他人とつきあえない」ということ。カウンセラーはそこをきちんと押さえている。
・例18 「違った人間になりつつある」はうまい明確化。


練習問題
@模範解答「あなたは考え方に疑問をもっているんですね。でもその考え方を変えることができないんですね。」

A「自分を知られたくないんですね」だと受容的答え方。「他人に対してにせの顔を見せ、あるがままを見せる勇気がないんですね」だと繰り返し。「自己防衛が強いんですね」だと明確化。ただしあまりスバっと切ると傷つくかもしれない。キーワードは「自分を隠す」。何回も使う言葉はキーワードである。八十川先生なら「本音を示さないことを気にしているようだけど、誰でもそうなんじゃないの」とまず受容する。そして「でも物事は程度だよ」と続ける。「君が何か罪障感を感じているのなら、信頼できる人に話してみたら?」誰でもハダカの方がラクだ。構えるとつらくなる。でも一度にざっくばらんにはなれない。少しずつ信頼できる人にという方向で。

B模範解答「面接中はすっきりするけど、帰ると元に戻る気がするんですね」「面接中は一歩前進する気がするんですね」。こういう不安神経症的なクライエントには、面接の最後に面接内容を確認してやる。「今日の面接でこういうところに気がつきましたね。前回よりも進歩してますよ」とまとめる。

C模範解答「他人が怖くて一緒にいることができないんですね」「他人と話をすると、自分が劣った人間であるように思うんですね」

D模範解答「あなたは自分に自信をなくして困っているんですね」

E模範解答「あなたの心の中で2つの気持ちが同時に働いて、そのためにあなたは悩んでいるんですね」。自己矛盾、葛藤といった語を使ってもよいがあまり難しい言葉はどうか。

F模範解答「お母さんがよかれと思って言った言葉があなたを傷つけたんですね」。整形手術はしてもいいと思うが、心と体がアンバランスな思春期には行わない方がいいと思う。手術をして心のよりどころを失い、生きる力をなくすこともある。



・クライエントは混乱したエネルギーに苦しめられている。それを理解し、明確化することによって、感情の整理がつく。そうして肯定的、建設的な方向に向かって行くようになる。明確化によって心が安定化されるといってよい。
・来談者中心療法のいいところは、一度一つの感情が整理されると、2回目は自分で整理できるようになる点である。こうして連鎖的に好転していく。
・カウンセラーは文明評論家でなくてはいけない。社会的な部分にも目を向ける必要がある。医者で言えば、治療だけでなく、衛生状態のような面にも注意を払い、それがおかしければ行政などに働きかけることも必要になる。それと同様。



受容・繰り返し・明確化などの技法について
・日常生活の中でトレーニングすることも必要。(菊田はカウンセリングを勉強しながらも、家庭内ではきわめて非カウンセリング的な会話がほとんどです。その結果なんでもないことで事態が紛糾します)
・下世話な興味を持って、細かい内容をせんさくしない。なぜか。自分の興味に沿って変な方に行ってしまい、カウンセリングの方向づけをまちがってしまうから。

 (文責:菊田)
index
この印刷物は、伊東カウンセリング研究会のウェブサイトからプリントアウトされたものです。著作権は全て伊東カウンセリング研究会とそのウェブサイト管理者にあります。URL:http://www1.odn.ne.jp/k2/counsering/counsering.htm