“タイタニック”を題材とした地理授業の試み

はじめに

 この授業実践は、結論的にいうと失敗である。タイタニックをテーマとして授業を組み立てる試み自体は正しいと思われる。しかしそれを教材化する課程で、努力が足りなさすぎた。内容そのものは面白いにも関わらず、生徒の実態に合わせてそれをかみ砕くことができなかったため、結局ただの授業になってしまった。

 あえてこの失敗を開示することで、もって他山の石としていただければ幸いである。



授業作り構想

 ブームである。私も映画を観に行った。素晴らしい。さすがジェームス・キャメロン監督。日本でも興行収入が歴代一位に輝いたという。タイタニックである。

 タイタニックはどこからどこへ行ったのか。そして沈んだのはどこか。それは地理である。

 また、映画の中にも出てきたが、タイタニック号には数多くの移民が新天地アメリカを目指して乗り込んでいた。時は1912年。当然、当時の歴史的状況がそこから見えてくるはずである。

「これは社会の授業になりうる」

これが始まりだった。 

 まず、参考資料の収集である。得た資料は、

@「タイタニックは沈められた」ロビン・ガーディナー&ダン・ヴァンダー・ヴァット著 内野儀 訳 1996年集英社

A「タイタニック号の遭難」ロバート・D・バラード著 柴田和雄訳 1993 リブリオ出版

Bたけしの万物創世記特別編「タイタニック」 3月末 TV朝日で放映

 (その後もTV等でで多くの特集番組が組まれたので見た方も多いであろう)

Cビデオ「タイタニック号 悲劇の検証」PONY CANYON PCVP12372

 (ただしこれはかなり後になってから入手したので授業内容にはあまり反映されなかった)

またその他にも多くの書籍等がある。インターネットにも多くのHPがあり、カルト的な情報、関連書籍等様々な情報の提供が行われている。

 そして最も活躍したのが、

DマイクロソフトCD−ROM百科辞典「エンカルタ97」である。

 さて、タイタニックの沈んだ位置は、当然北緯〜度・西経〜度という数値で表される。

緯度・経度の説明をする際には、

「この経度・緯度の地点には何という町があるか?」

などと地図上で探させたりするが、それをタイタニックの沈んだ位置で出来るのではないか。

 これならば、ただ説明するだけではつまらなくなりがちな緯度・経度の説明が、そして無味乾燥なはずの数字が、「タイタニックの沈んだ場所」として圧倒的なリアル感を伴って伝えることができる。これなら生徒も興味を持つのではないだろうか。

 またタイタニックの諸元を調べてみると、「最高速度は23ノット」となっている。

 だが「ノット」とは? よく出てくるスピードの単位ではあるが、実は自分自身よく分かっていない。ここで先ほどのエンカルタを紐解いて(?)みると、これが大活躍して、

「1ノットは1時間に1海里進むスピードである」

ことが判明する。

 しかし「1海里」とは? これも確かに「200海里経済水域」等という形でよく見かける単位ではあるが、やはり自分では全く理解をしていない。これも同様に調べてみると

「1海里=1852m」

 であるという。そしてさらに、「なぜ1海里が1852mなのか」を調べてみると、どうもこれは、

「緯度1分ぶんの長さ」

である、ということが分かってきた。

 こうして、先程タイタニックの沈んだ位置で出てきた「緯度・経度」が再び登場するわけである。ここまで分かれば、生徒の力で地球の大きさ(子午線の長さ)も算出できることになる。地理の授業である。

 こうしてプリントづくりが始まった。使うのはパソコン上の「一太郎8」。またプリントにはできるだけ多くの絵・写真を貼りたいと考えるが、コピーして糊とはさみでは効率が悪いし、ワープロでプリントを作る時点で写真のスペースを考えなくてはならない。極力エンカルタから直接パソコン上で張り付けることにした。もちろん1文書の容量は巨大になる。が、手間は省ける上に、きれいなプリントが作れる、またプリンタから出力した時点で元原稿になるため、元原稿を保存する必要がなくなる。

 またエンカルタで関係ありそうな項目をピックアップし、テキストをコピーしてそのまま一太郎に貼り付けることで、参考資料集を作成することもできた。

 最終的に作成された生徒用プリントは4枚。授業用の資料が10枚程度である。

 ちなみに一太郎8では、メニューの「ファイル−文書情報」で「総編集時間」を見ることができる。累計2360分であった。



導入

 まず、緯度・経度の説明を行う。

 その上で全員赤ペンと地図帳を持って起立させ、黒板に「北緯41度43分 西経49度56分」と板書する(タイタニックが沈んでいる地点)。そしてその場所を探し、見つかったら赤で×印を付けて着席するよう指示をする。ただし、地図帳冒頭にある世界全図ではあまりにも簡単なので、それ以外のページで探させる。

 よく説明したにもかかわらず、東経と西経を間違えてロシアの町を「発見」する生徒は多い。また南緯と北緯が混乱している生徒もちらほら見られる。しかし教室内を回りながら適宜アドバイスしてやると徐々に正解へ向かうようになる。ただし困ったことに(幸いなことに?)ちょうどページが切れたあたりに目指す地点があるため、かなりあちこちのページで探さないと×印は付けられない。また生徒は「都市」がみつかるものと信じ込んでおり、ポイントが「海の中」であるためかなりとまどったようである。が、およそ10〜15分程度で大方の生徒が着席した

 その地点が大西洋上であることを確認し、

「それではここには何があるのだろうか」

と問いかける。問いを「何が『沈んで』いるのだろうか」「…3773mの海底に…」「今から86年前に……」などと変え、頃合いを見計らって映画「タイタニック」のサントラをかけると「あ!」という顔をした生徒が出てくる。

 「この映画を見た人」と問うと各クラス6人から9人程度。もう少し多いかと思っていたので残念である。これで映画の内容を元にした授業展開は不可能であることが判明した。



タイタニックから地球のサイズを

 プリントを配布し、まずタイタニックの諸元から話を始める。その大きさを実感させるため学校の敷地図を拡大コピーして黒板に貼り、同縮尺のタイタニックを重ねる(本校は50mプールがあるのでそんなに大変なことではない)。優にグランドからはみ出る大きさである。実際に窓からグランドを覗かせて大きさを想像させてみる。

 さて、ここでタイタニックの最高速度23ノットから地球のサイズを計算させる。

T 23ノットってどれくらいの速さ?

S …えーと……………ノットってどういう(分かるわけないでしょ)……?……

T はい「1時間に1海里進むスピード」です。はい、これなら分かるよね。

S ……うーんと……………(だから分かんないって)1海里ってどれくらいですか?

T 1海里は1852m。はい、これで計算できるね。

S ………えーっとぉー………………(必死で電卓をたたいている)……時速42.6キロ?

 

 このタイタニックのスピード(ノット)が、地球の大きさ(緯度)と関係していることを話し、1海里が緯度1分ぶんの長さであること、度,分が60で繰り上がる(60進法)であることを説明する。

 生徒が正しく理解してくれていれば地球1周の距離(子午線の長さ)が計算できるはずである。

  1852(m)×60(分)×360(度)=40003200(m)=40003.200(キロメートル)

 ぱっと判るタイプの生徒は、ものの数分で計算をしてしまう(電卓使用可.商業高校なので全員が電卓を所持している)。しかし判らない生徒は全く判らない。

 まず「1852mは何キロ?」と問うた時点で固まって(!?)しまう者も多い。個別にあたって「1度は60分、1分は1852mだよね。じゃあ1度は何m?」「地球1周は360度、じゃあ地球1周は何キロメートル?」などと援助する。それでも判らない生徒にはさらに図を書いて説明する。

 全員が求められたところで地図帳の資料と比較し、ほぼ正確な数値であることを確認する。(地図帳の数値:40008.006キロメートル なぜ誤差があるのかは後述)

 続いてその応用として、「タイタニックが最高速度で地球を1周すると何日かかるか」計算させる。

  40008.006(キロメートル)÷42.6(キロ/時間)=939.1550704……(時間)=39日3時間……

 速さと時間と距離の関係を完全に忘れている生徒、939時間までは出ても、それが何日かとなるとお手上げの生徒も多い。小中学校で「は・じ・き」または「み・は・じ」が教えられていない生徒もいるようだ。が、ともかく隣近所で教えあいながら、なんとか答えが求められた。(地球1周の距離の計算含めて30〜40分程度)

 ところで地球は楕円であるため、赤道近くと極点近くでは1分の長さが違ってくる。その後、第3管区海上保安本部水路部(電話045−211−0771)の「海の相談室」に問い合わせたところ、1海里は正確には1851.99mで、北緯45度における1分ぶんの距離であることが判明した。

 赤道(北緯0度)では1分が1842.73m、北極点(北緯90度)では1861.33mで18.6mの差がある。先ほどの計算結果と地図帳の数値とに誤差があるのはこのせいである。

 逆にこれを使えば、地球が完全な球ではないことの説明にも可能であると思われるが、今回は触れなかった。

 ちなみに「ノット」とは結び目のことである。ネクタイの結び方に「プレーン・ノット」「ウィンザー・ノット」等というのがあることからも分かる。

 昔は船のスピードを計測する際、板に結び目を付けたロープをつなぎ、船尾から海の中に投げ入れ、繰り出された結び目の数でスピードを数えたことが起源という。



誰がタイタニックを作ったのか

 さて、タイタニックを作った(作らせた)のはイギリスの船会社「ホワイトスター社」、実際に建造したのは、これもイギリスの造船会社「ハーランド&ウルフ造船所」である。ホワイトスター社の社長J・ブルース・イズメイ(映画にも登場)とハーランド&ウルフ造船所社長のロード・ピリーが、

「大西洋航路に3隻の超大型豪華客船を浮かべよう」

と話をしたのがきっかけになり、タイタニックが建造された。

 ちなみにホワイトスター社はアメリカのIMM(国際海運商事)という企業の子会社であり、IMMの役員にはあのJPモルガンがいる。つまりここでアメリカ独占資本主義の話(シャーマン反トラスト法とか)にも触れることができるわけである。映画の中にもそのようなシーンがあった。

 さて先ほど見たようにホワイトスター社はタイタニックを含む「3隻」の船を建造しようとした。タイタニックはそのうちの2隻目であり、1隻目が「オリンピック号」である。しかしこの1隻目は事故続きで、大幅な赤字であった。1隻目の失敗を補うため、2隻目のタイタニックには極端に大きな期待がかかることになる。

 具体的には、@オリンピック号より早い最高速を出すこと、A予定通りニューヨークに到着すること。

 オリンピック号のマイナスイメージを吹き飛ばすに、タイタニックは華々しくデビューすることを義務づけられたのである。当然この無理な負担がタイタニックに大きな歪みをもたらすことになる。映画の中では、イズメイがスミス船長に「最後の航海を華々しい新聞の見出しで飾ろう」とスピードを上げることを要求するシーンが見られる。



タイタニックという名前

 「タイタニック」という船名は、かなり不吉な名前である。いわゆるゼウス達オリンポスの12神が現れる前にこの地球を治めていたのが巨大な神の一族「タイタン族」であり、タイタニックの名は、これにちなんで付けられた。金属のチタンもここから来ている。が、タイタン族はゼウス達と戦いこの地球上から追放されてしまうことになる。

 タイタニックを所有しているホワイトスター社もライバルのキューナード社と戦うためにタイタニックなどの超大型豪華客船を建造したのだが、戦いに敗れ吸収合併されてしまうのだ。

 3隻目に建造されるはずだった同型船は「ジャイアンティック号」と名付けられるはずだった。これも「巨人=ジャイアント」でありタイタニックと同じ名前である。ホワイトスター社はこの名前の不吉さに気づき「ブリティッシュ号」と名前を変更しようとしたほどである。

 また沈んだのは大西洋(アトランティックオーシャン)であるが、「アトラス」もまたタイタン族の神であった。そしてオリンポスの神々との戦いに負けた罰として全世界を肩に背負わされ、さらにヘラクレスに黄金のリンゴを奪われたという踏んだりけったりの神様である。そしてご存じの通り、このアトラスという神の名は、地図帳の別名でもある。(うーん地理の授業だ)



世界の工場イギリス

 さてタイタニックが建造された当時、イギリスは(タイタニックは英国産の英国船籍である)産業革命を経て「世界の工場」と呼ばれていた。また19世紀は科学の世紀と呼ばれ、産業革命以後進んだ技術革新の集大成の時期がタイタニックの建造されたころである。

 そのイギリスが作った当時世界最大の乗り物タイタニックは、当然世界最大の工業国たる「大英帝国」の権威・権力・技術力を示すシンボル的存在であった。

 ところで19世紀末からアメリカが工業国として台頭してイギリスを追い越し、世界の工場であったイギリスの力が低下していく。イギリスの象徴たるタイタニックの事故が(タイタニックはアメリカに向かっていた!)、ちょうどそのターニングポイントあたりに位置しているのは興味深い。



アイルランド問題

 さてさて、タイタニックが建造されたのは、アイルランドのベルファストである。全員に左手を挙げさせ、地図帳でベルファストの位置を探させる。見つけた者からその位置を指で押さえて手を下ろさせるのである。そうして「ベルファストという町は、現在どこの国にあるか」と発問する。

 すると、アイルランド、北アイルランド、イギリス、様々な答えが出てくる。改めてイギリスの正式名称(グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国)を調べさせ、アイルランドの歴史を説明する。この時は気がつかなかったが、ユニオンジャックの変遷を活用すればより興味深い説明ができたかもしれない。

 そしてその中で、清教徒革命時のクロムウエルによる征服以後、アイルランドが置かれていた状況に触れる。当然タイタニック建造当時もその状況は変わらないことに生徒は気づく。

 その上で

「ベルファストのアイルランド人たちは、自分たちの手で(自分たちを支配しているイギリスのシンボル的存在の船である)タイタニックを造ることをどう思っただろうか」

と問う。

 生徒の中から「イヤだった」「喜ばない」「手抜きをしてやろうと思う」などといった答えが出てくる。思ったよりそれは自然に出てきた。つまりタイタニック沈没の一つの要因として、アイルランド問題があるのではないか、ということを生徒達は自分の手で導き出したことになる。

 では本当に手抜きがあったのかと言われれば、おそらくその事実はないだろう。それはハーランド&ウルフ造船所が建造したそれ以外の船に、手抜きがないことから推測される。

 ありそうにもない、興味本位な、陰謀論的考えを引き出させたことに批判はあると思うが、炭坑ストによってタイタニックの出航が遅れた事実、また後に出てくる移民のこともあり、タイタニックによってアイルランド問題を浮かび上がらせる事を主眼においてあえて行った。

 ちょうど折良く北アイルランドの和平合意がアイルランド住民によって承認された時であり、IRAの活動等も含めて新聞記事を活用して説明することができた。



移民

 19世紀後半から20世紀前半にかけて、イギリス支配下のアイルランドでは飢餓その他によって国外に移住する人が後を絶たなかった。当然タイタニックにはそのような移民が数多く乗っていたはずである。実際クイーンズタウンではアメリカ行きの郵便物が大量に積み込まれた。

 当時はヨーロッパ列強がアジア・アフリカ地域を植民地化していく時期であり、母国を離れ、アメリカなど新天地を目指す人は数多かった。海運業が発達し大型客船が次々に造られ、スエズ運河が開通し、パナマ運河が建設着工されたのもこのような背景があったのである。こういう中にタイタニックを位置づけると、映画の中で「世界はオレのものだ!」と叫んだジャックの気持ちがよく理解できる。(正確にはジャックはアメリカへ戻るところなのだが)

 また船内は一等、二等、三等それぞれ完全に仕切られ、決してお互いに行き来できないようになっていた。当時の社会状況はここにも現れているし、各料金の格差からもそれは窺える。そしてそれは各クラスの生存率にも見える。映画中でジャックがローズに会いに一等船客用の甲板に行くのはかなり大変なことだったのである。

 また映画では、沈みゆくタイタニックの船室のベッドの中で子供にお話をする母親のシーンがあるが、そこに出てくる「ティアナンオークの国」というのはアイルランドの昔話に出てくる架空の世界のことである。



沈没

 よく知られている事実だが、事故当時タイタニックには定員分の救命ボートはなかった。

簡単に言えば半数の乗客は救命ボートに乗ることすら不可能であった(映画の中にもそういう話は出てくる)。このあたりにやはり、当時の考え方が見え隠れする。

 それは一等、二等、三等、男女それぞれ救命率の差にも表れてくる。

 当時はまだ明らかな身分差別が残存しており、同時に男尊女卑の思想も色濃く残っていた。一方ヨーロッパの騎士道精神から来るレディファーストの考えもあり、様々な基準が入り乱れていた。各等級、男女の救命率の差はそのトリプルスタンダードの矛盾を露呈させることとなった。

 また救命ボートに乗った人々は決して水中でもがいている人々を救いには行かなかった。(最後には3名のみ救出されるのだが)これは緊急避難の問題として法的、人道的な面で取り上げ、生徒に問う形で授業を進めた。

 その他、当時最新の技術に基づいて建造された船が沈んだこの事故は、人間の技術と自然との争いであり、人間は自然に勝てるのかという根元的な問いにもなっている。



青函トンネル

 さてプリントづくりに大活躍したマイクロソフト社のCD−ROM百科事典「エンカルタ97」であるが、CD−ROM1枚に1万7600項目の記事、そして写真、地図、絵、動画が入っている。そこに表示される写真類はパソコン上でコピーして一太郎に貼り付けることができるし、本文に関しても範囲指定してコピー・貼り付けをすることができる。授業で使用した4枚のプリントには合計14枚の写真が載っているが、実際に手作業でコピーして貼ったのは4枚のみである。残りは全てプリンタから印刷された時点で完全な原稿として使用可能であった。

 またエンカルタは項目として立てられているものを検索することはもちろん、本文中にその言葉を含む項目をすべて検索することもできる。「タイタニック」で全文検索をかけると、「海運業」「カナダ文学」「氷」「救命ボート」「深海探査」「青函トンネル」の6項目が出てくる。おおむね予想通りなのだが、「青函トンネル」には意表をつかれた。

 以下に項目「青函トンネル」本文の一部を示す。



 洞爺丸台風 

 のちに洞爺丸台風とよばれるようになる1954年の台風15号は、一度九州に上陸してから日本海を時速100km以上の速度で北上し、9月26日の午後には津軽海峡に接近しつつあった。函館港には朝から強風がふきつけていたが、夕方になって一時風が弱まり、太陽も顔をだしたので、青森港にむかう青函連絡船「洞爺丸」は乗客1167人をのせて、午後5時過ぎ函館港を出航した。ところが、港をでてまもなく瞬間風速50mをこえる強風に遭遇。やむなく七重浜へむかう途中、真横から強風をうけて沈没した。この事故で乗客、乗員あわせて1051人が死亡。1隻の海難事故としては、12年(大正元)、アメリカのニューファンドランド島沖で沈没したイギリスの豪華客船「タイタニック号」の1513人につぐ惨事となった。この大事故をきっかけに青函トンネル着工への世論は高まっていった。

"青函トンネル" Microsoft(R) Encarta(R) 97 Encyclopedia. (C) 1993-1997 Microsoft Corporation. All rights reserved.

 なお、著作権について不安を覚えたので、後日マイクロソフト社に問い合わせたところ、本文のテキストのコピーに関しては「通常の引用のルールに従っていただければ問題なし」との返事を戴いた。具体的に「引用のルール」とは? とおたずねしたところ明確な答えがなかったが、私としては

 @どこからどこまでが引用であるかはっきりさせる。

   「  」や罫線で囲むなど。

 Aその出典(がエンカルタ97であること)を明記する。

   コピーしたテキストには自動的に出典がついてくる(上記「青函トンネル」では最終2行)のでそれを利用すればよいのではなないか

というように理解をした。

 一方画像に関しては、MS社が著作権を持つものと、そうでないものが混在しており、MS社が著作権をもたないものの中には2次許諾を得ていないものもある。そのため、「やめておいてほうがよい」という解答を戴いた。

 ただし、それは逆にコピー可能なものもあるということであり、問い合わせれば(多少時間はかかるかも知れないが)どちらか判る、ということであった。

 一方、学校においては著作権が多少緩やかになる部分があるはずである(うろ覚えで申し訳ない)。その点については、こちらが教員であり、授業の際に使用するプリントの作成上の問題であることを明らかにしてMS社にはお尋ねをした。が、上記回答がその前提を踏まえてのことか明言していただけなかったので、はっきりしない。また改めてお尋ねをしたいと考えている。

 いずれにせよ近年CD−ROM形式での辞書・辞典類が多く出版されており、きわめて便利である。現在本校では「エンカルタ99」「エンカルタワールドアトラス百科地球儀」「平凡社世界大百科事典」が職員室のパソコンで利用可能であり、きわめて重宝している。またインターネット経由で様々なテキスト、画像がコピー可能であるが、我々教員がプリント等に使用する場合、これは明らかに「個人的な利用」の範囲を超える。扱う際には充分な注意が必要である。



なぜ失敗したのか

 さて、自分としてはかなり気合いを入れ、膨大な時間を費やして準備した授業である。しかるに前半はともかく、特に後半、生徒の反応は芳しくなかった。その理由としては様々なものが考えられる。

 まず、書き込み式プリントを使用しているため、授業を受ける態度が受け身になってしまった点。彼らが前向きになっていない状態でいくら発問しても生徒の内面でその疑問が深まることはない。

 そして同時に、準備不足のために生徒への与え方が一方的になってしまった点。つまり上手に生徒の力を引き出すことが出来なかったということもある。つまりこれは教材を深く掘り下げることだけでなく、その教材をかみ砕き、生徒のレベルまで降ろしていくための準備が足りなかったということである。

 それはこの報告の形態が、「授業実践報告」ではなく、限りなく「教材研究報告」に近いことからも分かるだろう。

 教材は十分魅力的であるにもかかわらず、食いつきが悪いと言うことは、とりもなおさず料理の仕方が悪いということである。

 また、調べて分かったことをあまりにも多く詰め込みすぎた、ということも挙げられる。そのため各項目が断片的になり、全体として「タイタニック」という視点がぼやけてしまったことは否めない。タイタニックを題材としてあくまで地理の授業を行うのか、それともタイタニックを様々なものの中で位置づけるのか、またタイタニックに焦点をあてることで見えてくる数多くの事実を紹介するのか、その点が曖昧だった。

 またプリント4枚という枚数も、シリーズものとしては分量が多かったかもしれない。最後の方では「もうタイタニックはいいよ」という雰囲気が多少見られた。

 ありふれた言葉で言えば「精選がたりない」ということである。また「生徒の実態にあっていない」ということである。

 地球のサイズを算出させることや、アイルランド問題を浮かび上がらせることが本教材のトピックである。これら部分部分に関しては、これを今後の通常の授業の中でそれぞれ組み込むことはまったく問題ないと思われる。これは今後とも実践・活用可能である。



生徒の感想から

※定期テストの際、解答用紙の欄外に授業・テストその他の感想を書かせ、そこからタイタニックに関する部分を抜粋したもの

・タイタニックが本当に沈んでしまった理由が分かった気がした。まだ映画を見ていないから見てみたいと思った。タイタニックのことを調べたら本当にいろいろなことがわかってすごく楽しかった。

・タイタニックの授業はとても楽しいです。これからもこのようなことを取り込んで欲しいです。

・タイタニックの授業がおもしろかった。

・タイタニックの授業はとても感心(ママ)があって楽しくできました。身近なところからでも深く追求していけばいろんなことが分かることを知りました。

・タイタニックすごく良かったです。

・タイタニックの大きさから、落ちた場所などは、見に行っても覚えてなかったのでとてもためになりました。

・地理の授業は中学の地理の授業と違い、教科書を使わずにやってきて「教科書を使わなくてもこれだけ勉強になるんだなあ」と思った。

・タイタニックの映画を見てから授業をやったので興味が出てすごくおもしろかったです。いろいろなことを知れたのですごく嬉しいです。

・タイタニックは楽しかった。

・自分自身タイタニックの映画を見たのですが、それに加えてこの授業で自分の知らないことや映画にはなかったことを知れてとても楽しくできました。タイタニックの授業は本当に楽しく集中して学べたのでまたこのような授業をして欲しいです。

・僕はタイタニックの映画を見ていないけど、授業でタイタニックのことをやり映画が見たくなった。

・タイタニックの映画を見に行きましたが、1度見ただけでは理解するのがムズカシイです。

・地理の授業という感じがしなかったので、地理と分かるような授業をして欲しい。

・タイタニックの“エイガ”の方ならほとんど覚えているのですが…。授業でタイタニックのことを勉強できて良かったです。

・タイタニックの授業を受けてタイタニックについて知らないことがたくさん分かって良かったです。タイタニック号についての謎がたくさんあったり、とても悲しいこと(タイタニック号には大きな期待がかかっていたこと)がたくさんあってとても驚きました。授業を受けて興味がわいたので、調べる機会があったらタイタニックについて調べてみたいです。

・タイタニックの授業はおもしろかったです。またこういう授業をやってほしいです。

・授業は楽しかったけど眠かった。

・タイタニックは名前だけしか知らなかったけど、裏にはこんないろいろなことがあるということが分かってよかった&楽しかった。今度映画を見てみたいです。

・授業を受けてみて思ったことは、普通の授業より、タイタニックというように今の話題を取り入れた内容でやっているのでとても楽しい。しかも音楽を流すときもあったのでリラックスしてできてとてもよかったです。こういう授業は続けてほしいです。

・タイタニックの授業はちょっとこりすぎててよくわかんない。もっと簡単にやってほしい。

・タイタニックのことは何も知らなかったけど勉強になりました。

・タイタニックの授業はとても楽しかった。

・タイタニックは映画を見たときからすごく興味があったので、授業をやっていく中でいろんなことが分かってきておもしろくてしょうがなかった。はじめは地理は少し苦手だなと思っていたけど、切り出しがタイタニックだったので地理を好きになりそうです。

・タイタニックの勉強をして私はタイタニックを見に行ったことがないから、このタイタニックをやって見に行きたくなりました。

・タイタニックの映画はまだ見たことがないけど、授業をやってこんなすごい話だったんだと思いました。

・タイタニックの授業とても楽しかったです。

・タイタニックの授業とてもよかったです。

・授業でタイタニックを取り上げてくれたのはとても嬉しかった。見に行きたいのですがまだ行ってないので、一つ一つ細かいところを知るのが楽しかった。

・タイタニックの授業は結構楽しめながらできました。まだ映画を見ていないので早く見てみたいと思います。

・このタイタニックの映画を見てすごく感動したんですけど授業でタイタニックのことについてやるって聞いたときすごく嬉しかったです。おかげでタイタニックについての謎もわかったし、タイタニックがもっと好きになりました。ありがとうございました。

・タイタニックを勉強して、タイタニックという船はとても大きいということがわかった。不沈船と言われていたのに沈んでしまってびっくりした。タイタニックの映画が早くみたいと思いました。

・普通授業は教科書通りにやっていくのにこういう違った話題を勉強するのがとてもおもしろい、時々こういうのをまたやってみたいと思います。

・私はまだタイタニックを見ていません。今はすごくみたいと思っています。この地理の授業でタイタニックのいろいろなことがわかりました。授業の話を聞いているうちに「無理をしすぎたせいで多くの人がぎせいになってしまったのでかわいそう」という気持ちがいつもついていました。でもこの話(授業)を聞いたことで絶対に見てみたいと思いました。

・正直言って私は中学の時から社会というものがあまり好きではありませんでした。でも今はとても地理が大好きです。何故かわからないけど、地理の授業はいつも楽しく受けられます。これからも楽しくもっと地理が好きになるようになりたいです。授業はとても楽しいです。先生の声はみんなの眠気覚ましでとてもいいと思います。タイタニックの授業も本当楽しかったです。楽しい楽しいの連発です。

・タイタニックは映画を見たけど、授業で深くやってみるといろいろ謎がありおもしろかったです。ビデオが出たら絶対授業で見ましょう。

・1回タイタニックという映画を見たんだけどとても感動したのでまたみんなで機会があれば見てみたいです。

・タイタニックの授業おもしろかったです。映画を見ていなかったけど、いろいろとタイタニックのことを知ったら見たくなりました。

・私はまだタイタニックの映画を見ていないので、この授業を通してもっと見たいという気持ちがふくらんできました。

・タイタニックの授業は本当に楽しかった。自分がタイタニックの乗客になった気分だった。「タイタニック(映画)」を見たくなった。またこういうおもしろい(楽しい)授業をやりたい。

・タイタニックにはまった。いろいろな謎があることが不思議だと思った。

・タイタニックの授業をやるのはとても楽しかった。地理がキライだけど、映画に関係していることからやっててあきなかった。これからもこういう授業をもっとやってほしいと思った。好きなことをやっているとやる気が出てくるものである。テストの結果は悪いかも知れないけど。

・今の船は安心して乗っていられるけど昔の船は不安になりながら乗っていて、いつ沈むんだろうとっても怖い事件だと思いました。

・タイタニックについてもっと勉強するべきでした。先生の話を授業中にしっかり聞いとくべきでした。

・授業をやっているとタイタニックの映画がどんどん見たくなります。それはやっぱりいろいろなことを知ったからだと思います。今までは教科書にそってやってきたのでこういう授業の方が楽しいです。

・映画ではわからないところまで勉強できてよかった。っていうか、「勉強」て感じがしなくて気楽に楽しく勉強できた。タイタニックの勉強が終わったら見に行こうと思っていたのに、お金がなくていけないのが残念です。

・映画で見たタイタニックより、それに関したことがとてもも細かく知ることができておもしろかった。

・タイタニックの映画を見てみたくなった。(まだ見てない)

・タイタニックの授業の時は作業が少なくて先生の話ばっかり聞いていたからかなり眠かったです。

・タイタニックの授業はあんまりよくわかるようでわからなかった。だからテスト勉強はどうして勉強していいかわからなくてあんまりできなかった。

・タイタニックの授業をやっているときたった一隻の船でいろいろな事実がありやっていて楽しかった。これからも楽しい授業をやりたいと思います。

・アイルランドの船を造ったところが分からなくていらいらしています。さっきまで覚えていたのに。一つのことが終わったらまとめテストととかやってください。地理なんだか歴史なんだか分からない授業でしたがおもしろかったです。今度は何をやるんですか?

・タイタニックの授業はとてもやりがいがありました。これからもタイタニックに何か代わるような授業をしたいです。

・タイタニックの授業をやるうちに見たくなった。まだ見に行っていないしひまがないのでいつか学校の社会の時間etcに見せてくれると嬉しいです。(いつになるんだろー)

・最後まで音楽を聞きたかった。この授業をやったらタイタニックが見たくなった。今沈んでいるタイタニックを引き上げることができないと聞いてかなりショックで、一度本物をみたいと思った。

・タイタニックはおもしろかった。でも映画が見たかった。暗記が多いから大変。

・私はタイタニックが見たことがあるんだけどそんなにいろいろな深いことがあってびっくりした。

・私はタイニックを勉強する前に「タイタニック」の映画を見てきたんですけど映画の中では分からないことなどいろいろと知りました。船の大きさやどれくらいの速さで進んでいるかなど、とても勉強になりました。テストあけにでももう一度見に行きたいと思っています。

・タイタニックについての授業は楽しい。

・これまでの授業はとてもおもしろかった。これからもやってほしい。またタイタニックのことをいろいろ知ることができたのでよかった。

・教科書をやるより楽しかった。タイタニックの過去が分かった。

・タイタニックの隠れた部分が少しずつみえてきた。

・タイタニックの授業はとても楽しかった。いろいろ今まで知らなかったこととか知ることができたし、普通の地理や歴史の授業とは違ってあんまりあきなかった。

・地理(社会)の授業は一番好きだけど、中学の時は授業がつまらなかった。でも高校になってやり方も楽しいしタイタニックについて調べたり知ることができておもしろい。

・タイタニックはなかなか奥が深いことが分かった。

・タイタニックの授業はおもしろかったのでタイタニックのビデオが出たらみんなでみたいです。

・私はレオのFANなのでこのタイタニックの授業は嬉しかったです。サントラもっとかけてほしかったですね。

・授業でタイタニックのことを勉強してみてタイタニックのこととかいろいろ分かった。

・タイタニックの映画を見たいなあと思った。タイタニックにいろんなことが前触れみたいにあったり、沈没までのことがすごく勉強してて楽しかった。

・タイタニックの映画を見てとても感動しました。だけどこんなにいろいろなことがあったとはしりませんでした。タイタニックの授業をやっていたらもう一度見たくなりました。タイタニックの授業おもしろかったです。映画を見に行きたくなりました。

・タイタニックの授業はおもしろくていつも楽しみでした。またこういう授業をやってほしいです。

・タイタニック見たくなりました。初めてタイタニックのストーリーを知った。

・タイタニックの授業はとてもおもしろかった。先生がぜひ見に行って下さいと言って見に行ったらすごく感動した。それを授業で習うことはすごく嬉しく、本当におもしろかった。テストの出来はいまいちと思うが、別にタイタニックのテストはいやではなかった。

・タイタニックはゼウスらによって地球を追放されたタイタンの名前をとったものだったからタイタニックは事故のあってしまい、もしタイタニック以外の名前だったら事故に遭うことがなかったと思った。

・タイタニックだけで当時どんな時代だったかや、あたらしい発見がたくさんありました。

・タイタニックとか興味を持っているものについて勉強するのは(あまり)苦にならないの普通の教科書通りの授業よりいいと思います。

 

 以上のような感想が得られた。概ね好意的に評価をしてくれてはいるものの、「よく分からなかった」「凝りすぎ」といったマイナス評価も見られる。

 ただしこの感想は、定期テストの際に解答用紙の欄外に書かせたことであり、基本的にいいことしか書いてないと思われる。生徒の側も、定期テストの解答用紙に「授業が全くつまらない」などと書く勇気はないだろう。

 また1年生全員(171人、テストは1人欠席のため170人)に感想を聞いてここに感想を書いてくれた(タイタニック関係のみカウント)生徒が75人のみである。先に書いたとおり定期テストの中の記述であり、「『先生うけ』することを書いた方がいい」と生徒が考えたことは想像に難くない。したがって「よかった」と心の底から感じた生徒はもっと少ないに違いない。

 それ以上に、無回答の100人(半分以上である!)が、授業を受けて「書くべきようなことを何も感じなかった」と思っているのだとすれば、正直「労すれど報われず」の感が強い。

 また確かに「楽しかった」という感想は多かったが、それが一向に具体的でないのも気になる。テレビのバラエティ番組でも見るような気持ちで、「何となく」「受け身的に」授業に向かっていた様子が窺える。



今後の扱い方

 さて、それでは今後この教材をどの様にして扱えば、生徒の興味を引くものになるだろうか。

 今回の反省から考えれば、生徒の主体的な活動をより引き出す方向に行くべきであろう。

 例えば調べ学習方式の導入である。大まかな話をした後、各グループの中で、歴史的背景を調べる者、科学技術の進歩について調べる者、タイタニックの料金を調べる者など、各人が興味を持った事柄について別れ、同じ事柄を追求する者を1グループに再構成する。追求の後各グループに戻り調査内容をシェアする。またそれぞれが持ち寄ったものをもとにして、まとめ・発表をする。という形である。

 この際生徒がかなり深い所まで追求できればオープンエンドで終了しても構わないが、本校の生徒では多少無理がある気がする。

 つまり全員に還元し再配分するために行われる発表会がカラオケ型で終わる可能性が高いため、最終的には教師による深化、まとめ作業が必要になる。

 オープンエンド化するためには「私の選択(私だったら〜選択する)」という形で個別の問題として提示・追求・選択の形を取ることになるが、タイタニックでは多少無理がある気がする。その他何か良い考えがあればご教示いただきたい。



学習の総合化

 さて、授業を行う際、通常は「教えたいこと」が先にあり(教科書、知識、用語など)、それを如何に生徒に教え込む(=詰め込む)かが授業であり授業技術であると考えられてきた。そのために、教員は導入を工夫し、作業学習・調べ学習を組み込み、「教えたいこと」をオブラートにくるみ、手を変え品を変え〜毒饅頭でも食わせるように〜だましだまし「教え込む」。結局我々はこういうやり方を繰り返してきただけではないだろうか。

 これに対しこのタイタニック実践は、「教えたいこと」まずありきではなく、「タイタニック」というだれもが(皆が)興味を持つような具体物を提示し、そこから様々なことを学び取っていこうという形をとっている。もちろんここからは「体系的な知識」は学べない。あるのは散発的な、雑学的な知識の寄せ集めでしかないかもしれない。

 しかしここでは総合的な学習の時間が数年後に確実に導入されることに思いを馳せて戴きたい。小学校・中学校はすでにかなりの危機感を持って取り組みが始まっている。

 商業高校である本校では、総合実践や課題研究の読み替えで対処する方向のようであるが、普通高校ではどうなのだろうか。このような状況の中でこのような新しい学びの形態〜学習の総合化〜は一つの形態として考えられても良いのではないだろうか。

 なお、実際にタイタニックを学校の活動に取り上げたのは、1年生の地理の授業だけではない。吹奏楽部は、映画タイタニックに使用された曲(イントロに使われた曲である)を練習して演奏する。1年C組は学園祭のHR展のテーマにタイタニックを取り上げ、船首の部分(映画の中の印象的なシーンに使われた)の再現を企画し、成功を収めた。

 タイタニックによる学習の総合化は現在も進行中である。



終わりに

 全く新しい教材の作成には多大な労力が伴う。だが本校のような学校であるからこそ、カリキュラムにとらわれず、進学校とは違ったユニークな授業が可能になると思われる。アメーバですら新しい環境では周囲の状況を知ろうとする。つまり好奇心を持っている。ならば人間の子供には必ず「学ぼう」「勉強しよう」「知りたい」という意欲があるはずである。少なくともそう思わなければ、そう信じなければ、本校で教員などやっていられない。

 教員がすべきことはそのかすかな好奇心を引きつけ、高校レベルまで(できれば、難しいが、いやホントに大変なんだこれが)、引き上げることである。子供のアンテナにあった周波数で発信しなければ、いくら大きな声を(声が大きいとよく言われるが)出そうと決して声は届かない。そしてよい教材には、必ず子供は食いついてくる。

 「次回からタイタニックの話をする」と言ったとき、ほとんどの子供達はこちらを向き、その目はキラキラしていた。楽しみだ、何か面白そうなことが始まるんだ、そういう期待でいっぱいだった。しかし、それを裏切ることの繰り返しで、子供達は授業を「つまらないもの」だと「学習」していく。それは全てが高校の責任ではなく、かなり小学校・中学校からの積み重ねでできたものであろう。が、しかし「再学習」は可能である。きっと可能である。私はそう思う。(タイタニックの授業は裏切った方なんだろうな)

 

[授業日]1998.5月いっぱい おおむね5時間

[授業クラス]1年A〜E組(全5クラス)