歴史散歩 東郷記念館

 この記念館は、元は1929年に東郷平八郎の別荘として建てられたものだ。450坪
の敷地に40坪の平屋と10坪の離れがある。現在管理されているのは、旧管理人の長女の石黒経子さんで、事前に連絡すればていねいに館内を案内して下さる。
「あの日本海海戦に負けたら、日本の未来はなかったのです。その勝利をもたらした東郷さんは、日本の恩人。私は自分のでき得る限り、その別荘と遺品を後世に伝えていきます。」
 きっぱりと語るこの老婦人の信念は、一朝一夕にはゆるがない。わたしたちの歴史観は、このような信念や体験の重みときりむすぶ中で鍛えられる。私はこの記念館を訪れるたびに自己の歴史教育力の未熟さを痛感するのである。
 さて、質素な造りの三部屋から成る館内は、風呂場の一部を除き、東郷の生前そのままに保たれている。若干の資料もあるが、何よりも管理者の口からたくさんの回想やエピソードをお聞きできるのが興味深い。
 敗戦までこの別荘前の通りは「東郷小路」と名付けられて、記念碑も建っていた。地元の小学生の戦時教育にも役立てられていたという。

 さらに、伊東時代の東郷について調べたい方は、松川沿いに出て、遊歩道を15分ほど上流に上り、市立図書館の郷土図書コーナーを訪ねるとよい。絶版となった小冊子『東郷記念館』などを閲覧・コピーできる。
 近刊の好著『東郷平八郎』(ちくま新書 田中宏巳著 防衛大学教授)にも、明治から現在に至るほとんどの東郷関係文献が列挙されている。
 『東郷平八郎は何をしたか』(高文研 前田哲男 1988年)、『資料集 今なぜ東郷元帥か』(同時代社 高島信欣 1991年)などに目を通して記念館を訪れると、自己の歴史認識はさらに深まることであろう。


 《案 内》
○ 交 通=伊東駅下車、タクシー5分あるいは徒歩15分
○ 開 館=特に定められていない。事前に連絡が必要。
○ 料 金=無料
○ 連絡先=〓 0557(37)2061
      〒414−0023
      伊東市渚町3番8号
      〈東郷記念館〉

  

 (熱海市立多賀中学校:加藤好一)