“ゆい”例会報告−2000(平成12)年6月23日

2000(平成12)年6月合同例会の報告 


 初参加がありました。伊東市立南中学校の春日英樹氏です。



1 南中版“総選挙”〔中学3年:公民的分野〕      【春日 英樹】
 「選挙はだれが当選しても同じ」と受けとめている生徒が、選挙に対する興味関心をもつようにするには、どのような工夫をすればいいだろうか。春日英樹氏は、具体的な手立てとして“模擬選挙”を行うことにした。
 1 模擬選挙での留意点
 授業で配慮したことは次の通り。模擬選挙のプリント資料は6ページ掲載。


◎ 実在の政党や候補者に投票させてはいけない。
◎ 授業者は自分の支持政党を明言してはいけない。
 → 架空の政党や候補者を立てる。
 〔例〕読売巨人党、スマップ党、人気歌手の名前等



 2 模擬選挙を通して学習したい内容
 以前、模擬選挙の実践報告をした菊田氏から次のような助言があった。
「小選挙区の問題点は死票が多いことにある。例えば、静岡県7区には6人の候 補者がいる。死票は確実に多くなる。その特質を押さえることが大事だろう。
 だから、候補者数を増やした方がいい。」
 春日氏はプリント資料に、次のような配慮を施している。
「候補者の公約次第で投票の傾向はずいぶんと変わってしまう。『生徒一人一人 にパソコンを支給します』と書いたら得票は増える。逆に『数学の宿題を増や します』と書いたら得票は減る。そんなこんなを勘案しながら公約の内容を決 めた。」
 菊田氏は、シミュレーション学習の観点から助言を続ける。
「『私に1票入れてくれたら、数学の成績を1点上げます』という公約に心動か されるのはどのような場合か。記名投票なら自分の利益になるように投票する。
 記名投票と無記名投票の本質的な違いを示すことができる。」
「投票する側に条件を付けることもできる。選挙人の身分を設定する。“貴族”
 だけ投票しなさい。“庶民”だけ投票しなさい。男子だけ投票しなさい。女子 だけ投票しなさい。指定された年齢層だけ投票しなさい等。このような操作で、
 選挙の結果が変わり得ることを体験的に学習できる。模擬選挙は遊び感覚で、 選挙の特質を考える有効な方法だろう。」
 
3 指導計画の改善案
 春日氏の指導計画は次の通り。
 @政治とは何か→A政治に参加しよう→B選挙に行こう→C首相を選ぼう
 春日氏は「@政治とは何か」の授業で次のような説明をした。
「雪山で遭難し山小屋に避難したが、助けが来ない。そんな限界状況の中で生き 延びるためには残された集団の“決まり”が必要だ。残っている食料をどのよ うに分配するかなどの問題は好き勝手にはできない。」
「“決まり”のもとになるのは、1つは慣習、2つは道徳、3つは法律だ。そこ で、“決まり”のもとになる法律がどこでどのようにして作られているかを勉 強しよう。」
 加藤氏は対案を示す。
「模擬選挙は生徒が興味をもって取り組む学習だから、最初に実施する。そこか ら現在の総選挙の在り方について長所や短所を比較検討する。例えば、小選挙 区に死票が多いこと。比例代表制は数的に民意を正確に反映するにもかかわら ず、当選枠が小選挙区より少ないこと。このように、模擬選挙という体験的学 習から具体的な問題意識を高めた生徒が、抽象的な政治の本質へと進む指導計 画にしたらどうか。」
 宮村氏も加藤氏の対案を支持して助言する。
「オーストラリアの地理学習を例にしよう。教科書では、自然・産業・日本との
 貿易という順序になっている。確かに整った順序ではある。しかし、オースト ラリアの地理を立体的に理解するにはやや具合が悪い。そこで、展開を逆にし てみよう。まず、日本との貿易の特色。オーストラリアからの原材料の輸入が
 極端に多い。今までコアラや羊毛の国としかイメージしていなかった生徒は? を感じる。次に、いったいどんな産業が盛んなのだろう。さらに、自然環境は どうか。このようにして、生徒は立体的に理解しやすくなるだろう。」
 教科書は学習内容を網羅しているが、生徒の意識の流れに即した展開かどうかは、授業者が批判的に検討すべきであるという指摘であった。
→ 迂闊に説明する前に発問しよう→村八分の意味を考えさせる問い方
「村八分とは、八分は無視するけど二分は付き合ってくれるということです。で は、二分とは何と何でしょう。」答えは、葬式と火事。宮村氏が教えてくれた
 子供の学習意欲を引き出す技術の一つである。
→ 現実の総選挙では、静岡県7区の死票は約70%だ。わずか30%の得票で 当選するのである。公正公平にはうるさい年頃から見れば、こんなことが許さ れていいのかと疑問に思うであろう。
→ 春日氏の気取らない、素直な実践報告のおかげで例会は盛り上がった。新鮮 さと共にこれからの実践が期待される頼もしい人物である。



2 「地域のお年寄りと楽しむ会」をやろう〔総合的学習〕 【宮村 和秀】
 1 “宮村ギャグ”を一つ
 ある大型スーパーのユニフォームを着て、校内を歩き回った宮村氏に対してこんな反応があったとさ。
「宮村先生、学校をやめちゃうの。」(子供)
「ああ、こんどスーパー△△で働くことになったんだ。」(宮村氏)
「そういえば、昨日水泳の時間に水鉄砲合戦をして遊んでしまったものね。あれ が、校長先生にばれて首になったのかもしれないね。」(隣のクラスの担任)
 理科「空気と水」の勉強で購入した水鉄砲で遊ぼうと提案したのは宮村氏。プール開きで、3年生は大騒ぎをしながら水鉄砲合戦を楽しんだのであった。
 子供から笑いを引き出す技術は“宮村ギャグ”に学べ。

 2 年間を貫く柱は“人との交流”
 前号(148号)で紹介した総合的学習の第2弾である。伊東市八幡野小は今年度35時間の総合的学習を実施する。宮村氏の年間計画は5つの単元から構成される。
 5月は、県教育委員会から派遣されるALTの活用である。〔国際理解〕
@ 事前に自己紹介やグループの出し物を考え練習する
A ALTの授業で触れ合う
B 事後にALT授業から学んだ歌やゲームを全校の発表集会で表現する
 6月は、「地域のお年寄りと楽しむ会」。資料は2〜3ページ掲載。社会科の発展としての総合的学習である。金曜日の5時間目を“やんもタイム”として時間割りの上で確保し、まとめ取りもできる方式である。〔福祉〕
@ 社会科の公共施設学習でコミュニティセンター見学をする
 → 「ボランティア活動に利用するなら料金は取らない」ことを知る。
A 教師の働きかけに応じて「地域のお年寄りと楽しむ会」の計画を立てる
 ア 前半は出し物を見せよう
 イ 後半は遊びのコーナーを設けよう
 ウ 招待状を出そう
 エ ポスターを描こう
 オ コミュニティセンターでリハーサルをしよう
B 地域のお年寄りと楽しむ会〔6月21日実施:2時間分〕
 心残りは、前半の出し物が済むと3分の2は帰ってしまったことである。


 地域の人との交流は「地域の人と交流する運動会種目を創る」「長田農園の訪問」と続く。変化のある繰り返しで、地域の人々との交流は深まる。



               《会報“ゆい”編集後記》
◇ 講演時、紹介のあった村井『学力から意味へ』創造出版社を書店に注文した ら、この出版社でないとのことでした。小生の聞き違いと思われますので、ぜ ひ正しい書名、出版社名を教えてください。
  先日のお話は実に感銘深いものでした。まさに知られざる歴史、歴史観の再 構成を迫るものでした。             【森山 直介】
◇ 毎月『ゆい』をお送りくださり誠にありがとうございます。新しい学校に来 てやっと2ヶ月。だいぶ仕事もペースがつかめてきました。
  2年後の単位制総合学科移行ということで、毎月会議やら資料作りやら多忙 です。担任を持っている農業土木の新入生もなかなか元気です。何か新しい実 践を送りたいと思いつつも、毎月『ゆい』の実践のすばらしさ、幅の広さに感 動します。学ばしてもらう一方で、申し訳なく思いますが、今後ともよろしく
 お願いします。                 【鈴木 映司】
◆ 加藤好一先生の新著が上梓されました。おめでとうございます。『世界地理 授業プリント−学びあう作品づくりへ−』(地歴社)です。
  例会では「イヌイットは残酷か」のページが紹介されました。初参加の春日英樹氏曰く。
 「つい先日、極地に住む人々の生活を授業したばかり。この本に出会っていれ ば、カリブーの腸をうどんのようにずるずると食べ始めたという写真資料を  使って生徒の心に届く授業ができたのにな。」
◆ 森山先生、御寄稿下さいましてどうもありがとうございました。森山先生の 教育に対する瑞々しい感覚に敬服いたします。いくつになっても、素直さや直 向きな姿勢を持ち続けたいと思いました。         【茶田 敏明】



 (文責:茶田敏明 熱海市立泉小学校)