“ゆい”例会報告−2000(平成12)年9月22日

2000(平成12)年9月伊東例会の報告 (資料提供:向井・春日)

    
 
「南中選挙」の実践報告で“ゆい”の仲間になった春日氏、長田農園で鶏を絞める貴重な体験をした春日氏が感想を書いてくれました。


 9月22日の例会参加者は、宮村先生と菊田先生、私の3名でした。出席者が少なかったこともあって、主な報告者は菊田先生だけでした。しかし、│
その報告は「目から鱗が落ちる」おもしろい内容でした。
 菊田先生の報告は「貿易ゲーム」というものです。
 「貿易ゲーム」のねらいは、さまざまな資源(種類や量)を持つ国家間貿易の相互依存を擬似体験することです。
 方法は、クラスを5つのグループに分け、それぞれが新聞紙や色画用紙、はさみ、のり等を持ちます。各グループは所与の資源を活かして、紙の輪の鎖(製品)を作ります。その過程で「資源」(新聞紙・色画用紙)を持っているグループ、「技術」(はさみ等)を持っているグループに差が出ます。
また、「新技術」(ホッチキス)を投入することで商品の価値が変化し、商品を売って利益を上げるグループはさらに豊かになったり、貧しいグループはさらに貧しくなったりするのです(この逆もあります)。このように、ゲームを通して実際の貿易をシミュレーションできるのです。 元来は高校生向きの教材なのですが、中学生でも少し工夫すれば、可能だそうです。チャンスを見付けて授業に取り入れてみます。



  【高校世界史:貿易ゲーム】       伊東商業高校 菊田 兼一
○ 具体的な方法は〈資料1〉を参照されたし。
 →http://www.joca.or.jp/ob-kai/krk/worldtrade.htm
○ 授業プリントは〈資料2〉を参照されたし。
○ 高校生の反応の例を示す。


「なぜこのような結果になったのか。」

 ・道具が足りなかった。価格が高いうちに早く売ればよかった。
 ・道具がないから形を作るまでが大変で、道具のある人たちにどんどん差をつ  けられてしまう。

「豊かになる秘訣は何か。」

 ・良い品質のものを作る。上質紙を使ったものがよく売れる。
 ・新しい技術を導入する。ホッチキスがポイント。

「貧しくなる秘訣は何か。」

 ・自分のところだけでやる。

「グループごとで、どのような交換がまとまったか。」

 ・定規と鉛筆を交換した。
 ・定規、はさみ、スティック糊を9万円(資本金)で買った。
 ・2万円で製品の原料を借りた。

「ゲーム中にどのような協力、分業、競争、言い争い等があったか。」

 ・ホッチキスの買い占めに対して言い争った。

「鎖の世界市場価格の下落は、金持ちグループと貧乏グループそれぞれに、どのような影響があったか。」

 ・金持ちグループは道具を揃えているから大丈夫。しかし、貧乏グループは紙とか道具がないためにもっと貧しくなる。
 ・金持ちグループはどんどん金持ちになっていく。貧乏グループは変わらないか、あるいはどんどん貧乏になる。

「新しい技術の開発によって、金持ちグループがさらに金持ちになる一方、貧しいグループが一層貧しくなるのはなぜか。」

 ・同じ製品でも、糊とホッチキスだと5倍以上も値段がちがうから。
 ・金持ちグループは、新しい技術をすぐに手に入れられるから生産量を増やせる。貧乏グループは、技術を手に入れられないから生産量が増やせない。
 ・新しい技術を手に入れることができた金持ちグループは、それを使ってさらにもうけることができるから。

「貿易をスムーズに行い、言い争いをせずにお互い発展する方法は何か。」

 ・話し合い。互いを助け合う心。

「現実世界では国ごとに言葉、政治体制、お金の価値、宗教や商いの習慣が異なる。その中で、お互いが発展していくにはどうすればいいか。」

 ・技術を交換し合う。
 ・相互理解。
 ・他の国の言葉を勉強したり、うまく譲り合う。
 ・共通の言語を作ったり、共通のお金、またはそれに代わる何かを作る。
 ・貿易では宗教や商い習慣のちがいにこだわらない。
 ・自国の利益が第一という態度ではなく、他国のことも考え、争いをなくす。

→ 現実の複雑な社会事象を単純化して、その本質を理解しやすくした効果的な学習方法です。高校生が知らず知らず夢中になる様子が浮かびます。




2000(平成12)年9月熱海例会の報告


 【中学地理:地域・都道府県を探求しよう】   熱海多賀中 加藤 好一
 今回の報告は『世界地理授業プリント−学びあう作品づくりへ−』(地歴社)の続編、日本地理。第3章23ページ分の構成は次の通り。


1 屋上からの社会科 │
2 地図から地域を探る │
3 読図力を高めよう │
4 水準点のふしぎ │
 ☆ 昔と今の地図くらべ(発展教材) │
5 地域につながる日本と世界 │
6 地形図から学び合う県内の各地 │
7 生徒学習・教師授業のハーモニー │


 この単元で私がねらいとするのは次の3点である。
┌────────────────────────────────┐
│●地域を学ぶ ●地域で学ぶ ●地域から学びを広げる             │
└────────────────────────────────┘│
 自分たちの地域ではどこに何があるのか、その特色は地図にどう表されているのか。生徒たちは実習や読図を通して、まずはそのような“入門”学習を始める。それが「地域を学ぶ」第一歩となる。
 次いで彼らは、自然、土地利用、社会・交通はどう変わってきたか、昔と今の地図を比較して地域の変貌をつかむ。すると、一人一人のなかにさまざまな課題や調べたい事柄が生まれてくる。ここで学習は「地域を学ぶ」から「地域で学ぶ」段階へと進むのである。
 教師は生徒を地域へ“離陸”させ、さまざまな調査活動にチャレンジさせよう。“地域再発見”とでも言うべきその体験を通して生徒は新たな視点から地域社会をとらえ直すようになっていく。極論すれば、それまでは身の回の何気ない“風景”でしかなかった地域が一つの有機的に構成された固有の地域社会としてとらえ直されるようになるのである。
 では、その自分たちの地域社会は県内の他の地域社会とどのような違いと共通点があり、どう結びついているのか。いくつかの視点からそれを比較検討し、さらには相異なる地域社会の集合体である自分たちの県や全国の都道府県へと個性的な学習を発展させたい。それが、「地域社会から学びを広げる」という最後の段階なのである。


○ 生徒の作品(10ページ)へのアドバイス例
  総合的な学習における学び方の指導の参考になる。勘所を心得たアドバイス を学びたい。
○ 戦前の地形図の地図記号
  現在の地形図の2倍以上の種類の地図記号を用いていた理由の考察が興味深 い。例えば、水田は3種類に区別された。乾田、水田、沼田の3種類である。 乾田とは、冬に水を落とし裏作ができる二毛作田。水田とは、冬の裏作ができ ない湿田、一毛作田。沼田とは、農作業も容易でない深い田。
  なぜこのような詳しい区別がされたのか。それは農家のためではなく、軍隊 の行動に役立てるためであった。「沼田」「通過困難な草地」が分かっていれ ば、そこに兵隊は通さない。「独立樹」は行軍の際の目標物になる。
  この詳しさを地域の過去を具体的に知る手がかりにすれば、戦前の地形図は 地域学習の強い味方になる。



             《会報“ゆい”の編集後記》
◇ 熱海市泉地区は静岡県と神奈川県の県境にある。この県境という地域性を生 かした総合的な学習に挑戦。「自ら課題を見付ける」ための具体的な手立ての 一つが12ページのプリントである。
◇ 「湯河原町と泉」の地図から地名を探す。泉小学校のある「泉本区」、市役 所の泉支所がある「泉五軒町」、開拓地の「泉中沢」。そして、大きな文字で 書かれた「湯河原町」。次に、泉(熱海市)と湯河原町との境界線を引く。県 境の記号を教えると、子供は千歳川沿いに境界線を引ける。
◇ 泉の市外局番は〈0465〉だ。同じ市外局番を静岡県から探そうとしても 出てこない。静岡県は〈05〜〉だからだ。神奈川県を見ると小田原市、南足 柄市、真鶴町、湯河原町が〈0465〉だ。
 「泉は静岡県なのに、湯河原町と同じだから、神奈川県扱いされている。」
◇ 郵便番号を見ると、熱海市泉は〈413−0001〉で、〈259−〜〉の 湯河原町とは別扱いだ。ところが、湯河原町に〈259−0315〉で泉とい う地名がある。熱海市「泉」と湯河原町「泉」は同じ所?別の所?
◇ 千葉県と茨城県の県境に目を向けよう。波崎町は利根川をはさんで銚子市と
 向かい合う。地名探しで場所を確認した後、千葉県と茨城県の境界線を引く。利根川が境界線になっているのは千歳川と同じだと理解できる。
◇ 茨城県波崎町の市外局番は〈0479〉。茨城県の多くは〈02〜〉だ。千 葉県から〈0479〉を探す。銚子市が〈0479〉だ。
 「波崎町は茨城県なのに、銚子市と同じだから、千葉県扱いされている。」
◇ 境界を接する相手側の県扱いされている場所は他にもないだろうか。市外局 番は雄弁に物語る。
 ★ 茨城県取手市小堀=〈0471〉
 ▲ 千葉県我孫子市 =〈0471〉
 ★ 茨城県潮来町潮来十四番=〈0478〉
 ▲ 千葉県佐原市     =〈0478〉
 「茨城県にありながら千葉県扱いされている所が他にもある。」
  このプリントを通して、県境の泉と湯河原町との特色ある関係を追究してみ たいというグループ全員の課題意識は高まった。       【茶田敏明】

 (文責:茶田敏明 熱海市立泉小学校)