“ゆい”例会報告−2000(平成12)年12月

2000(平成12)年12月合同例会の報告 

 20世紀最後の例会は、12月21日。参加者は、春日・相馬・向井・加藤・宮村・菊田・茶田の7名。初参加の相馬さんは伊東南中の女性教師。



1 相馬報告 「ものづくりを通して学ぶ選択社会科」
       ・消しゴムを素材として金印のレプリカを作る
       ・木製の鍬を作り、鉄製の鍬と耕し比べをする
2 菊田報告 「シミュレーションゲーム:インドの農業」
3 加藤報告 「地域から見る日中戦争」
       「アフリカ地理学習のまとめ」



□地域から見る日中戦争□

 戦争の学習では、立場の違いによって議論が噛み合わない場合がある。そこで、共通の土俵として、兵士として日中戦争に赴いた地域の人々の資料を用いた。

1 伊東市富戸 稲葉源一郎『従軍手帳』より



@物入れに ハモニカを持つ 捕虜ありて 楡の木陰に 吹くをすすめぬ
A銃殺の 前の一時 吹き鳴らす ハモニカの曲 何を調ぶる
B捕虜となりて 吹き鳴らす曲は 何ならむ 兵等静かに 耳かたむけつ
C息つきて ハモニカを吹く その胸を 1時間後に 弾丸はとほらむ





 捕虜となった中国人は、ポケットにハーモニカを忍ばせている。稲葉さんは、木陰で演奏するように勧める。これだけならば、戦争にもほっとできる一こまがあったのかと感じられる。しかし、それはまもなく銃殺される捕虜であることが次の句で分かる。「静かに耳を傾ける兵等」は、ハーモニカを吹く捕虜を銃殺する任務を負っているかもしれない。稲葉さんは、1時間後にその捕虜の最期を見届けるのである。


2 熱海市和田木 平井菊夫『蜜柑の園』より


@ 8人の 生死は一つ 息を呑む 瞬時を照らす 敵の照明弾
A 火焔放射機 負ひて トーチカに進みたる 一等兵は つひに帰らず
B われなくば 後を託すと 弟に 遺書したためぬ 9月21日
C 看護婦の 髪の匂ひを なつかしみ 陸軍病院に 検温を待つ





 8人とは、陸軍組織の最小単位「分隊」のこと。照明弾を用いるということは、夜間の戦闘なのだろうか。火焔放射機はガソリンを燃料とする。コンクリートで堅固に構築したトーチカに突撃した一等兵は帰らぬ人となる。平井さん自らも深手を負い、これで終わりかと覚悟を決める。陸軍病院で看護婦の髪の匂いを感じ、生き延びたと安堵する。

3 多賀地区 ある戦死者の従軍手帳メモより


    皇国の母
(前略)

ご無事のお帰り待ちますと  言えば貴君は雄々しくも
今度逢う日は来年4月    靖国神社の花の(?)

東洋平和の為ならば     なんで泣きましょ国の為
散った貴君の形見の坊や   きっと立派に育てます

    軍国の母

心置きなく国の為      名誉の戦死頼むぞと
涙も見せずはげまして    我が子を送る朝の駅

散れよ若木の桜花      男子と生まれ戦場に
銃剣とるのも国の為     日本男子の本懐ぞ

生きて帰ると思うなよ    白木の箱が届いたり
でかした倅天晴と      お前よ母はほめてやる

(後略)



 特定の思想からこのように理解することが望ましい、という指導をしてはならない。また、特定の思想を排除する扱いをすべきではない。上のような生の資料を読むことにより、その間にある“ずれ”に気づかせることが大切だ。「満州事変は満州に侵略したというけれど、3の資料では、『東洋平和』のため と書いてある。満州国を建国することが、東洋の平和につながるだろうか。」などといった追究意欲を引き出すことを目標にしたい。
 思想ではなく事実から戦争の実相を考えることが重要だ。




               《会報“ゆい”の編集後記》
◇ アフリカ地理学習(中学)に関する工夫が紹介された。第1は、国名とその 位置。プリントには、国境線の入った白地図と国名を記入する表がある。面白 いのは指示の出し方だ。


国名の最後に「ア」が付く国を16ヵ国見つけ、表に書き入れなさい。
地図には表と同じ番号を書き入れなさい。



  このような一捻りは虚を衝かれた感じがする。ちなみに、「〜ia」という のはラテン語で「〜の土地」という意味だそうだ。東ヨーロッパでは、ブルガ リア・ルーマニアなどの国名が該当する。
  この指示には、答えが隣と同じになりにくいという利点がある。表の@にア ルジェリアと書く子もあるし、リビアと書いてしまう子もあるからだ。これは、 自動的にカンニングの防止となる(テストではないが…)。
  頭の回転が速い子は、表に記入した国名から着色をし、重複しないように数える。そういう工夫をすぐに見つけ、大いに誉める。子供のやる気に火を点け るとはこのような具体的な方法を言うのだ、と感心する。
◇ 第2は、ミニ調べ。まとめの段階で効果的な学習方法だという。アフリカの
 地理に関することなら何でもいい。例えば、アフリカの河川を地図に描き、そ の流域にある事柄をまとめるといった具合である。同じ規格の写し紙を用意し、 ミニ調べに供する。自分のレベルや興味に応じた学習を保障しているのだ。


        【授業の原則(加藤実践から学ぶ)】
◎最低限のことはきちっと教える→国名とその位置
◎その子が持つ力を発揮させる→ミニ調べ



◇ サークル会計は健全です。これは、会員の皆様のご協力と向井先生(会計係) のおかげです。この場を借りてお礼申し上げます。            


 (文責:茶田敏明 熱海市立泉小学校)