30年後の日本

第4回 シナリオA「憲法がかわりました」


 シナリオAのつづきである。30年後の日本。
 こんどは経済・社会から、安全保障・外交に話をうつす。

  • 憲法9条が改定され、自衛隊は自衛軍となって日本は海外で武力行使できるようになっている。
  • 中央アジアの某国で反米政権が生まれ、「テロ対策」を口実に多国籍軍が派兵。日本も最初は後方支援として参加するが、途中から掃討作戦にも兵を出すようになる。イギリス・オーストラリアとともに武力行使。
  • 日本はテロの標準ターゲットとなり、警備の甘い地方都市で爆弾事件。




9条がなくなる

 まず、シナリオAの社会では憲法9条はなくなっている。自民党憲法草案どおりに採択される。

第二章 安全保障

(安全保障と平和主義)
第九条  日本国民は、諸国民の公正と信義に対する信頼に基づき恒久の国際平和を実現するという平和主義の理念を崇高なものと認め、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する平和国家としての実績に係る国際的な信頼にこたえるため、この理念を将来にわたり堅持する。

 前項の理念を踏まえ、国際紛争を解決する手段としては、戦争その他の武力の行使又は武力による威嚇を永久に行わないこととする。

 日本国民は、第一項の理念に基づき、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動に主体的かつ積極的に寄与するよう努めるものとする。

(自衛軍)
第九条の二 侵略から我が国を防衛し、国家の平和及び独立並びに国民の安全を確保するため、自衛軍を保持する。

 自衛軍は、自衛のために必要な限度での活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動並びに我が国の基本的な公共の秩序の維持のための活動を行うことができる。

 自衛軍による活動は、我が国の法令並びに国際法規及び国際慣例を遵守して行わなければならない。
 自衛軍の組織及び運営に関する事項は、法律で定める。

(自衛軍の統制)
第九条の三 自衛軍は、内閣総理大臣の指揮監督に服する。

 前条第二項に定める自衛軍の活動については、事前に、時宜によっては事後に、法律の定めるところにより、国会の承認を受けなければならない。

 第二項に定めるもののほか、自衛軍の統制に関し必要な事項は、法律で定める。




海外でアメリカとともに戦争ができる国に

 憲法9条の改定であるが、周知のとおり、これは自衛隊を自衛軍に格上げするというだけのものではない。
 これまでの9条では絶対突破できなかった(1)集団的自衛権の行使(2)国連の武力行使への参加(3)武力行使をともなう海外派兵という3点を突破するためである。

「自衛隊は、わが国の自衛のための必要最小限度の実力組織であるということで憲法9条に違反するものではないことが根本です。そういった自衛隊の存在理由から派生する当然の問題として3つあると思います。一つは、いわゆる海外派兵、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは……略……許されない。次に、集団的自衛権は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲を超えるもので許されない。第三番目として、……中略……国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、これに参加することは許されない」(1990年10月24日衆院国連平和協力特別委員会。工藤敦夫内閣法制局長官=当時)

 逆に言えば、この制約を突破するために憲法9条の改定がおこなわれる。
 「日本本土を防衛するため」というためなら、憲法9条下で、「戦力にはいたらない、必要最小限の実力としての自衛隊」が「武力行使にはならない、自衛のための武力行使」を発揮すればいいのである。それを国民世論にあえて逆らって改憲するのは、アメリカの要求にこたえるためだ。

「海外での役割の拡大を通じて、日本は、さらに注目すべき地球規模のパートナーとなった。だが、課題が残っている。それは日本がどのような地球規模の役割を果たすかにある。あえて言えば、その決断には日本の憲法九条の問題がかかわっている」(アーミテージ米前国務副長官 読売新聞2005年12月4日付「地球を読む」)




米国が望む「米英・米豪のような日米同盟」

 米国防総省報告が06年2月に発表した「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)で、米英や米豪の軍事同盟関係を「このような密接な軍事関係は、アメリカが他の同盟国や友好国と促進しようとしている協力の広がりと深さのモデルである」とのべたように、同盟国日本をアメリカはどのように変えようとしているかといえば、憲法9条を変えて、イギリスやオーストラリアのように、アメリカがおこした戦争に武力行使つきで直接同盟軍として参加することだ。

 アメリカは有名なブッシュ・ドクトリン(国家安全保障戦略NSS)を4年前に発表した。そのとき「米国は長年にわたり、国家安全保障に対する十分な脅威に対しては先制攻撃を行う選択肢を保持してきた。脅威が大きいほど、行動をとらないことはリスクが大きく、また敵の攻撃の時間と場所が不確かであっても、自衛のために先制攻撃を行う論拠が強まる。敵によるそのような敵対行為を未然に防ぐために、米国は必要ならば先制的に攻撃する」とのべ、「核態勢見直し」報告(NPR)では北朝鮮、イラク、イラン、シリア、リビアを「さしせまった非常事態、潜在的非常事態、不測の非常事態のいずれにも関連する国」とみなしていた。

 今回(06年)のQDRとNSSが書き直され、この先制攻撃や単独行動主義は維持されている。
 しかし、それ以上に、アメリカは国際的孤立ではなく、同盟国との協調を強調するようになった(このあたりについては、「前衛」誌2006年7月号・森原公敏「ブッシュ政権の世界戦略 その継続と変化」に詳しい)。
 米国は現在米軍の世界的な再編をすすめているが、これは特定の脅威国家への地域的な備えをするのではなくて、地球上のどこでも起きる危機と紛争に介入できる態勢をつくることに大きな主眼がある。
 そして、もう一つは、同盟国との軍事的協力を強化することである。

 
 座間にやってくる米軍の新司令部(UEX)はストライカー旅団をはじめ、世界中の紛争に即座に対応するためのものだし、米軍と自衛隊の基地共用や一体化があわせてもちこまれているように、日本ですすむ米軍の再編も、この二つの観点がモロにもちこまれている。

 その総仕上げが「憲法9条の改定」である。
 武力行使をもって海外で米国とともに戦争できる国家に変化することが、30年後の日本の姿なのだ。