吉田つとむ
『地方議員のための
支持者をふやすホームページの鉄則』



 前に東京・町田市長選挙の政連ポスターを論じたことがあったが、そのとき当選した石阪丈一市長がとんでもないことになっているなあ(前職であった横浜市の職員にたいして自分の政治資金パーティーへの参加を呼びかけたことに関与した疑いでガサ入れ、事情聴取)。

地方議員のための支持者をふやすホームページの鉄則―ネット時代の議員活動PR・新手法!  さて、その石阪市長を推した町田市の自民党市議会議員、吉田つとむが『地方議員のための支持者をふやすホームページの鉄則』という本を出している。

 「ホームページ」。
 なかなか懐かしい響きではないか。中を見ても「ブログ」の「ブ」の字もない。
 しかし、それもそのはず。この本が出たのは2003年7月で、まさにブログがブームになる直前のものだからである。ついでにいえば、ぼくが「ホームページ」を始めたのとほぼ同時期に出版された本で、ここでブログへの言及がないことを笑うのは、自分を笑うのと同じである。

 目次に誰しも興味があろう。全部で180ページ、7つの章から構成されている。

第一章:読み手は誰かを意識しよう――読者を得る
第二章:ホームページ作成にはいくらかかるのか――コストカットを極める
第三章:コンテンツの充実と基本項目のつくり方・考え方――興味・関心をつかむ
第四章:どうすれば上手に、広く伝わるか――宣伝技法を会得する
第五章:双方向のメリットを活かすには――市民参加と対話をはかる
第六章:安全なホームページ管理・運営に心がける――セーフティネットに気を配る
第七章:インターネットは武器になる!――情報公開・自己開示のすすめ
補足:私が推奨する議員・政治家サイト

 全体をつらぬく思想は、第一章8〜9ページに登場する「人気サイトの分析結果」に要約されているだろう。次の5つを吉田は提唱する。

(1)情報量
(2)わかりやすさ
(3)個性
(4)ニーズに応えること
(5)親しみやすさ

 この項目のすぐ次に「人気のないサイトの特徴」という項目があるが、これはこの5点の欠如だと吉田はいう。いずれにせよ、吉田にとってはこの5点が基本思想なのである。

 あとは、この5点の思想にそいながら、まあ言ってみれば、サイトを開設し運営していくまでのポイントを、エッセイ風というかメモ書きふうにつづっていて、問題意識に感じている人であれば共感したり反発したりしながら読めるから面白いだろうと思う。

 えらいなと思ったのは、党派の違いをこえて、ほぼすべての政党の議員のホームページをわけへだてなく紹介していることだった。なかなかできることではない。

 ところで、読むにしたがって、ぼくは少しずつ違和感をおぼえていった。

 まず、「ホームページ作成にいくらかかるか」のところ。
 プロへの委託とともに、自分で開設・運営することもすすめているのである。
 この時代だから、当然業者が提供する無料・定型のブログのようなものではなく、自分でソフトを購入してその使い方を覚えて日々更新するという作業になる。
 ぼくは、自分でやってみて感じるし、あと、実際に自分が接する地方議員の年齢や技術感覚・自由時間などを見ていて思うのだが、かなり厳しいと思う。最初から腕に覚えのある人でなければ、専用ソフトで開設し毎日読みやすいホームページをつくっていくというのは、相当な困難である。
 しかし、まあ、たしかにやってやれなくはない。
 だから、ここではまず違和感を抑えておくことにしよう。

 しかし、また次のところでひっかかる。

 メールマガジンの作成につづいてメーリングリストを推奨しているのだ。まず後援会員の単純な連絡手段として「気楽に」使おうと呼びかけつつ、「クローズの中で、議論するのが主要な目的」(p.108)「単に講演会の連絡手段として利用するものから『政治情報』の相互交流の媒体がいつかできる、そうした時間をかけた考えに立ってみましょう」(p.109)とあるように、最終的には議論や政治情報の相互交流にまで高めようとしているのである。

 ぼくも今でもいくつかのメーリングリストに入っているし、サイトを持たない時期は、インターネットにむかってメーリングリストのやりとりを読み自分で投稿することにかなりの時間を割いていた。
 また、活発なメーリングリストでは、コミュニケーションのトラブルも起きやすく、ゆえに自分の投稿にも神経をとがらせる。いったんトラブルにまきこまれてしまうと、心底参ってしまう(ぼくも何度か遭った)。
 吉田も「地方議員であるこちらの立場は、一人親方の職人みたいなもの」(p.116)と認めているように、地方議員に秘書や事務局がいることは、まれである。せいぜいボランティアの後援会員がいるくらいなものだろう。とてもメーリングリストなど地方議員が主宰することなどできない(せいぜい他人の主宰するものに参加する程度だ)。
 しかし、吉田は、行動への共感が最終的には大事なのだといいつつも、自分の主張が「ネットに取り組む時間を掛けるという、古典的な手法の勧めの一面も持っています」(p.118)と認めているように、「汗の量で決まる」(p.116)と述べているのである。
 つまり、吉田はメーリングリストにかけるぐらいの情熱や時間を実践として求めているのである。

 これは、議員のホームページ指南としては舌を巻くというよりも無謀さを感じる。

 違和感が最大極に達するのは、「自分のHPを持っている地方議員にとって、そのHPに掲示板を併設することは当然の成り行きです」(p.121)とすすめるくだりである。

 なるほど、ブログ全盛(いやすでに盛りはすぎたという人は多いがここでは置いておいて)時代にあって、ブログを開設している政治家は多い。しかし、任意に政治家のブログをあげてみると、そこのコメント欄はどうなっているか(06年7月20日現在)。

●桜井 充(民主)→コメントに管理者の承認が必要
●大田 昌秀(社民)→本人ではなく秘書のブログ
●北神 圭朗(民主)→コメントに管理者の承認が必要
●保坂展人(社民)→コメント欄を閉鎖
●原田 義昭(自民)→コメントに管理者の承認が必要
●岸本周平(民主)→コメントに管理者の承認が必要
●加藤学(民主)→コメントに管理者の承認が必要
●遠山清彦(公明)→コメントにメールアドレスの登録が必要
●世耕弘成(自民)→コメント欄を閉鎖
●ツルネン・マルテイ(民主)→コメント欄を閉鎖……

 ほとんどこのように規制をかけているのが現状である。
 これにたいして、当時の技術もあっただろうが、吉田は何の規制もかけないことを前提とし「当然の成り行き」などとまで言っているのである。

 だいたいぼくがびっくりしたのは、掲示板について書いた章の冒頭、「ホームページ掲示板を開設する際の注意点は何か?」というところだ。ぼくはてっきり「荒らし対策」が書かれるのだと思った。吉田はこう書いている。

「大半のものを見ると、その入り口には、『ご自由にお書き下さい』と書いてあります」(p.121)

 ふむ、そう書くと、荒らしのアラシゴコロをくすぐってしまうからな、などとぼくが一人合点していると、あにはからんや、吉田は次のようにその理由を述べ出す。

「閲覧者は、『ご自由にお書き下さい』と指示されても、実際には何をテーマに書いてよいか、どのような話題を持ち込めばよいのか、迷うに決まっています」(同)
「あなただって、『自由に書け!』と言われても無理でしょう?」(p.123)

 おいおいおいおい……荒らしにスキを見せるからじゃなくて、まるで逆なのだ。大量にたくさん書いてもらえないからなのである。

 しかも、「掲示板はツリー形式がベスト」「タイトル別のスレッドの議論に参加でき、レスも付けやすい」「バックナンバーを振り返り、議論全体のテーマを見渡しやすくできる」(p.129)などとまで書いてあるではないか! 吉田先生、やる気まんまんですね

 百聞は一見にしかず。
 吉田のホームページに行ってみればわかる(こちら)。



 まず、上の、このいかにも手作りな、シロウト感満載、しかしコンテンツ充実には強い執着をもつホームページを見てほしい(他人のことはいえないが)。「わかりやすい」どころか、複雑に分岐したこの厖大な量のコンテンツに圧倒される。
 そしてどこを開いても見渡す限り文字文字文字文字文字文字文字文字文字文字文字文字文字文字……(いや、まったく他人のことは笑えませんが!)
 写真が本文にはほとんどない。
 おや写真のコーナーがある……と行ってみると、なんと証明書や領収書のようなものが写真にとって貼ってあるのである! 文字を写真に撮るという壮絶さ。

 一番驚くのは、保存されている掲示板議論である。しかも政策論争のものではなく、いわゆる荒らしにたいする議論まで載せている(原典はここ)。

質問します 投稿者:投票したのに。。 投稿日: 3月19日(日)16時05分11秒

はじめまして。

私はこの前の選挙であなたに投票したものです。
いつも駅にたっていたというのがその理由です。

しかし最近、いとこに「あの人は昼ごはんを税金で食べたい人だよ」
と聞いてがっかりしています。

議論掲示板でそのことが書いてあったと聞き見ようと思ったのですが、
閉鎖されていて見られません。
人によれば議長になりたかったから「昼ごはん」のことを見られると
都合が悪いからわざと閉鎖したんだよ。といいます。

それはいいとしても
@議長になると何がいいのか?
Aお昼ごはんは本当に税金でまかなわれているのか?
Bそのことに賛成か、反対か?

わかりやすく答えてください。
その他のことはややこしいので結構です。

よろしくお願いします。
「投票したのに」さんの質問に答える 投稿者:吉田つとむ(町田市議) 投稿日: 3月19日(日)17時15分24秒

 「投票したのに」さんが、私への質問として、次の3問をあげられていますので、それに具体的にお答えしましょう。

(1)議長になると何がいいのか?
(2)お昼ごはんは本当に税金でまかなわれているのか?
(3)そのことに賛成か、反対か?

(1)議長になると何がいいのか?
 答え
 残念ながら、私は議長になったことが無いので正確には知りません。少なくとも、議員の一般質問に際して、行政の答弁がいい加減な時、(議員の質問にきちんと答えるように、などの発言で)積極的に議員の手助けをやれると理解しています。つまり、議長は単純な行司役とは思っていません。

(2)お昼ごはんは本当に税金でまかなわれているのか?
 この意味は、議員が視察や出張に出向いた際に、日当が出ていることに関するものを書いてあるのでしょう。現行の町田市議会では、上記に対して日当を出しています。私の理解では、一般のサラリーマンでも、泊りがけで地方に出向いた場合など、金額の多寡は別として出張旅費の中でこの日当が出ています。日当を廃ししたいとする人には、そのように答えています。要は、議員としてどのような価値ある実績を残すだと考えています。
 もし、今の視察のやり方に問題があるとすれば、宿泊費や交通旅費が実額制で無い事がより大きな問題です。これは一般の公務員の場合にも指摘されるところですが、宿泊費や交通旅費の費用で差額が出た場合の対処の方法が記載されていないことです。本来は、その領収書を添えて提出するべきものだと理解しています。

 なお、この「あの人は昼ごはんを税金で食べたい人だよ」と言う意味がそのものであれば、私はほぼ議員専業に近く、議員であることによって間違いなく報酬を得ており、自分が税金で生きているということにもなるかも知れません。
この人、当選しちゃったんだ。残念。 投稿者:この人、当選しちゃったんだ。残 投稿日: 3月20日(月)03時12分39秒

議論掲示板は選挙期間中に突然調子が悪くなってしまいましたね笑
非常に驚きました。
いろいろ書いてあったので、有権者の投票行動の参考になったでしょうに。
昼飯電話代の税金支出問題、耐震偽装の伊藤公介、町田市職員の異常厚遇問題、
そして廃プラスチック問題・・
選挙に不利だからって隠しちゃダメ。
組織票で守られてるでしょうから、当落には関係なかったでしょうが・・
情報公開のエキスパート!とかいってるけど、みんな呆れてますよ。
4年後は出ないでくださいね。
有権者の判断を受け、当選しています 投稿者:吉田つとむ(町田市議) 投稿日: 3月20日(月)07時41分26秒

 様々の掲示板が異常な量の書き込みにあって運営不能になったり、その運用が不安定になたりするのは、この間に多数見られることです。掲示板の利用者であれば、どこにでも散見することです。

 選挙の結果やプロセスに関して、後からいろいろ言いたい人に対して、どのような返答をしても結局はあれこれの言い分や書き分を主張されることでしょう。これからもどのようなハンドルネームの人物が登場するか、そしてまた主張をしてくるか、閲覧者の皆さんもじっくりとご覧いただきたいと思います。

 さて、私のHP(公式、ブログ、メールマガジン、掲示板)は多数の情報を掲載しており、日ごろから十分に有権者の参考にされています。そのために、「廃プラスチック問題」においてさえ、請願反対議員の犯人探しをしようと思ったら、本人が先にネットで公表していることに気づかれたほどです。また、この種の団体から公開質問状を提起された時も、必ずに近いほど返答をしており、情報公開度では誰にも引けは取りません。(以下略)

  これは一部にすぎない。
 吉田の、よくいえば「誠実」ぶり、悪くいえば「粘着厨」ぶりがわかるであろう。
 そして「あっぱれ」なのは、吉田はブログを現在開設し、コメント欄を開放していることである。また本体ホームページにはなんと「議論用掲示板」まであるのだ(現在は荒らしではなくスパムの巣になっているが)。


 政治の中身は別としても、ホームページとしては、ここまでやればある意味「立派」というべきである。しかし、スタッフもなしにこれを真似できる地方議員は天下広しといえども、この男だけかもしれない。





学陽書房
2006.7.21感想記
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