
わたしは、有事法制賛成派のかたからもときどきメールをいただきます。
わたしとしては、できるだけ賛成派のかたとも、手をとりあえるところは
とりあいたいとねがっています。長くてご不快かもしれないのですが、
わたしの思うところをお聞きくだされば幸いです。
結論からいうと、
「専守防衛を願っている人は、ごいっしょに現行法制の範囲で国を守ることにして、
相手を攻めにいって、有事にまきこまれにいくような、
現有事法制(有事3法)を廃止(発動を阻止)しませんか?」
ということを呼びかけたい、という気持ちです。ぜひ手を組みたい。
というのは、
(1)
国会答弁+法律をみると、米軍がアジアで戦争に介入し、
外国や公海に出かけていった自衛艦などが攻撃「されるかも」というので、
法律が発動され、自治体・国民動員がはじまり、
自衛隊は、海外で武力行使=戦争が可能になる、というケースが、
わたしはいちばんリアリティがありそうだと思うんです。
(5月9日衆院有事特委、福田答弁など=断り書きがないかぎり2003年)
2chでもわたしのマンガは「呑気すぎる」と批判されましたが、
これは、マンガの後につけた文章にも書いたように、
本土への侵攻ではなく、まったくの海外での米軍有事によって、発動されたばあい、
国民はある意味で「呑気」だろうからです。
本土が攻められているなら、罰則でおどすまでもなく、
国民は協力するとおもうのですが、
実際には、そうでないから、強制動員するわけですね。
(物資保管命令違反への懲役罰則など)
イラク戦争において、これだけの「兵力」と「陣地」が必要とされました。
●米軍22万5000人
●米軍航空機1100機
●米軍ミサイル垂直発射装置2200基
●米軍戦車など戦闘車両1250両
●米軍トマホークミサイル1000発
●米軍艦船50隻(空母5隻ふくむ)
●英軍2万5000人
●英軍航空機100機
●英軍艦船10隻以上(空母1隻をふくむ)
●豪軍2000人(特殊部隊150人など)
●クウェート:4基地
●カタール:4.5キロの滑走路、シェルターなど2基地
●オマーン:2基地
●アラブ首長国連邦:1基地
●サウジアラビア:1基地
●トルコ:1基地
●バーレーン:1基地
●ジブチ:1基地 (「日経」3月20日付夕刊)
くわえて、これをまかなう数百万トンの水、食糧、燃料が要ります。
1個師団(1万6千人程度)の維持だけで――いいですか、1個師団だけですよ――
1日あたり水100万リットル、燃料230万リットルがイラク戦では必要でした。
日本有事ではなく、もし、朝鮮半島での米軍の介入による有事を考えれば、
日本がこの兵站をになう、ということが
おそらくもっとも高いリアリティだろうとおもうのです。
だから、そのためのヒト・モノ、ばあいによっては土地が要るというのは、
それにふさわしい話なのです。
傷病兵収容は、実は米軍が「1000人」という数で実際に日本に
要請してきている数字です。(^^)>琉球新報97年12月7日付
各種兵站の物資量もすでに1059項目の具体的な指示が米軍からおりてきています。
(統合幕僚会議内部資料=99年衆院)
もちろん、日本有事ではなく、朝鮮有事として、ね。
(2)
イラク戦争をご覧になったとおもうんですが、
あれは、よほどのナイーブなかたでないかぎり、
「先制攻撃」戦争、つまり侵略戦争だということは、よくおわかりのはずです。
そして、ブッシュ・ドクトリンは、この先制攻撃を、国家戦略にしています。
もし、(1)であげた米軍の戦争が先制攻撃戦争なら、日本は侵略戦争への加担を、
この有事法案でおこなうことになるんじゃないでしょうか。
石破氏はこういう経緯ではじまった戦争でも発動しうるといいました。
(4月24日衆院有事特委、石破答弁など)
民主党の前原氏も同じ答弁をしました。(5月9日衆院)
あるいは、周辺事態とよばれるアジアでの米軍の紛争が
そのまま「有事」あつかいされ、発動される、ということにもなりました。
(5月9日衆院有事特委、石破答弁など)
日本国民の安全をまもる自衛戦争ではなく、専守防衛の戦争ではなく、
海外侵略の戦争、というわけです。
それはさすがにヤバいだろう、と思う人はいらっしゃるのではありませんか。
いや、志をおなじくできる人は少なくなかろうと思うのです。
民主党などのやっている「修正」はこの危険な本旨を
なんら変えるものではありません。麻生幾氏(『宣戦布告』著者)が
毎日新聞(5月19日付)で、“戦時にはどうやっても人権侵害がある”“アメリカ
と戦争をする覚悟をすべきだ”と指摘したのは、ある意味、ひじょうに正しいのです。
民主党の「修正」は、この覚悟を問わない、ごまかしです。
(3)
わたしは、よく賛成派のかたがたと議論もし、
BBSも拝見しますが、あまりよく考えていない方は
A)国会答弁はおろか法案を読んでいない、
B)「軍事力による平和か、武力なき平和か」、という単純な対決軸をしく、
C)想定している有事にほとんどリアリティがない、
という特徴があります。(賛成派のなかでも、よく考えている方は別ですよ)
とくに、北朝鮮による国家規模での侵攻と大規模陸戦とか、
バックファイア飛来などを想定している方が多くて、何をかいわんや、です。
「(北朝鮮の)軍事用の石油は、どんなに多く計算しても年間五十万トンを超えない。
これでは、石油備蓄があるとしても、数カ月の戦争を遂行するのは不可能である」
(重村智計『北朝鮮データブック』)
どうして、米軍による朝鮮有事、というもっとも高いリアリティに
目をふさぐのかなあ、と。
ある賛成派のかたは、潜水艇による部隊の侵入、という麻生幾氏の想定を借用されて
いましたが、これは一定のリアリティがあります。
でも、それなら細かいことはいろいろありますが(現行法では麻薬が使えないとか)
現行法制で防衛出動し、「武力せん滅」したらどうでしょうか。
(しろ、という気はないのですが)
彼我の軍事力差をみれば、おそらく決着は瞬時でしょう。
(現行自衛隊法は「おそれ」でも発動可能です)
できるできないは、ただ政治の決断だけです。
(これも「しろ」という気はありません)
防衛庁幹部がいっているようにすでに、「日本有事」にそなえるカタチでの法制は
「九十数%は整備」されています。(88年衆院予算委での防衛事務次官答弁など)
超法規の心配をされる人もいますが、「鉄壁の有事法制」があった戦前、
なぜ沖縄戦のときのように、超法規の軍事活動がおこなわれたか、
ということもよく考えてみる必要があります。
(4)
わたしはもともと武力によらない平和をめざしています。
が、最小限の武力によって国を守ろうという人が多いのも事実です。
そこで、提案したいのです。
非武装派も、専守防衛派も、共同して、
いまの「先制攻撃加担型」の現有事法制には、反対しようではないか、と。
とくに法案賛成派は、アメリカの先制攻撃戦争についていく法律
がいいのかどうか、を明確にのべる義務があります。
そして、それが可能であるという国会答弁や法案の規定を、
どうするのか、ということに、しっかり答えるべきです。
一方反対派は、万一攻められたら、非武装でいくのかどうかを答える義務があります。
わたしは後者ですから、
「とりあえず現行法制の範囲内でおこない、先制攻撃協力法制には
専守防衛派と一致して反対する」とこたえます。
高知県の橋本知事のいったように、あるいは東京の狛江市長がいったように、
攻められて目の前で家族が殺されそうになれば、
先頭に立ってたたかうでしょうし、おそらく軍にも協力するでしょう。
「先制攻撃もしかたがない」という人、
それは国際法違反の行為で、そんな人はいないとおもいますが、
94年の朝鮮危機で、米軍が(もし軍事行使をしたばあい)
「10万人の米軍の死者、100万人の日米韓朝の死者、
1兆ドルの経済損失」と試算したことの覚悟をひきうける気があるかどうか。
そして、そういう人は、ジェシカ・エドワーズの告発じゃないですけど(^^)、
「アンタ、ちゃんと軍に志願してるの?」「安全な場所から主戦論を叫ぶなよ」
という非難にしっかり耳をかたむけるべきでしょうね。
まず自分が戦場に行かなきゃ。
戦争がどんなものかという覚悟もなく先制攻撃をとなえる人は、「平和ボケ」です。
(5)
最後に。
ジャーナリストの吉岡忍が、日本の高校生が戦争についてかいた作文をみて、
どれも「攻められたらどうする」という想定ではじまっていることに驚き、
じぶんたちが攻めにいく、という近代の歴史がすっぽり欠如していることに
危機感をおぼえています。(『ルポ 学校の力』)
アメリカの非常事態法制もイギリスやフランスの有事立法も、
戦後発動されたのは、ほとんどが遠征戦争と国民(植民地)弾圧のためで、
本土が他国に侵攻されて発動したものはひとつとしてありません。
いま、アチェで有事法制が発動していますが、独立弾圧に使われています。
「いま、そこにある危機」――アメリカがアジアのどこかの国を先制攻撃し、
それに日本が加担するかもしれないという危機を、あなたはどう解決するのか。
有事法制審議で問われているのは、その問題なのです。
参加する覚悟か、おりる聡明さか。
防衛庁さえ否定している、
「どこかの国が日本本土に侵攻し、大規模陸戦」などという夢想ではなく。
有事3法は通りましたが、具体化していく法律はこれからになります。
核となる米軍支援の具体法はこれから国会に提出されます。
わたしは、その具体化や法律の発動をとめようと考えています。
そして、通ってしまった有事3法も危険なものである以上、やがては廃止したい。
専守防衛派の人は、ぜひ手をくみましょう。