松本光春『アフィリエイトではじめるホームページ ウハウハ副業生活』


 タイトルが長ェんだよ。
 レジとかで絶対問い合わせできない名前だ。内容はこれほど冷静なのに。


 ある金融系の企業につとめるぼくの知り合いは、ネットで副業をしている。
 何をしているのかを聞いたら、オークションだった。
 売れるの?と聞くと、利幅はそんなにないけど、ある種の金券は確実に売れ手堅く収入になる、ということだった。何を扱っているかと言えば、「株主優待券」であった。
 株主優待券というのは、株主にあたえられるプレミアム、おまけみたいなモンで、たとえばある鉄道会社の株をもっていると、タダでのれる券をくれたり、ある飲食店チェーンの株をもっているとタダの食事券をつけてくれる、というものである。
 こまごまとはここには書かないけど、銘柄やなぜそれを選ぶのか、という理屈には、なあるほどと思ったものである。くわしくは「株主優待券」「オークション」などで検索すれば、いくつかサイトやブログが出てくるのでそれを見てほしい。

 「売る」という行為は、「命がけの飛躍」(マルクス)である。
 しかし、確実にハケる、というわけだから、なかなかおいしい話のように見える。
 が、この場合、「株をもつ」というリスクがある。しかもそれは一定の元手を必要とする。もちろん、そのリスクを最小限にする方法もあって、その知り合いから聞いたのだが、まあそれはここではおいておこう。

 「もっと効率のいい、ネットの副業というのはあるの?」

と問うと、「そうだなあ。やっぱりアフィリエイトかな」という、ぼくにとっては、やや意外な答えが返ってきた。そんなにもうかるものかなあと思ったからである。

 その知り合いがしゃべったことは、この『アフィリエイトではじめるホームページウハウハ副業生活』で書いてあることとほぼ同じであった。読んでみて思ったのは、知り合いが言ったのは、低リスクのわりにモウケが期待できる、という意味であろうということだった。

 アフィリエイトをご存じない方のためにいっておくと、「自分の運営するサイトを経由して、あらかじめ契約している会社の商品が売れた場合に、売上の何%かが自分に支払われるシステム」(松本前掲書)である。
 もう少し具体的にいえば、たとえば、ぼくが化粧品の会社と提携(アフィリエイト)する。その会社の化粧品をぼくのサイトで紹介し、ぼくのページからリンクでとんでいって、その会社の化粧品を買ってくれれば、ぼくにたとえばその化粧品の金額の5%ぶんが紹介料として落ちる、というしくみだ。
 よくある「バナー広告」とのちがいは、そちらの場合、ぼくがその化粧品会社と契約して、ぼくのサイトにバナー広告をはって、ぼくのサイトを訪れた人が、そのバナー広告をクリックしてくれたら、ぼくにお金が落ちるしくみである。この場合、化粧品は必ずしも買ってくれなくてもよい。

 著者(松本)は、本書で、まずアフィリエイトと他のネット副業との比較をする。
●ちゃんとお金が稼げるか?
●自分の好きなことができるか?
●金銭的リスクが低いか?
●いつでもやめられるか?
●自分がいなくてもお金が稼げるか?
 などなどである。
 松本は、これらの諸点を比較し、アフィリエイトが、コストやリスクが非常に低く、しかも楽しみながら、時間も手間もとらずにできるということを論じる。「それって話がうますぎない?」とトビラで質問し、自分で「そうですね。でも本当のことなのです」と述べる。
 少なくともモウケがどれだけ出るかを別にすれば、アフィリエイトについてはこのようなことがいえるとぼくも思った(原理的にはバナー広告にもいえる。違いは実際の稼ぎ幅だけである)。

 ぼくが、読んでみて(あるいは知り合いの話を聞いてみて)最初に思ったことは、まず在庫や店舗などの投資費用が不要だということである。それは企業側が一手に引き受けている。これはサイト運営者にとってのメリット。
 他方で、企業側のメリットは、接客の端末がわずかなコストで増やせる、ということになる。しかも売り上げが発生したらはじめて払えばいいので、店舗をかまえて従業員を雇って、売れもしないのにそういうコストだけが消えていくというリスクはない。
 すでに言われつくしていることではあると思うけど、ネット以前には、ある店舗を利用するのは基本的にその地域にいる人以外には考えられなかったのだが、ネットの登場で、全国(理屈では全世界)から、一気に集客できる可能性ができた。
 しかし、それはまだ「可能性」にすぎない
 その「可能性」を「現実性」に転化させるには、端末であるネット上の「店舗」に集客し、そして実際に「買う」という「命がけの飛躍」をしなければならないからである。
 いうまでもなく、この端末がそれぞれのサイトである。
 アフィリエイトが最もさかんなものは、書籍、CD、DVD、ゲームなどで、だいたい、個人の感想サイトなどで広く行われている。アマゾンはこれを多数組織することによって爆発的に成長したことは有名。

 そのさい、たとえばコミックや活字書籍の場合、ネットの感想サイトが普通の書店と目に見えてちがうのは、「その本について楽しくおしゃべりをしている」ということであろう。いわば非常に自然な形でセールストークをしている、ということだ。

「突然飛び込んできたセールスマンや、よく知らない販売員から話を聞くときには、丸め込まれはしないかと警戒しながら話を聞く人が少なくありません。/一方、共通の趣味を持っていたり、共通の話題で盛り上がれるような仲のよい友達と話しているときには、警戒心は全くありません。素直な心で話を聞きますから、友達が特定の商品をほめても『へえー、そんなにいいんだ! 私も一度使ってみようかしら』と、抵抗なく受け入れることができます」

「広告とPRの違いは『語り手』の立場の違いです。作り手や売り手などの当事者が語るのが広告です。対して、作り手や売り手ではない、第三者を介して語るのがPRの特徴になります。/広告からは提案としての強さは感じますが、同時に売ろうとする強い意図が伝わってしまい、受け手が引いてしまうということも起こってしまいます。/一方、PRは、記者やライターなどの第三者が、客観的な視点から説明する形になるため、生活者〔消費者〕は売りたいという意図を感じません。当事者の意見より、第三者の意見の方が客観的で正確だろうと、受け入れやすくなるのです〔全メーカー新車徹底比較、などの記事〕」

(重田修治『「この人だから買いたい」と言わせる営業の法則』日経ビジネス人文庫)



 別に引用で権威づけるほどのことではない、よく知られた経験則ではあるが、ブログやホームページの場合、こういうクチコミ系の自然なセールストーク、または第三者的なPRが成立してしまうのである。
 もちろん、製造元からすればこのクチコミに乗るまでが大変なのであるが、「小売」として、有名な商品を売るだけの立場にある個々のサイト運営主にはまったくそんな事情は関係ない。世の中の有名な作品や話題の書物をとりあげて俎上に乗せればいいだけなのだから、話は簡単だ。
 「警戒心をほどかせて、売る」という形態に、書評サイトやブログほど適しているものはない

 しかし、それでも、最後の「購入」案内のところにくると、どうしても「売らんかな」臭が出てしまう。
 たとえば、この『アフィリエイトではじめるホームページウハウハ副業生活』の筆者、松本のサイトに行くと、書評の最後に署名にリンクがはってあって「ご購入はこちらからどうぞ」と控えめに書かれているだけである。多くの人にはこれでオッケーだと思うのだが、ぼくなどは、まだいくばくかの抵抗を感じてしまう。

 私のよく行くサイトでは、「魁!!漫画塾」がアフィリエイトをしており、次のような一文がトップページに、ついている。

「このバナーか表紙画像のどちらかをクリックすれば、辿り着いた先のページからその漫画が買えます。…(略)…このサイトから飛んで購入していただけると僕にも僅かながらお金が入りますが、どうせ大した額じゃないですし新しい漫画を買ってレビューを増やすための足しとして使うつもりですのでどうぞよろしくお願いします」

 ここまでくると一種の卑屈ささえただよっているが、それくらいまで低姿勢になって初めて、たしかに「売らんかな」臭は消える。ぼく的には、この説明からは一切「売りたいオーラ」は感じられない。見事である。

 しかし、書籍のアフィリエイトは実入りは少ない。
 3%の紹介料なら、1000円の本が売れても、30円にしかならない。
 松本の収入実績をみると、半年(ひょっとしたら7カ月)で、書籍ははじめの月は1冊、その後は100冊前後で推移し、現在は月300冊台にのせているが、337冊売っても、紹介料として入るのは1万6347円しかない。(これに対して、コンピュータ商品や金融商品は1つオーダーがあれば、高額の紹介料が入る。じっさい、松本は最終月に約10万円のアフィリエイト収入をあげているが、その8割はコンピュータ商品と金融商品からたたきだしているのである)。
 しかも、実際に購買につながるのは、

 そのページを見る → クリックする → クリック先で買う

という多段階を経なければならない。
 書評の場合、ページをみてクリックする率はなんと1%以下である。
 さらに、クリックした人がオーダーをする率は数%しかない。
 337冊が「命がけの飛躍」を果たすまでに、気の遠くなるほどのサイト訪問者・ページ表示が必要なのであり、どれだけ大きな裾野を広げねばならぬかが、わかるであろう。


 松本によれば、ブックレビューのようなタイプのサイトは、あくまでアフィリエイトの一つの形態でしかなく、他にも「関連サイト・商品紹介型」「アフィリエイトモール型」「比較検討型」「特集型」などがあるという。
 いわば、クチコミ系が「レビュー型」であるとすれば、PR系が「比較検討型」「特集型」ということになる。「商品紹介型」「アフィリエイトモール型」は、いわば現実に存在する商店と同じである。

 PR系のほうはわかるが、いったい現実に存在する商店と同じように、ただ商品を並べておくというのは売れるのだろうかと疑問に思う。

 原理的にみて、在庫と店舗投資のリスクのない「個人商店」を開くのと同じだから、品揃えやディスプレイなどに凝るという、お店やさんごっこをしていろいろ工夫することはできるだろう。
 しかし、問題は、どうやって、そのネット上の店に客が来るのか、ということである。

 なんの話題性もない、ただ商品が並べてあるだけの店に客は来ないだろう。

 たとえば、今お歳暮の季節だから、そうだなあ、何か海産物、「イセエビ」でも送ろうか、と考える。で、「イセエビ」「宅配」で検索するのだが、ヒットするところに、アフィリエイト系の店は少なくとも上位に出てきてはいない。

 ぼくが前にホームページを持っていた「楽天」にいって、いろんな人のホームページを見てみるといいと思うのだが、たくさんの人が自分のページでアフィリエイトをやっている。それで多くの人が「店」を開設しているということは、いくばくか売れているということなのだろうし、楽天以外にもこの松本の本に紹介されているページにもそのタイプで一日数千ヒットで、月十万円弱の売上を上げているというところはあるのだから、おそらく成り立つ人もいるのであろう。
 しかし、楽天広場の個人ページの場合、大半はただ商品を並べてあるだけで、ぼく的にはまったく買う気がしない。むろん、ネットでの購買行動が非常に鈍い人間だといううらみはあるのだが。

 楽天広場の内部で、買ったり売ったりして、お金が流通しているだけなのかなあ、などとも考えてみる(あくまで妄想)。もしそうだとしたら、サイト運営者総体はカモで商品を買うだけ、その巨大市場からアフィリエイト企業総体が、ごっそりと売上を得ていることになる。

 実は、ぼくもはじめてみようかしら、などと思っていたのだが、そのへんのところ、どうなんでしょう。
 だれか教えて。