あいかわももこ『コスメの魔法』
30点とかつけてるくせに、5冊も買いました。すみません。
デパートの化粧売り場の主人公・高樹が、毎回訪れてくる客の人生の悩みや課題にあわせて、化粧をアドバイス(おしつけ)して、人生も化粧もうまくいくという1話完結形式のマンガ。お化粧版水戸黄門(by荷宮和子)。
たしかに、ぼくは、この本を読んで、化粧とその技術というものが、その人間に内在する積極性を演出するものだという哲学をくり返し宣伝され、それはそれでなるほどと思った。
そして、世の中には、それを無視した化粧観をもっていることや、また、根拠のない願望でとりつくろうために自分を糊塗する材料に使おうとしている人も多く、その批判にもなっている。
だが、いかんせん、マンガとしてこなれていない。
そういう思想の宣伝道具としてマンガがあるのだ。
このマンガについて、「SIGHT」という「ロッキンオン」増刊号で、荷宮和子と村上知彦が対談している。そのなかで、村上が言っていることが当を得ていると思う。
「やっぱり話が一点展開。そうすると1本読むのとあと全部おんなじに見えちゃうという。あと、出てくる男がみんなつまらない」「だから、ドラマがないんですよね。やっぱりこの作品は『コスメの魔法』というタイトルにある通り、魔法をかけられて説得されるという、その部分だけがポイントなんだと思うのね。そうするとなんと言うのかな、もうマニュアルに見えてしまってね(笑)」
他方で、荷宮はもちあげている。
女性の保守的な化粧観を批判していて、たぶん、このマンガはある種のアクティブな女性には痛快なのだろうと思う。
しかし、話はそれるけど、この荷宮、ぜんぜんわかってないんだよなあ。
黒田硫黄(『茄子』)にたいしても、「出てくる若者がみんな、それこそ『リアル』(井上雄彦)で言った、頑張っている人を笑っている側の子で(笑)」。吉野朔美(『瞳子』)にも「女の子がみんなこんなバカで、やる気がなくて、いい加減だと思われたらかなわんなという(笑)」。
てめえ、と思う。
したがって、村上に「だから、やっぱり荷宮さんの場合、作者と作品がイコールでないと難しいんですよね」などと嘲笑されているではないか。
まあ、たぶん、この荷宮って人は、生活としてはオトナで、立派なんだろうと思う。
女性の最前線で苦労しながら、オトコの無理解や蔑視とたたかっているような人がイメージされる。それはそれですごく尊敬すべき人なんだが、そういう自分の苦労が、他の女性に対して「足をひっぱるやつら」という攻撃になっているのが、ぼくには悲しかった。
ああ、あいかわももこ評じゃなくて、荷宮和子評になってしまった。
採点30点/100
年配者でも楽しめる度★★☆☆☆
※参考/「SIGHT」2002冬季号
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