ぶどう大福に負けた

 テレビや雑誌での広告が直接購買に結びつくことは、実際には珍しい。

 注目をひいても、多くはせいぜいイメージアップにとどまる。
 ぼくはNOVAうさぎが死ぬほど好きだが、だからといってNOVAという企業の実態は別のものだと思うし、ましてや実際の語学研修で、ぼくが、かの企業を利用するかどうかはあやしい。

 鉄道広告、つまり電車内の広告はなおさらだという気がする。

 しかし、今回、あっさり購買にむすびついた希有な例があった。
 それは福岡市の地下鉄で見た「ぶどう大福」の広告である。
(私のみた広告はこのホームページデザインとは大きく異なるが、写真は似ている)


 くわしくはおぼえていないが、「ぶどう大福」と大書し、大福を二つに切って、なかにぶどうが入っている写真が大写しにしてある広告だったと思う。非常にシンプルだ。

 ぼくにとってこの広告が鮮烈だったのは、大福という「もちもち」感と、餡という穏健な甘さに、ぶどうの豊かな果実感が加わるというマッチングがすぐに連想されたからだ。「ぶどう」というひらがなも果実の豊潤さを連想させた。「ぜひ土産に買いたい」とすぐに思った。
 空港で発見したとき、一瞬躊躇した。これまで「塩豆大福」というのを土産として買っており、これは控えめな甘さが職場で好評だったので、それをやめて他の商品にすることは冒険だったからだ。といって、試食は無理そうだった。どうするか。
 その躊躇を払拭したのは、売り場にかかっていた「テレビで紹介」という小さな記事の宣伝だった。
 
 テレビでおいしいといったからその額面通りに受け取るということはない。しかし、「テレビで紹介されたのなら、少なくとも反吐が出るような味ではないだろう」と思ってしまったわけだ。それで最低ラインがクリアされているような気がして、ついに買った。すべての過程で、広告によって気持ちを促進され購買にいたったという希有な例である。

 味のほうは……まあ、それは実際に買ってみてお試ししてみることをおすすめする。

 「商品名の大書」というのは、何にも訴求力のない広告ではないかとかねがね思っていた。
 たとえば、電車で「××情報大学」などという文字だけがおどっていても、まるで注意をひかない。出すだけムダではないかと思う。
 しかし、こと食べ物に関しては、商品名自体が、そしてそれをリアルにあらわす写真自体が、食感を伝え、食欲に訴求するのだということがあることを知った。



2003年9月15日記
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