マルキストが非左翼の彼女にエンゲルスを軽く紹介するための10文献



元ネタ http://anond.hatelabo.jp/20080721222220
他にも http://b.hatena.ne.jp/t/軽く紹介するための10本

※上記、およびそれをテンプレにした一連のものを知らない方は、あまりマジにとらないでください。


まあ、どのくらいの数のマルキストがそういう彼女をゲットできるかは別にして、

「サヨではまったくないんだが、しかし自分の共産趣味を肯定的に黙認してくれて、その上で全く知らないエンゲルスの著作とはどんなもんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」

ような、サヨの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、エンゲルスのことを紹介するために見せるべき10文献を選んでみたいのだけれど。(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女をコミュニズムへとオルグするのではなく相互のコミュニケーションの入口として)

あくまで「入口」なので、読了に過大な負担を伴う初期の、マルクスと共同で書いているような哲学著作は避けたい。

あと、いくらマルキスト的に基礎といっても書簡モノは避けたい。エンゲルスフリークが「1890年9月21〜22日のヨーゼフ・ブロッホへの手紙」は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ、と思う。
そういう感じ。

彼女の設定は

  • 共産主義的知識はいわゆる解説書的なものを除けば、
    『共産党宣言』程度は高校時代に見栄で読んじゃった
  • サヨ度も低いが、けっこう教養主義的に古典を読む


という条件で。まずは俺的に。
出した順番は実質的には意味がない。



反デューリング論



まあ、いきなりここかよとも思うけれど、『資本論』1巻の成果を濃縮しきっていて、マルクスの全面的承認のもとで「科学的社会主義」の全体像を初めて話したという点では外せないんだよなあ。長さも2巻だし。
ただ、ここでサヨトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。
この森羅万象的な作品について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃すぎず、それでいて本質的情報を彼女に伝えられるかということは、サヨ側の「真のアジ能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。



空想から科学へ、フォイエルバッハ論



アレって典型的な「サヨが考える一般人に受け入れられそうな古典(そうサヨが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのもの

という意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには一番よさそうな素材なんじゃないのかな。
「ゴリゴリ左翼としてはこの二つは入門書としていいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。




家族・私有財産・国家の起源



ある種のフェミ的サヨが持ってる女性解放論と、

「おれって狭い政治だけじゃなくてこんなことまで論じちゃうんだぜ」的衒いを彼女に見せびらかすという意味ではいいなと思うのと、

それに加えていかにも恋愛に悩んでいる若いサヨクが
「まずこの学習会をやろうや」といって持ち出される第2章、
「真の一夫一婦制はプロレタリアにしかないんや」といってやっぱり勉強しろといわれる9章、

の二つの章をはじめとして、
それまで女性交際歴がなく女性と聴けばオナヌーの対象だとしか思っていなかった男に衝撃をあたえたんだよ、

というふうに彼女に身の上話をしたいというのが、紹介してみたい理由。




心霊界での自然研究



たぶんこれを読んだ彼女は「大槻義彦だよね」と言ってくれるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。

この系譜の作品がその後続いていないこと、
これが結構笑えること、

現代日本ならエンゲルスがテレビによばれて、細木数子と対決になってもおかしくはなさそうなのに、まあ19世紀ドイツの男だったのでそれはかなわなかったこと、

なんかを非オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。




軍隊



「けっこうエンゲルスって軍事オタクだったんだよね」という話になったときに、「これは米国の代表的軍人スコット将軍が書いているに違いない」と評判になったクリミア戦争の軍事時評を選んでもいいのだけれど、そこで百科事典「ニュー・アメリカン・サイクロペディア」に書いた「軍隊」の項を選んだのは、この作品でみせたエンゲルスのオタぶりがハンパないから。

断腸の思いで削りに削ってそれでも全集版で45ページ、っていう尺が、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、古代エジプトから近代欧州まで、実に3000年もの軍隊知識を叙述し、不要な叙述を「捨てる」ということへの諦めきれなさがいかにもオタ的だなあと思えてしまうから。
「軍隊」の長さを俺自身は冗長とは思う。もっと削れるだろ、とは思うけれど、一方でこれがマルクスだったらもっとダラダラと書いてしまうだろうとも思う。

他にも64項目もの辞典の項目をかきながらこれを作ってしまう、というあたり、どうしても「戦争反対とかいっているわりには兵器に萌えてしまうダメサヨ」の漏れとしては、たとえエンゲルスがそういうキャラでなかったとしても、親近感を禁じ得ない。作品自体の高評価と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。




イギリスにおける労働者階級の状態



今の若年層でエンゲルスのルポを見たことのある人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。
マルクス『資本論』の「労働日」の章よりも前の段階で、資本主義の罪悪を膨大な事実によって告発する技法とかはこの作品で頂点に達していたとも言えて、こういうクオリティの作品がジャーナリズムとしてこの時代に出ていたんだよ、というのは、別に俺自身がなんらそこに貢献してなくとも、なんとなく闘争好きとしては不思議に誇らしいし、いわゆる学者チックな思想家としてしかエンゲルスを知らない彼女には読ませてあげたいなと思う。




『資本論』綱要



『資本論』1巻のエッセンスをサヨとして教えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。

「けっきょく『経済学批判』のときみたいにどこにもとりあげられなくておしまいじゃヤヴァイ」

という危機感がマルクスとエンゲルスにはあって、
だからこそ『資本論』の「やらせ書評」をあちこちに投稿しまくり、1巻の中身をイギリスでわかりやすく紹介するという目的で書いたにもかかわらず雑誌掲載はボツになったけども(当たり前だ、こんなもの載せる雑誌編集者がどこにいる! エンゲルスって馬鹿なの? 死ぬの?)、1巻を読んだ人間が自分の理解をたしかめるのにはこの「綱要」はわかりやすいかもしんねえじゃん、と思う。

『資本論』のアンチョコみたいに読もうと思ったけど実際には難しくて、これなら『資本論』を読んだ方がきちんと理解できるな、アンチョコとしては使うべきじゃねーな、

という、そんな体験はかけらも口にせずに、単純に読んでもらえるかどうかを見てみたい。



ドイツ農民戦争



これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。
こういう歴史ものを現代に通じる教訓話みたいにして、それが非サヨに受け入れられるか、それとも、歴史的背景をサッパリ知らないので何が書いてあるのかわからんという不快感を誘発するか、というのを見てみたい。



住宅問題



9本まではあっさり決まったんだけど10本目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的に『住宅問題』を選んだ。

『反デューリング論』から始まって『住宅問題』で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、狭い階級闘争のテーマだけじゃなくて社会問題っていうのはこうやってマルクス主義は解決すんだよ、そんでもってそれを入り口にしてマルクス主義の社会改革ってもんを語っちゃうよ、ついでにいうとプルードンってアホだよっていう作品でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。

というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10本目はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。

「駄目だこのエンゲルス的俗流化は。俺がちゃんとしたマルクス主義文献のリストを作ってやる」というのは大歓迎。
こういう試みそのものに関する意見も聞けたら嬉しい。





2008.8.6記
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