呼ばんでよかばい! 福岡オリンピック



 2016年の五輪開催国内候補地の選考委員会が2006年8月30日開かれ、
福岡市が落選
しました。慶賀にたえません。署名に協力してくれたみなさん、本当にありがとうございます。

 福岡市が落ちたから万事けっこうけっこうかというと、そうはいきません。候補地は東京都に決まりました。石原都政が考え出した計画は、表向きは数千億、実際には7兆円近い費用がかかるものです。くわえて、国威発揚の偏狭なナショナリズムのための道具にされる危険があります。

 朝日新聞06年7月22日付(be版)は2756人のモニターからの調査結果を載せました。「2016年夏季五輪の日本の立候補地は東京と福岡とどちらがいい?」との問いに、東京23%、福岡23%、そして「立候補しなくていい」が45%を占めました。その理由のトップは「無駄な施設を増やす」(905人)、ついで「財政負担が大きい」(860人)でした。
 東京だろうが福岡だろうが、国民はそもそも日本での五輪開催など望んでいないのです。

 2016年の日本招致にJOCがしゃかりきになる理由として、〈オリンピック招致の狙いは世界第三位のメダル獲得〉という見方があります(谷口源太郎、「放送レポート」201号)。
 スポーツジャーナリストの谷口によれば、JOCには「ゴールドプラン」というメダルの獲得数を目標化したプランが計画があり、04年のアテネで「メダル獲得率3.5%」を突破、勢いにのったJOCは〈目標を一気に高めて「メダル獲得数世界第三位」とし、2020年達成を目指すステージを策定した〉〈もし、オリンピック大会を日本で開催できれば、思い切った選手強化ができ、目標達成も可能になる、ということだった〉(前掲書)。そして一発勝負では難しいので、とりあえず16年を強調しつつ、2回連続の立候補をめざすのだといいます。

 〈JOCは、オリンピック大会をメダル獲得競争の場としか考えていない〉(前掲)と谷口は言います。後押しする保守政治家たちは、それを国威発揚と結びつけようとします。〈今年2月のトリノ冬季オリンピックで金メダル一個という成績は、JOC理事たちに大きな衝撃を与えた。前首相の森喜朗JOC理事は、総括会議で「ろくな成績しか上げないのに『楽しみました』と言うような選手は選ぶべきではない」と怒ったらしい〉(前掲)。


 国威発揚と利権あさりの巨大開発の道具になる危険性の強い「東京オリンピック」構想。もうぼくは都民ではないので、都民の決めることではありますが、あのどうしようもない知事を替えて、中止をさせるしかないだろうと思います。




〈もくじ〉
●紙屋研究所は福岡オリンピック招致に反対します
●反対署名が継続審議になりました
●なぜ反対するのかという簡単な理由
●市の招致計画の詳細とその批判


 福岡市の山崎市長は2016年にオリンピックを福岡に招致することをうちだしました。
 結論をもうしあげると、紙屋研究所はこの招致に反対します
 理由は一つ。福岡市はたいへんな借金財政になっているうえに、市民のためにやるべきことが山積みで、とてもばく大なお金・税金をつかってオリンピックをやっているゆとりはないからです(「ごたく」が好きな人は、次節の「なぜ反対するのか」という理由をお読み下さい)。

 「2016年福岡へのオリンピック招致するな」という請願を憲法16条と請願法にもとづいて福岡市議会におこない、06年8月7日の最終締切までに

13万6576筆

が市議会に提出されました。ご協力いただいたみなさん、ありがとうございました。
 これは、市議会史上でも一番多い署名数だったということです(未確認)。


反対署名が継続審議になりました

 署名の審査は06年8月11日に市議会第一委員会おこなわれ、「継続審議」になりました。率直に申し上げて、これはすごいことだと思いました。まず、2005年に、やはりムダな公共事業である人工島事業の是非を問う住民投票条例の制定で8万をこえる直接請求がおこなわれましたが、このときは、すぐ不採択となり、葬り去られたからです。

 今回も市議会の力関係でいいますと、オリンピック招致決議に反対したのは日本共産党、ふくおかネットワーク、一人の無所属議員のみで、自民党・公明党・みらい福岡・民主・社民は賛成しており、圧倒的に招致反対派には不利だったからです。

 しかし、今回、このうちの民主・市民クラブと社民・市政クラブという二つの会派が「署名賛成(招致反対派)」に回るという大きな変化がありました。そのうえでも、まだ「招致賛成派」が圧倒的なわけですが、彼らはこの場で採決をおこない「不採択」にしてしまうことができませんでした。「継続審議」という結論を先延ばしにする方法をとりました。

 これらの背景には、市民の6〜7割が招致に反対しており、非常に風向きが悪い、ということが「招致賛成派」に強く感じられたということがあったことはまず間違いないと思います。「採択」がぼくらの願いだったわけですが、相手側が不採択にできなかったということは、やはり「世論の勝利」といっていいと思います。

 8月30日に国内候補地が決定になりますが、市長選もからんで「模様眺め」をした、という事情も手伝ったと思います。
 何にせよ、みなさんありがとうございました。8月30日の結果をお待ち下さい。




ごたくが好きな人のための「オリンピック招致反対の理由」


市の財政負担は莫大なものに


 福岡市は、ぜんぶの費用は5000億円、そのうち市の負担は1000億円だと発表しました。市長は「お金のかからない立派な計画になった」と胸をはっているようですが、1000億円が「安い」という感覚にびっくりします。
 しかも、それで終わる保障はどこにもありません。
 この計画のキモは、再開発をしてオリンピックの施設や場所をつくり、終わった後を住宅やビルにして「売る」というものなんですが、それが民間相手に数百億円で売る、ということが前提になっているのです。売れなければどうなるのか? それは税金投入ということしかないじゃありませんか。
 すでに福岡市は人工島事業といって、同じような発想で埋め立て地をつくったのですが、やはり計画どおりに全然売れず、泥沼のようにズブズブと税金投入をしているのです。



市の借金は2兆7000億円


 そうやってこれまでも無謀な大型開発に税金をつぎこみ、いまや福岡市の借金は2.7兆円。実質公債費比率といって、隠れ借金までふくめ、市の財政のうちどれだけ返済にあてているかという数字がありますが、政令市で最悪になっています。
 いわば「日本一の借金財政」になっているのに、オリンピックなど開く余裕があるのでしょうか。



えええ福岡市ってそうなの


 県外の人はびっくりしますが、福岡市は子どもの医療費の無料制度はあったんですが、なんと初診は有料でした。また、それをのぞいても、まだ3歳未満しか通院は無料ではないのです。
 さらに、学区に児童館がないのにもびっくりします。
 そして、他の自治体と同じようにやはり、特養ホームや保育園には長い入所待ちがあります。
 オリンピックの招致費用だけでも20億円。これだけでも特養ホームや保育園がいくつも建てられます。



経済効果は期待できない


 長野オリンピックでは施設や道路がつくられましたが、多くは東京のゼネコンが請け負い、地元中小企業の仕事は少なく、経済効果は一時的だったといいます。その後の観光客も増えず、競技施設の維持費で毎年9億円の赤字。残ったのは多額の借金だけです。



なぜ市民の意思を問わないのか


 これほど重要な問題なのに、山崎市長はオリンピックの賛否は問わないといいます。市民に5000人規模のアンケートをとるそうですが、それは「招致の仕方」であって、賛否はやはり問わないといいます。しかし民間の世論調査では回答した市民の67%が招致「反対」と回答し、「賛成」の30%を大きく引き離しています(TNC調査)。


 署名の〆切は5月までですが、国内候補地決定は2006年8月です。そこでひとつの区切りがつくと思います。ぜひご協力をおねがいします。



さらにくわしく知りたい人のために


福岡オリンピック計画の全体像と市の負担分


 福岡市は2006年4月14日にオリンピック計画案を発表しました。そこには、事業の試算とともに、市負担分、つまり市民の税金投入額が明らかにされています。(数字は億円、備考のカッコ内も)

項目 試算総額 国・民間 市負担分 備考
競技施設整備費 630 337 293 オリンピックスタジアム(355)・メインアリーナ(100)・新設プール(74)・雁の巣体育館(36)
大会組織委員会がもつ競技施設整備費 506 506 0 各競技施設。大会組織委がスポンサー収入などでも費用をもってくれる。新設ではなくほとんど特設・仮設なので、大会後は解体・解装したりする。
交通インフラ整備費 427 173 254 海の中道大橋の4車線化、須崎〜中央埠頭をつなぐ艦船道路、渡辺通りの延伸、南北道路、都市高速道路ランプ機能の強化
大会運営関連施設整備費 1067 1067 0 住宅など(選手村)、オフィス・商業施設(国際放送センターやプレスセンター)。大会が終わった後、ビルやオフィスとして民間に売ってお金にかえるので市の負担はゼロのはずだと試算。
その他須崎埠頭地区等関連事業費 2740 2317 423 駐車場、須崎埠頭基部埋立など、港湾機能再編、その他の商業施設など。
合計 4864 970

 なお、これとは別に「招致費用」つまり「よびこみ」のための費用が40億円かかるとされ、20億円が市の負担になっています。

 競技施設数は全部で37。うち、新設が7、既存施設の活用が22、特設が8となります。
 新設が意外と少なく、既設や特設(仮設)が多いことがわかりますね。
 どこにつくるかといいいますと、大きくいって3つの地区。(1)メインとなる須崎・中央埠頭、(2)海の中道地区、(3)百道・小戸地区です。この3つの地区に施設のカタマリをそれぞれおくのです。
 (2)と(3)には既存のスポーツ施設がたくさんあります。
 ところが、(1)にいってみるとわかりますが、いまは穀物倉庫などしかありません。まるっきり「港」です。ここ(主に須崎埠頭)を再開発するというのです。その広さは実に90haです。

 どうやって須崎埠頭の再開発をやるか。
 ここは世にもめずらしい「第二種市街地再開発」という方式でやります。簡単にいいますと、いっぺん全部を市が買収してざーっとサラ地にしてしまうのです。いや、正確には「市」ではなく、市も出資する「再開発会社」という民間企業が買い取るのです。穀物倉庫を持っていた会社はすべて須崎埠頭から「追い出され」ます。その会社がどこにいくのか、その移転先で穀物輸送に必要な施設がつくられるのか、などはまだ決まっていません。(ちなみに「第一種」というのは、もともといた地主さんが新しく再開発でできるビルに、もとの土地などと同じ価値分のビル床をもらって入るという「権利変換」方式で、かなり時間がかかるものですが、第二種のほうの買収方式は「早く」やるための手段としてあみ出されました。)

 この須崎埠頭再開発などのことについては、後でくわしくのべましょう。



2462億円を民間が買うという計画


 私たちのイメージでは、「競技施設をたくさんつくって、そのための費用がべらぼうにかかって、そのあとの維持費も大変だろうなあ…」というふうになりやすいのですが、意外にも市の計画では、新設は7つに抑えられています。

 仮・特設なので、恒久的な施設にならないのです。世界水泳選手権のとき、コストを抑えるやり方として福岡市が採用した方式で世界に広がるモデルとなりました。
 整備のための投資額は一番上の分(競技施設整備費)だけになり、半分は国や民間が持ってくれるという試算です。「もっといろんな施設が要るのでは?」と思うかもしれませんが、既存の施設を使うのと、仮設や特設するぶんは、オリンピック側(大会組織委)がスポンサー収入などを使って払ってくれます。ゆえに「ゼロ」だといいます。
 また、こうした仮設や既存施設が多いので、市の試算では大会後の維持費やランニングコストは、年間プラス3億円「ですむ」ということらしいです。

 信じられないという人もいるでしょうが、まあまあ。
 批判や不安が起きているのは、そこではありません。

 この計画は、(1)大会組織委員会のお金(スポンサー収入や放映権などが原資)(2)国からの補助金(3)市民の税金(4)民間資金の4つから成り立っています。
 この(4)が最大の問題なのです。
 これは(1)のスポンサーなどの商業収入とはまったく性格を異にするお金で、上記の表でいいますと「大会運営関連施設整備費」「その他須崎埠頭地区等関連事業費」にかかわるところです。ここに選手村やビルをつくるのですが、オリンピックが終わった後、そこを民間に売って採算をあわせようというのです。これがまったくの皮算用ではないかと危ぐする声が高いのです。

〈計画では、地権者らで設立する再開発会社が、市と国からの補助金のほか、金融機関からも借り入れて資金を調達。土地を買収し、臨港地区の指定を解除したうえで、スタジアムや選手村を建設する。再開発会社は、地元企業などでつくる特別目的会社(SPC)と市に対し、土地・建物を売却する〉(朝日新聞06年4月15日付)

〈ただ、再開発会社とは別に設立する「特定目的会社」が五輪後に売却しなければならない選手村の建物などの床面積は延べ約67万平方メートル。福岡・天神の百貨店・岩田屋(約4万8000平方メートル)の14倍近い広さだけに、買い手が集まるのかという懸念もある〉(毎日新聞06年4月15日付)

〈整備事業終了後、この再開発会社は清算。新たに民間が出資・融資する特定目的会社が、選手村として使う三千五百戸の住宅のほか、メディア村や特設パビリオンなどに使う施設などを、計二千四百六十二億円で買い取り、大会終了後は、オフィスビル(延べ床面積十二万千平方メートル)や商業施設(同二十七万九千平方メートル)などとして分譲・賃貸する「後利用」を視野に入れた計画だ。……中略……ただ、民間企業が懸念しているのは、再開発などにかかる金額や規模、そして限られた時間だ。実際、民間が特定目的会社に出資や融資する金額は、同じ再開発でもキャナルシティ博多(七百五十五億円)の約三・三倍に上るし、現在の福岡市ないのマンション販売戸数が年間約四千四百戸、オフィス空室率が約9%であることを考えると、果たしてこうした大規模開発をしても「住宅は売れるのか」「オフィスに空室はでないのか」「現在でもオーバーストアの福岡市に新たな大規模商業施設ができて共存できるのか」「限られた時間では拙速の開発しかできないのではないか」…と疑問は尽きない〉(西日本新聞06年5月24日付)

〈「民間頼み」くすぶる批判 地元財界「企業も限度」「行政の責任逃れ」 2016年の夏季五輪招致を目指す福岡市の施設整備計画に、地元主要企業から「民間に頼りすぎ」といった批判がくすぶりだした。計画では市負担額を970億円に抑えるかわりに、巨額の民間資金を当て込んでいる。資金の出し手として期待される地元企業の理解を得られなければ、東京都と一騎打ちとなった国内候補都市争いに影響を与えかねない〉(朝日新聞06年5月2日付)

 ようするに、2462億円もビルやオフィスが売れるんかいな、という不安なのです。福岡市は「売れます」とか「採算が見込めます」といって、破綻した事業(人工島、博多リバレイン)が多く、結局新たな税金投入をしています。

項目 費用(億円)
住宅等(選手村) 684
オフィス(IBC、MPC) 383
商業施設(大会関連施設) 882
大会後建設用地など 513
合計 2462
〈選手村に使う3500戸の住宅やオフィスビル、商業施設など計2462億円分は民間に売却しなければならない。だが、景気の悪化で民間需要が落ち込み、売却先が見つからない場合、「再開発計画の頓挫や、五輪後に新たな市負担が発生する可能性もゼロではない」(市幹部)という〉(読売新聞06年4月15日付)

 上記の表の中の「大会運営関連施設整備費」「その他須崎埠頭地区等関連事業費」に、この民間へ売ることが想定されている金2462億円が隠れているのですが、その内訳を右上に書いておきましょう。



地元財界がもくろむ五輪を口実にした再開発計画


 先ほどのべた須崎埠頭の再開発。ここにオリンピックのメイン会場がやってくるというのが、山崎市長の計画です。いわば、オリンピックと須崎埠頭再開発を一体にやってしまおうというのです。

 しかし須崎埠頭の再開発は、もともと、オリンピックがあろうがなかろうが、現市長と地元財界がすすめたがっていた開発でした。

〈市長は「須崎ふ頭は潜在価値の非常に高い土地。五輪がなくても再開発する」と言い切った。再開発後は地価が天神周辺並みに上昇し固定資産税が年十五億円程度増す。人の集まる人気エリアになり、賃貸・分譲住宅は好調に推移する――。市が描くシナリオが実現可能なのかどうか。市は地元経済界などによる「事業化検討委員会」を立ち上げ精査することを約束した〉(日本経済新聞06年4月15日付)

 さらに、須崎埠頭のすぐ南にある福岡市の中心地・天神の大規模な再開発も目されています。これはもちろん、オリンピックの費用負担には入っていません。
 〈市長が再選された02年の選挙前、九州電力など地元有力企業でつくる「七社会」とのパイプ役を榎本氏が務めたことはよく知られる〉(毎日新聞06年6月11日付)といわれる、市長の後援者で、かつ地元財界にもつながりをもつ福岡地所(デベロッパー)会長の榎本一彦は、次のように語っています。

「オリンピックは街づくりの一つの手段」「五輪を景気に博多湾、天神地区の刷新を提案」(ふくおか経済EX2006)
「天神のビルは老朽化している。五輪が来れば天神全体の姿が変わる」「市の(都市計画)マスタープランは経済界からも意見を出し、『アフター五輪』のことも考えないといけない」「福岡をアジアで100年後も生き残る街にしたい」(毎日新聞06年6月11日付)

 地元財界の思惑もからんで、市長を後援するデベロッパーが、土地の値上がりや流動化をみこんで、市長をたきつけている――こういう構図に見えるのですが、榎本はこのインタビューで「そうじゃない」と否定したといいます。



福岡市の財政状況――全国最悪


福岡市 22.8%
神戸市 22.0
広島市 20.8
横浜市 19.2
千葉市 19.0
名古屋市 18.9
仙台市 16.3
川崎市 15.5
大阪市 15.4
京都市 15.3
札幌市 13.0
静岡市 12.6
さいたま市 11.2
北九州市 11.2
 日経新聞06年7月5日付は、「自治体の財政悪化指標 最悪は福岡市・長野県」という記事をだしました。総務省が自治体の財政健全度を表す指標として新たにもちいている「実質公債費比率」の試算値を並べたのです。2002から2004年度までのものです(05年11月時点)。

 「実質公債費比率」は早い話、(借金の元利返済額)/(税収)であらわされるもので、税収のなかでどれくらい借金返済にお金をあてないといけないのか、という数字なわけです。これまでも「公債費比率」というのはありましたが、公営企業などの「隠れ借金」をふくめたのが新しいのです。

 右が政令市のなかでの順位ですが、となりの北九州市の倍以上あることがわかります。「地下鉄や下水道事業などの負債が膨らんだためとみられる」(同記事)ということらしいですね。

 もちろん、総務省のこの手の指標がしばしば過剰なまでに財政危機をあおり、自治体統制の道具になってきたことは見ておかねばならないと思います。しかし、それにしても、福岡市は、いまの時点でオリンピックになどうつつをぬかしている場合ではないということはいえるのではないかと思うのです。



世論調査ではいつも6〜7割が反対――賛成署名にもふれて


 先に、TNCの06年3月時点での調査結果を書きましたが、2016年の福岡へのオリンピック招致について「反対」が67%、賛成が30%という結果になっています。
 その前の民間世論調査会社(ジー・エフ社)の調査結果(電話帳から無作為抽出した市内829世帯)によれば、66%の市民がやはり「反対」と答えています(賛成は34%)。

 そして今年(06年)6月に、こんどはKBCが世論調査を発表しました。同月19日に放映されたものです。これは調査対象は福岡市内の20歳以上の男女500人に電話調査(6月11〜12日に電話帳による無作為抽出)。

招致への賛否 賛成の理由 反対の理由
招致に賛成 14.8 世界的知名度があがる 3.2 財政が悪化する 49.2
どちらかといえば賛成 17.2 街の発展が見込まれる 6.6 自然環境を破壊 6.0
どちらかといえば反対 21.0 経済効果に期待する 11.8 スポーツに関心なし 0.8
反対 45.0 スポーツ祭典を身近で見たい 9.2 治安悪化が懸念される 5.0
福岡市の優先課題
市民に十分説明してるか 五輪招致 9.6 地震対策 28.0
思わない 89.0 福祉政策の充実 55.4 環境保護 38.2
思う 9.6 経済発展 35.4 教育・文化の向上 43.8
わからない 1.4 財政の健全化 57.0

 「賛成」「どちからといえば賛成」はあわせて32.0%、「反対」「どちらかといえば反対」は66.0%と、世論の基調はまったくかわっていません。あいかわらず6〜7割が反対なのです。

 ところで、賛成派はすでに27万の賛成署名を集めたという報道があります(ここ)。国内候補地が決まる8月30日までに50万筆集めるだろうという目標だそうです。先の世論調査結果との比較でみると、不思議に思ってしまう人もいるでしょう。

 ぼくなりにちょっとだけ推察しますと、これは朝日新聞などで報道されたことですが、賛成派は最初「福岡オリンピック」だった呼称を「福岡・九州オリンピック」にした経緯があります。実際は計画でもほとんど福岡以外では開催されないのですが、九州全体のサポートが期待できることがその理由でした。

 そして、この賛成署名は「九州全域」から集められていることです。

 先ほどのべた市長の後援者である福岡のデベロッパー(榎本一彦)が会長となって「2010年の会」をつくり、会員の「知人や友人ら約二千人を対象に実施」(西日本新聞05年9月14日付)した調査では、「福岡都市圏」(福岡市内ではないし、福岡県内ですらありません)では「大賛成」「賛成」があわせて約7割を占めたといいます(西日本新聞同日付)。
 毎日新聞05年12月5日付によれば、毎日世論フォーラム」の調査では、「九州・山口8県の男女1000人を対象に」調査をおこない、56%が招致に賛成と答えました(反対は15%)。たとえば鹿児島県では73%が「賛成」と答えたといいます。面白いのは〈「賛成」が最も少なかったのは福岡[県]で46%だった。「反対」は福岡[県]の32%が最多〉(毎日新聞同日付)という結果です。
 福岡市内に限定すればさらに面白いことになったに違いありません。

 私も、福岡市を一歩出ると、左翼でさえ「オリンピックならいいのでは?」という人がいて、説明をするビラを渡さねばなりませんでした。

 つまり、福岡市とそれ以外の地域で激しい「温度差」があるのです。賛成署名は、まさにこの「温度差」を利用した「風」だといえるのではないでしょうか。

 あと、細かいことをいえば、大企業ぐるみで集められている署名で、社員や家族、系列の下請などを動員して集めることは必ずしも難しいことではありません。別に青年会議所が送り出したにーちゃんが自転車こいで九州縦断して(ここ)集めたわけではないのです(笑) おまけに市役所職員などを通じて行政あげてフルに集められている(市議会では「そうしたことは、やってはならないし、やっていない」、と市側は答弁したのですが、そのあと、職員が署名を推進していることを謝罪する事件もおき、朝日新聞などで報道されています)わけで、ある意味でそれだけ集まるのは「不思議」なことではないのです。



今後の主な日程


【06年】
8月30日 JOC役員と各競技団体代表55人の選定委員会が無記名投票で国内候補地決定

【07年】
7月 JOCが国際オリンピック委員会(IOC)に立候補申請

【09年】
IOC総会で2016年の開催都市が選定




2006.4.22記(適宜補正)
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