モイスチュアミルクをつかうフセイン


 フセイン拘束のニュースを見ていたら、拘束された農家の映像が出てきた。
 そこには、アメリカ製のチョコレートとともに、ちらっと、アメリカでポピュラーなシャンプーである「DOVE(ダヴ)」が映っていた。

 ダヴをつかうフセイン
 農家に潜伏していた元独裁者はモイスチュアミルクを使っていた。
 ヤシの木の下で横になりながら、ヒゲを気にしていたのか。

 ダヴの、少し前のテレビCMをおぼえているが、体験者がカメラからの目線をはずした「自然な」体験談を語るというパターンのものだった。
 フセインにダヴの使い心地を聞いてみたらどうか。

「ずっと、ヒゲがまとまりなかったんですよー。
 どのシャンプー使っても、次の日にはボワーってなっちゃって……。
 ダヴにかえたら、もう『いままでのは何だったんだろう』って感じでー。
 (N:ダヴ。うるおい成分、モイスチュアミルク配合)
 逃亡生活でも、もう手放せませんよね。」

 第二次世界大戦中に負傷した兵士の傷口を刺激を与えずに洗えるものがほしい、というアメリカ政府の要請によりモイスチュアソープが開発された。その後、1957年にアメリカで平和の象徴「ダヴ(ハト)」として一般に発売された。それがこの商品の由来である。(参照サイトはこちら

 いわば、米軍の戦争のなかで生み出された商品であり、しかもその名前に「平和」を冠しているところが、実に皮肉である。
 ニュースでも、「アメリカ製のチョコレートが…」というテロップが出ていた。アメリカに抗した独裁者がアメリカ製品のもとで逃亡生活を送っていたということを歴史の皮肉ととらえたに違いない。

 しかし、マルクスが生産の社会化を予言し、その究極の形態がいまのアメリカン・スタンダードによるグローバリゼーションであるなら、アメリカ資本主義の手が及んでいない商品をみつける方が至難であろう。直接にはアメリカ製品でなくても、あるいは原材料にもアメリカ製品が使われていなくても、その製品をつくった機械、それを運んだ輸送手段、それを制御したコンピュータに、アメリカ製品がかかわっていないはずはない。
 不買運動が、半分は象徴的運動として非常に大事で、半分は論理的な一貫性を欠くのと同様に、フセインの逃亡生活の身の回り品が、アメリカ製であることにわざわざ歴史の皮肉を感じる必要はないのかもしれない。チョコレートから兵器まで、アメリカ資本主義の手にかからぬものはない。

 いや、それだけではない。

 バース党自身が、そもそもアメリカのCIAによって養成され、イラン・イラク戦争では、アメリカが反イランの力関係をもとめてフセインを支援していたのは有名な話だ。

 けっきょく、アメリカ製品に囲まれて逃亡生活を送っていたフセイン自身が、アメリカがつくりだしていた最大の怪物なのである。


 最近、20年前のアメリカによるフセイン支援の実態が、アメリカの公文書公開で明らかになった。ラムズフェルドはフセインと実際に握手さえしていた。くわしくはこちら

2003.12.18記
2003.12.25付記
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