人力検索という「広告表現」(1)

 人力検索というのがある。
 だれかが質問を出すと、みんなでそれにたいする「回答」をしめすというものである。「教えて!goo」がいちばん有名で、「Yahoo!知恵袋」「人力検索はてな」「For-side PLUS」「OKweb」「答えてねっと」などがある。

 いかにもネット知、クイズ知といった感じのシステムだと思うかもしれないが、ユニークなのは、質問者がそのなかで一つまたは複数に「よい回答」という称号をあたえる、というやり方であろう。だから、必ずしもそれは「正解」を選ぶとは限らない。質問者の気持ちに一番ぴったりくるものを選ぶのだ。だから、みていて、まったくの間違いに「よい回答」という称号を与えてしまっている場合もある。その分野のオタクからすれば歯がゆい限りの状況もあるのだ。
 回答には字数制限、もしくはある程度の常識的な字数というのが決まっている。
 その狭い世界のなかで、相手の意図を正確に見抜き、もっともよい回答を考案する、ということは、一種の知的興奮をともなう。
 掲示板のように、言説が垂れ流されるのではなく、その瞬間に大げさなようだが「全身全霊」をかけた回答が行われ、それが相互に競うものだから、掲示板的知の嫌いなぼくも、ついついハマってしまった。

 質問者のニーズを正確に読み取り、それに訴求する表現を、限られた紙幅のなかでおこなうという意味で、すぐれて広告的である。

 「いばらき、ですか、いばらぎ、ですか」「インスタントコーヒーをおいしく飲む方法を教えて下さい」などまさに知識を問うものが本筋なのだが、「体罰はいいと思いますか」「むかつく上司がいますがどうすればいいでしょうか」などの「アンケート」に転化することも多い。

 最近感心したのは、次のやりとりである。これは「Yahoo!知恵袋」でのやりとりだ。

Q.小さい時に付けられたあだ名はなんでしたか?そのあだ名はあなたにとって良いものでしたか? 最悪でしたか? どんなあだ名だったか教えて下さい。

 これにみんなが答える。

「はにわ、、、、、、、、、、、、、、、
 自分でもちょっと似てるような気がしてきてた。」

「カリメロ。。。。恥ずかしいに決まってます。
 ショートカットだったから。
 でも卵の殻はかぶっていません一回も。 」

「ひらめ・・・。顔が似てたから・・・。
 あと、名字がそれに近いから・・・。
 あんまりでした・・・。 」

などの回答がつづくのだが、「ベストアンサー」に選ばれたものは秀逸だった。


『馬』です。
好きだった男の子につけられたあだ名で悲しかったです。
私が廊下を歩いていると、
んっ?ひづめの音が聞こえるぞ?などとからかわれました。
仲の良い友達も面長だったので、『馬2世』と呼ばれ、一緒に歩いていると、やっぱ、馬は馬が一番好きなんだよな、といわれました。
その後私がカーキ色のジャケットを着ていったが故に、
『馬自衛隊』と呼ばれるようになりました。
以来小学校卒業までこのあだ名。
女の子には酷なあだ名ですよね。



 もう、これは一編の短編小説だとさえ思った。
  正直笑った。そして、当事者にとっては哀しい思い出にちがいないのだが、回答者の自嘲に満ちた客観精神が、すぐれたペーソスを生み出しているのである。
 とくにネーミングの残酷さがあまりにリアルで、それが好きな男の子からのものだというところが、いっそう哀しみを際立たせる。「ん?」ではなく、「んっ?」という吃音もリアルすぎる。

 奥が深い世界なのである。




2004.9.11記
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