革命を推進する「担当部長」

 Yahoo!電話帳を使い、「革命」で検索すると、

●綾波書店革命軍各務原店
●居酒屋革命海せん山せん
●カレー革命
●酒革命サミット
●蕎麦の美味しさ革命推進協議会
●理容室ヘアー革命
●有限会社フロンティア・サプライヤー 流通革命

がヒットする。これらは、どれも「革命」というコトバを戯画化していることを承知のうえで使っている。
 ところが、唯一、奇妙さを覚えるのは、「
東京都 生活文化局 都民協働部 心の東京革命推進担当部長 」だ。これだけは「マジ」なのである。「マジ」なのに、その「革命」を「推進」する「担当部長」がいる、というわけである。
 「革命」は思想や理念と結びついている。つまり、「究極」的なものと親和性が高いコトバである。
 ところが、都庁という、いわば地方官僚組織の末端部の名前が、このコトバに結びつき、さらに「担当部長」とくれば、
急激に形而下の話である。「県立地球防衛軍」とか「お母さんは落ち武者」とかいうアンバランスに似ている。
 革命は、革命評議会でもなく、革命党でもなく、「担当部長」が推進しているのだ。

 「ああ、内田君。どうかね、今月の革命。どれくらいいったんだね」
 「あ。革命の件ですよね。や、けっこうリキいれたつもりなんですが、目標比30%ってとこで」
 「おいおい、全然すすんどらんね。販促がダメなんじゃないのか」
 「うーん、開発部のほうでもっとがんばってほしいんすよ。いまの革命のパッケージだと…」
 「すすまんといいたいのかね」
 「はあ」
 「内田君、それはハキちがえとるよ。革命のターゲットが狭いんだ。開発のせいにしちゃいかん」
 「そうすかね」

 このような「革命」が想起される。
 いずれにせよ、「革命推進担当部長」と名刺にすりこんだ人間が都庁にいることを考えると、
頭がくらくらする。
 石原知事は「宣伝」上手ではあるが、それはかつての「左」や「革新」の手法を盗んだり、その対抗心やコンプレックスを投影したものである。石原氏が数多くの「危機」を喧伝し、その危機を突破する「東京革命」を提唱するのは、そのまま左翼のスタイルであり、もっとえいば自分が敗れた革新・美濃部都政の模倣である。
 「基地の返還」は立川基地返還をかちとった美濃部都政の政策のそのものだし(ただし石原氏はいまやこのスローガンを引っ込めている)、公害規制をうちだした美濃部都政の影のように、ペットボトルをふりまわして「環境の石原」を宣伝している。また、美濃部氏の「大企業への超過課税」戦略は、石原氏の「銀行課税」となっている。逆に、美濃部都政が充実した福祉を、親の仇のように石原氏は切り捨て、閉鎖した競輪やギャンブルを復活させようと石原知事は躍起である。美濃部都政が国に対して「財政戦争」をしかけたことは有名だが、石原都政も「国との対決」が十八番である。

 この間電車にのって吊り広告をみていたら、亀井静香の本が紹介されていて「この秋、革命が…」とあった。小沢も少し前まで「日本一新」と同じように「革命」というコトバを使っていた。いまや、「革命」を日常の宣伝のコトバとして使わないのは、主要な政治勢力の中では日本共産党だけかもしれない。