「赤旗」の「おはようニュース問答」にこらえ切れない笑い



 通勤の電車で「しんぶん赤旗」を読んでいるが、国際面の定位置に載っている、6〜700字程度の対話形式のニュース解説コーナー「おはようニュース問答」は、たくまざる可笑しみがあって、いつも愛読している。

 「おはようニュース問答」のそもそもの目論見は、“そのときどき話題になっているニュースを、庶民の対話形式で、「わかりやすく」、そして要領よく伝える”というものであったのだろう。いや、じっさい、追っかけるのを忘れていたニュースなどを要領よく知る上では大変役立っているのは事実だ。

 この欄の悲喜劇は、「庶民の対話形式」にすることによって、カタい論説ではなく、まるで話し言葉のようなくだけた調子でニュースを解説する、というスタイルをめざそうとしていることなのだ。
 そのようなスタイルをめざしながら、庶民の対話というにはあまりに不自然な会話が朝から交わされているので、いつ読んでも笑いをこらえるのに必死だ。

 先日(05年4月29日付)の「おはようニュース問答」は、ついに、通勤電車の中で吹いてしまった。咳き込んだようにして誤魔化したが、苦しかった。


 まず、右の絵をみてほしい。(右上図)
 これが「おはようニュース問答」の挿絵、今回の主人公である「ふゆみ」(左側)と「のぼる」(右側)である(同紙同日付より)。

 「萌え」が2兆円市場を占めようというこの時代に、「萌え」からは最も遠い絵かもしれない。しかし、このおざなりな風俗が、一部コアな読者の心をわしづかみだ。


 加えて、のぼるのこの「手」である(左図)

 その昔、江戸期日本には東洲斎写楽という浮世絵師がいたが、その伝統を思わしめる(右下図)



 そして、問題は内容だ。
 その香ばしさは一流である。

 日ごとに登場人物が違うのだが、それなりに設定がある。
 きょうは、「ふゆみ」と「のぼる」で、彼らは、現代日本の大学生である。
 まあ、たしかにこういうとんでもない服装のやつはいるよ。東大とか京大とかに。

 まず、ふゆみの唐突な導入。

ふゆみ 輸入豚肉で脱税事件が相次いでいるみたいね」

 2005年の日本の平均的大学生の会話として「輸入豚肉の脱税」というのは、なかなかキツいのではないかと思うのだが、のぼるも負けてはいない。

のぼる そうなんだ。日本共産党の高橋千鶴子衆院議員の調べでは、この数年間で税関が七社も地検に告発している」

 日常の会話にしては、「日本共産党の高橋千鶴子衆院議員の調べでは」と典拠までしめすという律義さに驚きをかくせない。しかも、この「告発している」というふうに、記事っぽい文末に激しい違和感を覚えるのは、ぼくだけではないはず。

 のぼるは、終始この記事調が抜けない。

「さらに昨年十一月には東京税関が食品加工大手の伊藤ハムの子会社を脱税容疑で家宅捜索している」
「豚肉って国内では生産者と消費者のことを考え、価格を安定的なものにする仕組みになっている」

 おまえなー、日常会話で「食品加工大手の伊藤ハム」なんていうかよ。しかも、普通はどう考えても「伊藤ハム」で終わるところを、厳密に「子会社」と言っている。
 まるで、そのように正確に記述しておかないと、対話相手であるふゆみに告訴されるかのようである。


 違和感がマックスに達するのは、日常会話とは思われない数字の厳密さである。
 どちらも、解説者的立ち位置にいる「のぼる」の言。

のぼる 一定価格よりも安い輸入豚肉には、基準輸入価格が決められていて、その価格と同額になるよう関税をかける。また、一定価格より高い輸入豚肉には、4.3%という定率の関税をかける制度だ」

のぼる 昨年五月に逮捕された『日本ハム』の子会社の部長は、一キロ当たり四百十〜四百三十円の輸入豚肉を、関税がかからないように当時の基準輸入価格に合わせて五百二十五円と申告して、関税を免れていた」

 「4.3%」はまだ許せるにしても、「一キロ当たり四百十〜四百三十円」「五百二十五円と申告」というにあたっては、人間ニュース解説マシーンとしか思われないほどの不自然な精確さである。

 オチは、のぼるが「悪質業者は捜査当局が徹底追及してほしいね」といちおう「ね」という会話口調で終わるのだが、「捜査当局が」などと主体を明確化させるところに、非常にジューシーなものを感じてしまう。

 この欄の趣旨は、ニュースを「自然な会話」のなかで体得する、というもののはずで、ぼくなりに自然な文体に直してみれば、たとえば次のようになるだろう(黄色が原文、水色がぼくが直したもの。は2ch風)。そのために厳密さや数字は犠牲にせざるを得ないけども、別にそれでいいのだ。

輸入豚肉で脱税事件が相次いでいるみたいね。 新聞でみたけど、輸入豚肉で脱税事件が相次いでるみたいね。 輸入豚肉脱税問題をマターリと語ろう
そうなんだ。日本共産党の高橋千鶴子衆院議員の調べでは、この数年間で税関が七社も地検に告発している。 うん。もう7社くらいアゲられてるらしいよ。 2げと
多いわね。 多いわね。 7社くらいageられてるらしい
さらに昨年十一月には東京税関が食品加工大手の伊藤ハムの子会社を脱税容疑で家宅捜索している。 去年なんか、伊藤ハム系の会社がヤラれてたよ。 去年胃投公
タイーホ
どんな手口でやられているの? どういう手口なの? 手口きぼんぬ
冷凍豚肉を輸入するさい、仕入書に実際の価格より高い価格を書き込んで申告するんだ。そうすると、関税があまりかからないという、差額関税制度を悪用したやり方なんだ。 えーっと、なんか輸入するときに実際より高い値段で申告するんだって。そうすると関税があんまりかからないっていう制度があって、それを悪用したみたい。 輸入するとき実際より高い値で申告。すると関税がかからない。それを悪用。
その差額関税制度ってなに? それどういう制度? なんでそんな制度があんの?
豚肉って国内では生産者と消費者のことを考え、価格を安定的なものにする仕組みになっている。 や、なんかニュースで言ってたのは、安い豚肉が入ってきて値崩れしないように、関税かけるってことらしい。 要は安いブタが海外から来ると、日本のブタニクが大変なんで、関税かけると思われ
高すぎたり、安すぎたりしないようにでしょ。 国内業者必死だなw
それで一九七一年に豚肉が輸入自由化されるさい、輸入豚肉で国内産豚肉が値崩れするのを防ぐために差額関税制度が導入されたんだ。 糞スレ終了
〜完〜
そうなんだ。 とりあえず
1は氏ね
一定価格よりも安い輸入豚肉には、基準輸入価格が決められていて、その価格と同額になるよう関税をかける。また、一定価格より高い輸入豚肉には、4.3%という定率の関税をかける制度だ。 ↑胃党ハム関係者
キタ━━(゜∀゜)━━ッ

安い豚肉を高く買ったと、ウソの申告をすれば、その分関税を免れ、大きな利益を得られるというわけね。 ふーん。じゃ、安い豚肉を「高く買った」っていえば、その差額をいただいちゃえるってわけね。 じゃ、安い豚肉を「高く買った」っていえば、簡単にできるってこと?
昨年五月に逮捕された『日本ハム』の子会社の部長は、一キロ当たり四百十〜四百三十円の輸入豚肉を、関税がかからないように当時の基準輸入価格に合わせて五百二十五円と申告して、関税を免れていた。 うん。日ハム系の会社が400円の肉を500円とか言って、関税のがれをしてたみたい。 去年、煮血ハムもその手口でやったみたい
だけど、税関が調べれば、すぐばれるんじゃない? いやあ、そんなの調べたらすぐバレるでしょ? すぐバレるだろ?
申告制なのでなかなか難しい。あとから書類を審査して輸入業者に確認するんだけど、量が膨大で大変らしい。 申告制だからけっこうバレないって。あとで書類を調べて審査するらしいけど、むちゃくちゃ量が多くてとても確認なんかできないみたいだぜ。 申告制だからバレないとさwww
食品を扱う業者が法令を守れないようでは、食の安全にもかかわるわ。 食品業者がそれじゃあ、何食わされてるか信用できなくなるな。 (゚Д゚)ウマー
玉乱な。国民は…
悪質な業者は捜査当局が徹底追及してほしいね。 ほんと。悪い業者は徹底的にこらしめてもらいたいね。 悪徳業者はテッテー的に追及汁!


 原文の会話は、解説記事をただ会話主体ごとに分けただけになっているので、こんな奇妙キテレツなものが出来上がってしまうのである。

 しかし、それもいいかもしれない。
 事実、ぼくは、そんな苦情を言いながらも、毎朝、手軽にニュースをまとめて知るための便利な欄として利用させてもらっている。

 共産党の宣伝物や新聞が「ダサイ」といわれることがあるし、ぼくもまちがいなくそう思うけど、もはやそれは一種の味である。それを多少ソフィスティケイトしたからといって、どうなるというものでもない。
 その方面でたとえば電通、博報堂やアメリカの広告会社にむこうはれるほどのセンスがあるという自信がないのであれば、別にそんな方面で張り合わなくてもよいと思う。
 1989年に共産党がつくった消費税反対ポスター、ギターを弾いている「若者」が、「はっきり言ってノーだぜ」という、香ばしすぎるコピーをかかげたポスターの前で、大笑いしたものである。

 だから、いつまでも「おはようニュース問答」の不自然さを続けてもらってもけっこうだと思うし、ポスターやビラも、思い切って商業ベースにはない手作り感を前面にしてもらったほうのが、いいのではないかと思う。



2005.5.1感想記
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