東京都産業労働局『ポケット労働法』


 非売品。都の施設である「労働情報相談センター」(旧労政事務所)にいくと、ひっそりとおいてあります。
 127ページのうすくて小さなパンフだが、ざっと読めば、ぼくらがどんな法制で守られているのか実によく分かる。労働のルールにふれたことがないひとには、おそらく世界観的な深化さえあると思う。自分たちがどんな構造によって守られているかが大ざっぱにつかめ、「会社側から言われるままの労働条件をのんではじめて賃金がもらえる」という労働観にたいして、一撃を加える。

 本書の「はじめに」のなかに、東京都では同センターに1年で5万件ちかい労働相談がよせられるとあり、「しかし、これらの相談の中には、もしかしたら労働法の知識があればトラブルにならずにすんだのではないか、また、これほどの不利益を受けずにすんだのではないかと思われるものも少なくありません」と書いてある。まことにそうであろう。

 人力検索をみると、労働のトラブルにかんする悩みはけっこうある。
 人力検索のひとつである「Yahoo!知恵袋」にでている今日一日の質問のなかだけでも、たとえばちょっとピックアップしてみようではないか。

「一年程前から給料の支払いが滞りがちになり、今年に入ってはまだ一度も貰っていない状態です」
「手取り18万、残業100時間以上(月の残業代1万弱)の会社があった場合、辞めるべきですか?」
「うちの会社は残業が多い職場と少ない職場がありうちの職場は異常に多い」
「深夜手当について伺います。22時以降は深夜料金として 通常×1.5になりますか?」
「早退しましたが『欠勤扱い』といわれました。当惑しています」
「『出向』というのは『派遣』とは違うのでしょうか?」
「退職する前に有給を使いたいのですが,私の会社ではすごく特別な理由が無い限り有給は認めてもらえず,欠勤扱いとされてしまいます」
「有給休暇の無い会社は法律違反ですか」
「働いたのに、給料をもらえなかったことってありますか。私にもそれが起こりました」
「週休2日で、1日の拘束時間(9,45分)は普通ですか?」
「業績不振で解雇されましたが。急に忙しくなったらしく、解雇した人にアルバイトにこないか、と声をかけている社長がいます」
「定時に帰ると物凄い剣幕で捲し立てるように文句を言う同僚がいます」
「残業時間の正規の算出方法を教えてください」……


 だめだ、とてもピックアップしきれない。
 この何倍もの質問が1日に寄せられる。

 わたしは、労働基準監督官とか、東京都の労働情報相談センターの人間とかが、こういうのをコマメにチェックしてちゃんと答えてあげればいいのに、とか思う。人力検索だから、わりといい加減な回答とかもあるのだ。

 労働条件問題にかぎっていえば、こうした質問のかなりの程度の部分を、この『ポケット労働法』でカバーすることができるとぼくは思う。それくらいすぐれもんである。
 とくに、フリーター、アルバイトなどにたいしては、けっこう無法のやり放題という感じである。ぼくも聞き取りの結果などをみたことがあるけど、コンビニのバイトで最初は「見習い」などと扱われて、同じ労働をさせられながら賃金を払ってくれなかったとか、遅刻の罰として賃金が消えたとか、募集に書いてあったことと全然違うとか、そんなのがたくさんある。

 『ポケット労働法』を読むと、こういう明確な違法のやりかたにたいして、簡単に武装をすることができる。とくにフリーターのみなさんは、争わなければ丸損、争うだけトク、という感じがする。
 意外と知られていない、誤解されていることとして、「パート(アルバイト)にも労働法が適用される」という問題がある。条件をクリアすれば社会保険や有給休暇などもきちんととれるのであるし、簡単にクビにはできないということもわかる。また、その職場で労働契約や就業規則を読みこなしておくことが、たたかううえでカギになることもわかる。


 いまある法制を活用するだけでも、フリーターなどにたいする無法な働かせ方を、かなり改善させることはできると思う。そのためにも、「啓発」の活動は、行政とりわけ自治体の仕事として重要な位置をしめる。本書は予算などを聞くと、1冊220円でできるようだから、それを東京で高校を卒業する人全員(11万5000人)にバラまいても2530万円でできる(ちなみにラスベガスなどへの都議の海外視察はひとり150万円)。また、コンビニやファストフードなどに置くだけでも違うだろう。

 惜しむらくは文字が多いことで、啓発のことを考えるのであれば、漫画などにしたほうがよい。




萌える労働法(もえろう)


 リンクさせていただいている漫画日記サイト「るるてん」さんが、『萌える労働法』(もえろう)を構想(妄想)してくれました(右。画像利用は同管理人のきあさんから了解をいただきました)。
 ほかにも「バイトでも条件がそろえば、有給をとれるんだよ、お兄ちゃん!」「契約を書面で確認することが大切だにゃ」などというのも考えられます。

 普及を考えるならこれくらいやらんと。
 マジな話としては、東京都に「これ都内高校卒業生くらいには普及してよ」と交渉にいった人の話をきいたんですが、いちおう「はい」といったらしいんですね。しかしよくよく聞いてみると、「インターネットで全員見られる」という意味らしい……。アフォか!(ネットではPDFがどこにあるか探すのに一苦労なうえプリントアウトすると膨大になる)


2005.3.24感想記
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