論理で武装された神秘系宝石広告の奇観

 女性漫画誌の裏表紙の広告は何か。

 「ヤングユー」はいつも「武富士」。
 連載形式の広告で、全国の散策スポットが親しみやすいイラストで紹介され、ついつい読んでしまう。資本主義システムの可変資本V部分を幻想的に拡大させる魔法の収奪システム、という本質を忘れて。


 「フィール・ヤング」は、決まって神秘系宝石広告。
 今月号(2003年12月号)は、ラジウム鉱石を銀加工したと書いてある「ラジュールブレス」。(ホームページ版広告はこちら。だいたい同じ)

 普通に「開運のブレスレット」ていどのあおりで売ればいいものを、この「開運」に過剰なアクセントをおこうとするために、広告全体が独特の空気を醸成する。

 つまり、「論理的に、データ的に、反駁のスキがない、理論武装された広告」という奇観である。

 たとえば、「ラジュールブレスが続々と導いた大幸運の瞬間!!」として、宝くじにあたった人、彼氏が出来た人、高校に合格した人などが、極小ポイントの字とともに写真つきで体験報告を寄せる。

 当然、「なんでそんなうまいうぐあいに写真があるんだよ」というツッコミが予想されるのだが、「街頭100人 無料体験モニターイベント実施」として、渋谷でカメラ付き携帯を持つ人に「ラジュールブレス」を試験的に配り幸運の瞬間を写真で送付させたというスキのない反論が打ち返されている。
 宝くじにあたって、山とつまれた札束を前に、驚愕的歓喜の記号としての「手を口にあて、目を見開く」という漫画的表現をしている写真も、これで完璧に武装される。この「無料体験100人」という小道具を手に入れれば、円グラフを使った調査結果だの、陸続と寄せられる「幸運の瞬間」写真も、もうフリーパスだ。

 データ的にも実証されなければならない。「科学的にも検証されたラジュールブレス」というコラムでは、もうこれでもかというくらいに小さい荒れた画像で装着前と装着後のオーラの比較をしている。「資料提供:長野セラミック」とある。出典を決して欠かさないという厳格な手続きをほどこしてあるのだ。
 
 さらに、「権威」のお墨付きがあれば、「言うことはない」。「予防医学会代表」なる大堀和三氏が登場し、「欲望の実現は必然なのです」というタイトルで証言をする。どこかの権威の、関係ない発言をひっぱってきたんじゃないのか、という疑惑にこたえ、本文中で明快に商品名を語る。
 「ラジュールブレスに確認されたのは紛れもなく『ホルミシス効果』であり、その人間が持つ『願望・欲望』が具体化した出来事は、むしろ必然と言えるのではないでしょうか」

 これ以外にも、購入者からの開運譚、幸運獲得の詳細ルポなどが、極小ポイントで所狭しと掲載されている。

 このように、「論理的に、データ的に、反駁のスキがない、理論武装された広告」が生成する。
 近寄ってみれば「論理」と「データ」の鎧なのだが、遠景でみればスパイスの効いたギャグになっている。


(2003.11.11記)