瀧波ユカリ『臨死!! 江古田ちゃん』



※3巻の短評はこちら

 つまらないブログというのは、なんであんなにつまらないのか(当サイトへの逆批判は絶対禁止)。


ついに新しいパソコンを買いました!
今まで使っていたのはもう8年。
そろそろ買い替えカナ……って思ってました^^

8年もたつとソフトがわけわかんないなー(@o@)

でも楽しそう!(>▽<)

 ほー。そーですか。勝手にしてください

 しかし、コメントやトラバがけっこうついたりしているので驚く。ぼくが面白いと思っているブログとかにはほとんどつかなかったりしているのに。

 ただし、ついているコメントも「minaも昨日小鉢買った! とってもオシャレ」といった具合に微妙にスレちがい。おたがい、自分のことだけをしゃべっている。そういう敷居の低さも、逆に「日常の何気ない気持ち」ってやつを交流しやすいのか。
 たぶん、それはそれで需要があるんだろうなあ。


 自分が昔やってた関係で、他人に楽天でのブログ開設をすすめたり、たまに立ち上げるのを手伝っているけど、「はてな」などとくらべると、楽天のブログは群をぬいてつまらないのが多いと感じる(あ、ご友人のみなさんのことじゃありませんからねー、と友人を失うことを避けるため必死でフォロー)。

 おもしろいブログというのはどういうものか聞かれても困るけど、たとえば瀧波ユカリの『臨死!! 江古田ちゃん』は読んでいて「良質のブログ」ということを思い出させる。

臨死!! 江古田ちゃん 1  24歳女性、フリーター(昼は派遣、夜は時々お水)である「江古田ちゃん」の日常を4コマで描くのだが、名前のとおり西武池袋線的な青春というか、生活。筒井康隆が若いときに描いていた漫画みたいな絵柄(つか昔の横尾忠則)で、しばらくの間トラウマになりそうな突き放した感触がステキ。

 そこに描かれた生活への視線や記述が「面白いブログ」っぽい。

 江古田ちゃんは、自室で裸でいる。これを「キャラ立ち」のための「極端な、誇張された人物」造形だと思っている輩が多いようだが、顔を洗って出直してこい
 これは西武池袋線的青春の峻厳なリアリズムである。西部池袋線沿線で暮らしている独身若年層の8〜9割は裸で暮らしていると考えてまず間違いない。

〈「立ったキャラ」とは特異な性格、不思議な性格でなければならないらしいのだが、この特異な性格とは、しばしば、分裂した、支離滅裂な性格である。つまり、性格的自己矛盾である。けれども、それは、近代的リアリズムで要請された性格の複雑さではなく、逸脱と変人性の強調である〉というヨコタ村上孝之のキャラクター論を裏切る事態だ(『マンガは欲望する』p.188〜189)。

 そう、西武池袋線沿線のアパートでは、洗った皿や水受け容器に白ゴマがやたらとついている。そして江古田ちゃんが遭遇したように、その正体はコバエのサナギだったりする。
 また部屋にゴキブリが出れば、江古田ちゃんのように紙袋に追い込み、出口を封じた上で、電子レンジにかけたりするのだ!
 独身男・女が住む練馬区南部の安アパートではそんなことが日常である。


 江古田ちゃんには、いやらしいシニカルさがある。西武池袋線に住んでいる文化系女子の、ある一派には、闇夜に後ろから忍び寄って刺すような卑怯な観察眼があるのだ。知らないけど。

 お水の商売をやっている江古田ちゃんは、似たようなスーツを着ていらっしゃるサラリーマンのみなさん(含む俺)の顔が覚えられない。「メガネ」「デブ」「ハゲ」くらいしか特徴がなく、似た3人がくるともうダメ。とりあえず、並びで名前を覚えるものの、トイレに立ってシャッフルされているとアウトだ。「サラリーマンたち たのむからもっと個性つけてください」。
 また、江古田ちゃんの対極の女性は、男受けがするフェミフェミしたひとびと(「フェミニスト」の意ではない)。「走ればころび!!」「ハリウッド映画で泣き!!」「寝顔がかわゆく!!」「乳がでかい!!」――「私達はそんな女の子のことを猛禽』と呼ぶ」。そのココロは「ボケボケしているようで狙った獲物は決して逃がさないんだよ」と、くわえタバコで「けっ!!」と苦笑いする江古田ちゃん。「そのくせ雑魚も『友達として好き』とか言って飼い殺す」と合いの手をいれる江古田友人。

 かと思うと、良質ブログ的なかわいさを発揮。

 求人誌を見ながら「『単純作業』という言葉にムラムラきて 『カード製造の最終ラインで四隅を丸くする仕事』の応募をきめる」という江古田ちゃんの「具体性にときめく!!」という小さな叫び顔がかわいい。(テキスト上も、グラフィックも =右図:1巻p.84)

 さらにカスタマーセンターでの電話オペレーターの仕事の描写も好き。
 対応した苦情電話のレポートを書く江古田ちゃん。「(苦情の)タチの悪さを残しつつキレイにまとめた」と上司に評価されるそのレポートの見事さは国士無双である。
 ぼくもいつかこのような見事な「苦情電話報告」を書いてみたい。


 つれあいが絵で拒否反応をおこし、第1話で読むのを断念。もったいない。内容的には5話くらいからが絶好調になっていくので、読んでみ。(ぼくもひとからすすめられました)

 ちなみに、トリビア。練馬区にある西武池袋線の「江古田駅」は「えこだ」と読むが、中野区にある地名の「江古田」や都営地下鉄大江戸線の「新江古田駅」は「えごた」と読む。(この漫画は「りんしえこだちゃん」です)




講談社アフタヌーンKC
2006.8.11感想記
※画像は引用原則をふまえています
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