『社会保障の経済効果は公共事業より大きい』/79点


 「福祉は金食い虫、公共事業は景気にプラス」――浪費的な公共事業への批判が強まる中で、こういう俗論を信じている人は、減ってきたとはいえ、巷間にはまだまだあふれている。
 本書は、98年の時点で、この問題に実証的に切り込んだ意欲作である。
 現在パート3まで出ている。

 いまのような浪費的公共事業をつづけるわけにいかないことはだれでもわかっている。
 しかし、「減らして経済は大丈夫なのか」ということは、つねに疑問としてつきまとう。わたしも肉親もすぐそういう疑問をもちだす。まっとうな疑問だ。
 そこに本書は答えている。

 政府などの出している「産業連関表」を使い、経済効果を福祉と公共事業のそれぞれで試算し、行政にもその数字が信ぴょう性のあるものかどうかまで確認させている。第2巻はその計算手法についてかなり具体的に書いたものだが、1と3巻はそれによって得たデータを中心にのせている。

 端的にいえば、つぎのような数字となる。財政1兆円を投じた場合、
 ■生産効果:公共事業2兆8091億円 > 社会保障2兆7164億円
 ■雇用効果:公共事業206,710人 < 社会保障291,581人
 ■粗付加価値(GDP効果):公共事業1兆3721億円 < 社会保障1兆6416億円
となる。生産効果では若干おとるが、そん色はない。雇用効果やGDP効果は抜群である。自治体レベルになると、さらに社会保障の効果があがる。
 興味深いのは、町村など、小さなまちの例ものせ、福祉が「中心産業」になるほどに経済効果をあげていることをしめしている。
 それだけではない。教育(たとえば30人学級)や消費税減税の経済効果も試算している。

 浪費的な公共事業を大幅に削減し、福祉や教育に重点をおく。エネルギーの面でも、化石燃料から再生可能なものへうつる。そうなると、コミュニティは、しぜん小さなもの、「わがまち」を単位にしたものになっていくだろう。そのなかでも経済をおとろえさせずに循環させていく方式を考えていかねばならないだろう。
 いまの社会をうけつぎながら、次の新しい社会を構想するとき、本書の事実は頼もしい味方になる。


自治体問題研究所編集部(自治体研究社)

採点79点/100

2002年 12月 30日 (月)記

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