「ヤングユー」対「フィールヤング」


 ぼくは漫画雑誌は、基本的に「フィールヤング」と「ヤングユー」しか買っていない。いずれも、いわゆる女性漫画誌(月刊)だ。
 「ヤングユー」は学生時代から読んでいて、「スピリッツ」「モーニング」「オリジナル」など、いわゆる青年男性誌からぼくが全面撤退したあとも購読をつづけた。それほどに面白かった。
 そのあと「フィールヤング」を読むようになり、今日にいたっている。

 しかし、最近どうも「ヤングユー」は不調である。
 ぼくの知り合いは長年の購読をやめた。最大の契機は、少女漫画ばりの「ふろく」をつけるようになったことだ。友人は、「ヤングユー」を、もともと勢いを失っているとみていたのだが、このふろくによって、「これを喜んでいる読者だと書店で思われたくない」とついに撤退を決意した。

 今月号(2004年4月号)は、「ヤングユー」と「フィールヤング」の差は歴然といえた。

 1作家ごとに対決させてみて、その凋落ぶりを検証してみよう。凡例:ヤ=ヤングユー、フ=フィールヤング。



武内直子 姫と王子とプチ王子のばる〜んぱんち!!
堀内三佳 夫すごろく
決まり手 事実力の寄り切り

 どちらも根本的には自慢エッセイだと思うが、堀内のほうはまったくその嫌みを感じさせない。つーのは、とりあげられている事実が圧倒的に面白いせいだ。夫が自分でプログラムしたゲームをホームページにアップしたら140万アクセスがあって、課金システムにすりゃよかった、と悔やむ話などはもう圧巻。
 『セーラームーン』の武内のエッセイは、かなり開き直った自慢エッセイで、怖いモンみたさに読む。悪くはなかったが、堀内が提示する事実の強さには勝てなかった。




鈴麻らむね おーえるかもかもっ!
IKARING しまいもん
決まり手 肩透かし

 すまん、鈴麻。キミはプロであり、あるていどオモシロイんだが、まだ幕下という感じだった。組ませるべきではなかった。だいたい、「ヤングユー」のホームページでも、「おーえるかもかもっ!」の作者は「キャンディー・サトウ」だと書かれているありさまだし(2004年3月28日時点)。身内からしてこれでは。がんばれ。
 今回の「しまいもん」は、主人公のモテない女性が、5人の男性から求婚されるという夢のような話。グラフを使った各オトコの一長一短の表現は、思わず主人公になりきって、真剣に考えてしまった。




谷地恵美子 すぐりの季節
安彦麻理絵 コンナオトナノオンナノコ
決まり手 自滅


 「ヤングユー」の衰退の象徴的存在として大家・谷地がいる。『明日の王様』で持ち直したかにみせたが、それ以後はまったくダメだ。偉大なるマンネリ=安彦が、たたかうまでもなかった。




秋本尚美 ぬくぬく
いわみちさくら 本日の猫事情
決まり手 突き落とし

 もし「ヤングユー」に緒形もりが残っていれば、いわみちはテもなくヒネられたであろう。
 秋本は、おじいさんと猫の「ぬくぬく」した関係を描きたいのかもしれんが、作品のレベルとしてヌルくなっているだけ。やはり大家である秋本の退嬰。
 いわみちは、緒形の二番煎じのような気がずっとしていたが、緒方のペット漫画なき今、その代替物でもイイので読みたい心境でアリマス。




高橋由佳利 トルコで私も考えた
三原ミツカズ 死化粧師
決まり手 趣味による上手出し投げ

 やっと「ヤングユー」に白星が。三原は絵だけうまいのでは、という評価からどうもぼくは離れられない。エッセイ漫画とは主観の垂れ流しではなく、とりあげる事実そのものの選択眼であるということを、高橋や堀内から知る。けっこういい勝負でしたが、最後はぼくの趣味で決めちゃいました。




池谷里香子 FUTAGO
有間しのぶ モンキー・パトロール
決まり手 もみ合いの末、判定勝ち

 恋愛感情のない奇妙な同居、という池谷の得意領域で土俵をしいたはずなのに、思わぬ苦戦を強いられた。池谷は長篇のドラマになると、とたんにフォーカスが甘くなってノレない。
 有間は、キャラに依存するということを、革命的にやってのけた。もはや、登場キャラは「人間ではない、なにか」でさえある。 




鴨居まさね SWEETデリバリー番外編
内田春菊 最近、蝶々は…
決まり手 こわい

 鴨居の、仕事にたいする過剰なまでのきびしさが、最近ずっと気になっている。こわい。他方で、それと対になる癒しも、また妙に生々しい。鴨居とはひどくバランスの悪い人間だと思うようになった。そのバランスの悪さ、こわれっぷりが、またリアルなわけですが。
 内田春菊の話は、面白いんですが、面白いだけというか。




羽海野チカ ハチミツとクローバー
かわかみじゅんこ パリパリ伝説
決まり手 引き分け

 羽海野は最近タルんでいるように思われますがいかかでしょうか。むろん高いレベルは保っていますが、話がいっこうにすすまず、先も見えず(悪い意味で)、ギャグと「萌える情景」をカンフル剤のように打ちつづけているように思われます。思いきって終らせるか、展開を変えないと、そのうち怒られますよ。
 ギャグで勝負しようというなら、かわかみの四コマの新鮮度にはかないません。女性漫画誌でこういう四コマを見かけようとは思いませんでした。「アジア自分探し禁止」「ヨーロッパあんたたちはおかしいよ」などタイトルにさえ尋常でないセンスを感じます。はい。
 つーわけで、引き分け。




かれん 恋愛強化月間
青木光恵 スウィート・デリシャス
決まり手 肉感

 セクシー度対決。しかし。
 かれんの描く男って、なんでああも気持ち悪いのか。目がダメ。目だけ少女漫画みたいなのに、ヒゲを生やしている感じがして。いや、ヒゲと少女的瞳って別に一般的にはキモくないのだが、かれんの場合は、ヒゲに込めている意味と少女漫画的瞳にこめている意味がまったく別で、キモいのだ。女性が職業上自立していく姿も描いているはずなのに、これほど庇護的に見えるのはなぜ。
 青木の描く絵はとにかく、「いやらしい」。エロい。エッチ。まっとうな左翼読者のためにいっておくと、べつにセックスが過剰に登場するとかそういうレベルの話じゃないですよ。見たことない人は、一度絵をみるといい。ことえり(主人公)のくちびるだけでほとんどそれを集約的に表現する。




槙村さとる BELIEVE
小野塚カホリ ゆびのわものがたり
決まり手 不戦勝


 もう完全に個人の趣味の判定。小野塚は受けつけないので。
 他方、槙村。大型スターと予感されながら、実は子持ちだった、という、読者を引きずりまわすスジ展開。ドラマの王道をいっていて良し。




石井まゆみ キャリア こぎつね きんのもり
原田梨花 Black!
決まり手 上目遣いアッパーカット

 どちらもまじめに読んでいないもの対決。ごめんね。
 サービス残業問題をまじめにあつかった石井を評価したいところだが、それはそれ、これはこれ。
 原田のほうは、いまだに登場人物とその関係をおぼえられないのだが、というか、スジが全然わからんのだが、そんなこととはまったく別に、主人公の好(このみ)かわいさに、彼女に会うためだけにページをひらく。登場人物全体が上目遣い。スジも人間関係もくそもない状態でここまで好きになれるという作品は、おそらく相当なモンではないか。ちがうか。





総計。「ヤングユー」3勝7敗1分、「フィールヤング」7勝3敗1分。


2004.3.29記
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