タイ山岳民族

 タイの北部や北西部を中心に、今もなお伝統的な習慣や文化を守って暮らしている山岳民族は、70万人とも90万人ともいわれています。また、ひと言で「山岳民族」といってもカレン族、アカ族、モン族、ラフ族、リス族など大きく分けて10数部族、それぞれ話す言葉や習慣、生活様式などには大きな違いがあります。
 彼らは、古い昔から山岳地帯を移動しながら、焼き畑農業や狩猟などで自給自足の生活を営んでいましたが、平地に住むタイ人との文化や習慣の違いなどから、強い差別や偏見にさらされてきました。実際、山岳民族の約4割が「暫定的な滞在者」として、正式なタイ国民と認められていません。そのため、人々は医療サービスや高等教育を受けるにおいても不利で、就職、他県への移動も制限されるなど、厳しい制約が課せられています。
 そのような山岳民族は、1980年代後半からの焼畑農業の禁止や国定公園の指定増加などにより、多くの人々が住居や農地を失いました。生活の糧を無くした山岳民族は、収入を得るため山を降り、市街地への移住を試みました。しかし、言葉の壁や差別、国籍問題などが原因で正業に就くことは難しく、売春に関わったり、麻薬犯罪に関わったりした人々も少なくありません。そして、90年代にタイを襲った爆発的なエイズ感染で、多くの山岳民族が命を奪われました。今も多数の感染者が苦しんでいます。
 大きなひずみの中で、いつも犠牲を強いられるのが“子供たち”です。エイズや麻薬で親を失い、無国籍で、教育はおろか、生きていくのもままならない多くの子供が残されています。

山岳民族の村

[アカ族の家]