『週刊金曜日』 2000年5月26日(No.316)号より

風速計    本多勝一

ブタがコケコッコーとは鳴かぬ


 密室的手続きで首相になったばかりの森喜朗氏が、さっそく「日本は天皇中心の神の国」と公言した。この騒ぎで、石原都知事の「矮小(わいしょう)ヒトラー」ぶりもかすんでしまったかにみえるが、どちらの国辱的かつ痴的レベルも今後変ることはないだろう。
 なぜか。2人の過去と基本的性格や痴性を洗ってみれば、これらの発言はあまりにも当然のこと、ブタがブーブーと啼き、ニワトリがコケコッコーと鳴いただけの現象にすぎない。ただ2人の現職(首都知事と首相)での発言ということで問題化することになる。石原や森が、アジアや日本について まともな発言をすることは、ブタがコケコッコーと鳴くようなもので、生命の進化史からしてありえないのと同次元の奇蹟であろう。
 当初は開き直っていた森も、相棒の公明党から問題視されて政権への影響をおそれ、しぶしぶ陳謝したものの、その表現たるや「誤解を与えたなら本意ではない、おわびを……」であった。嗤(わら)わせるではないか。彼の発言は「本意」だからこそ撤回はしないし、したがって「誤解」どころか「正解」であろう。問題は、こんな男を首相にする日本人の民度にある。
 石原もまた、その後もブーブー啼きつづけている。ドイツの『デァ=シュピーゲル』誌(4月10日号)で、記者の質問に次のように答えた(金子マーティン氏訳)。
「南京に関わる非難は、まったくのナンセンスです。いわゆる虐殺は、1946年の東京戦犯裁判の過程で、アメリカ人が捏造(ねつぞう)したものです」
 つまり石原は「10年前の『プレイボーイ』インタビューで『中国の作り話』であったものが、今度は『アメリカ人が捏造したもの』に入れ替わっただけの話ですが、石原都知事を東京都民の力で辞任に追い込めなければ、国際的にも恥になるのではないでしょうか」(金子マーティン氏の手紙から)
 さらに石原は、南京虐殺の「数」の問題をとりあげて「2万、あるいは5万というのであれば、わたくしをいきり立たせることもないでしょう」(同誌)と言うが、たとえば揚子江岸のある1カ所だけで2万人前後の集団銃殺が行なわれた事実(注)など、ひたすら黙りこむ。石原は自ら取材したこともないまま、侵略否定側の国辱的視点にだけ依拠して矮小ゲッベルス宣伝相役もつとめているのだ。
『内外タイムス』(5月2日)によれば、石原は4月26日の日本原子力産業会議第33回年次大会で「東京湾に立派な原子力発電所を造ってもよい」と発言した。
 4月末にMXテレビ15チャンネルを見たある友人によると、石原は台湾関係者との対話で「中国に台湾が併合されれば、次はベトナムが併合され、さらに次は日本が中国に併合される」と発言した。
 同じ発想を石原に適用してみよう。
「石原はヒトラーに学んで新党をつくって首相をめざし、次に朝鮮半島を併合し、さらに中国に“進出”し、ベトナムを併合し、フィリピンを……」

<注> 詳細は本多勝一 『南京大虐殺』または小野賢二ほか編 『南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち』(大月書店)参照。


(Webサイト作成者より)
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