黒川順夫の心療内科  

 不 整 脈

  心臓が妙な打ち方をするのを感じる。自分で「あれっ、おかしいな」と思う経験はだれでもあるのではないか。
 疲れがたまったりストレスが高じたおり、心臓の拍動が規則正しいものではなく、不自然になることがある。脈拍が正常なリズムではないのだ。もしかして心臓が止まってしまうのではないかという不安がよぎる。心電図などで検査すると「不整脈が出ています」と医者から告げられる。
 心臓はふつう、自ら周期的な興奮を発生させ、収縮を繰り返している。それが何かの原因によりリズムが狂い、脈拍が速くなったりする(頻脈=ひんみゃく)。
 不整脈は医学上、洞性頻脈や期外収縮などと呼ばれているが、平たく言えば、心臓拍動のリズムが狂う状態を言う。その原因となるのが過労や心労といった心理的ストレスである。不整脈は日常的に多く見られる症状である。

 こんな例がある。
 47才男性はアパレル関係の会社に勤めるサラリーマン。職場では次長で、上には部長がおり、下には課長や係長などの部下がいる。上司と部下の間にはさまった形で仕事を進めていく立場で、何かと心労が多い。その彼が、ある病院で不整脈が出ていると言われ、私の医院へやって来るようになった。
 私は心電図などの内科的な検査をする一方で、カウンセリングを施した。その結果、彼はもともと神経質な性格で、もめ事やトラブルを気に病む傾向があった。うち続く不況と業界全体の不振から彼の会社の業績は良くなかった。加えて彼はこう言った。
 「最近、職場の人間関係がものすごく悪いんです。上司は一方的に厳しいことばかり言ってくるし、部下たちの中には不満がたまっている。仕事の進め方で同僚たちのいがみ合いが多く、中間管理職として悩んでいます。」
 検査の結果、上室性期外収縮、いわゆる不整脈。
 彼の不整脈が分かったのは「あれっ、心臓が変な打ち方をするな」と、職場のデスクに向かっている時に思ったのが最初だった。
 仕事の疲れがたまっていた。中間管理職として、体だけでなく、職場の人間関係からくる精神面の疲れもあった。元来、神経質な性格だった彼の不整脈の原因のひとつは、その会社での日常的なもめごと、加えて彼の家庭で起こっていた長男の結婚問題からくるものなど、心理的ストレス、心労と考えられる。私は彼に投薬するとともに、カウンセリングを通して、彼に原因を告げた。
 その後長男の結婚問題は解決し、不整脈はやや出なくなったものの、職場の環境に変化がないため、治療はまだ続いている。

 46歳、女性の場合も同様だった。ご主人が自宅で保険関係の仕事をやっており、彼女も手伝っていた。ご主人は40歳で脱サラ、自宅で開業した。 彼女の不整脈は、夫が自宅で仕事をするようになってから4年ほどして出始めたという。
 心理テストはSDS=42点。これはかなりうつ状態にあり、性格゛判断″テストでは「自己を抑えるタイプ」と出た。カウンセリングを進めていくと、彼女のストレスの原因は明らかに夫の在宅にあった。仕事そのものよりも、24時間夫と顔を合わせていなけれほならないことがうっとうしかったのだ。
 彼女はその後、治療を中断されている。

 不整脈は、原因となっているストレスが取り除かれると次第に発症しなくなることが多い。
それよりも注意しなければならないのは心筋梗塞、狭心症といった心臓疾患である。こういった病気もストレスが原因で引き起こされるケースが多いので注意が必要である。

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