黒川順夫の心療内科  

自律神経失調症

 「近ごろ、妙な動悸が襲ってくる」「立ちくらみすることがよくある」「”のぼせ”症状に見舞われる」「冷や汗が出る」「頭がフラッとする」。
 何が原因かはっきりしないがこういった症状を訴える患者は多い。いろいろ内科的な検査(尿や血液の検査、心電図など)を施しても、これといった異常はみられない。

 このような場合、患者は”自律神経失調症”であることが多い。この病気は、ぜんそくや下痢、あるいは呼吸困難といった形のものまであって、どんな症状として現れるか分からないぐらい千差万別である。
 「このごろ、のぼせている感じがして仕方ない」という中年主婦もいれば、ある中年サラリーマンは「会議の席で重役から厳しく叱責されて冷や汗が出て以来、会議の時間が近づいてくると決まって冷や汗が出るようになった」という。

 あるサラリーマンは朝、家でコーヒーを飲んでバスで出勤途中、急に息苦しくなり、病院に駆け込んで酸素吸入をしてもらった。以来時折、コーヒーを飲んだ後、息苦しくなるという。心電図やレントゲン撮影などの検査の結果は異常なし。病名は「発作性頻脈」「神経循環無力症」、そして「自律神経失調症」などというものだった。

 自律神経は交感神経と副交感神経からなり、この互いに相反する働きをする二つの神経がバランスを保つことによって体もバランスを保っている。
 相反する働きというのは、たとえば交感神経は心臓の拍動を増加させたり、腸の蠕動(ぜんどう)をゆるやかにするするのに対し、副交感神経は心臓の拍動を抑え、腸の蠕動を活発にする。

 自律神経は本人の意思に関係なく、さまざまな臓器や器官の機能を調節しているので、このバランスが崩れると体の不調が現れる。
 身体的な検査によって特に異常が見られないか、体の不調を訴える場合、自律神経失調症と診断される場合がある。その原因となるのは、ストレス、不規則な生活、疲労、人間関係と人によってまちまちである。

 ある証券会社に勤める45歳の男性は、職場で課長だが、上司の部長からことあるごとに厳しく叱責されたり、指摘されるのが原因で、自律神経失調症になってしまった。その部長は、人前もはばからず、彼を叱りつけるというのだ。反論しようものなら、何倍にもなって返ってくる上司であるらしい。
 もともと、その患者は過敏性腸症候群という病気をもっていたが、職場でのそんな状態が大きなストレスになって、一段と下痢症が症状が激しくなった。それだけではない。立ちくらみがして、妙な動悸がするようになった。ストレスによる自律神経失調症の症状である。

 ところで、患者が自律神経失調症であるかどうかの診断は、どのような形で行われるか、といえば、「自律神経失調症調査票」というものを使う方法がある。これは、「いつも耳鳴りがしますか」「人より息切れがしやすいですか」といった多くの質問に答えてもらい、身体症状をみていく。
 また、自律神経失調症の治療には、「自律神経調整剤」「抗不安剤」「漢方薬」などの薬剤が投与されたり、”自律訓練法”というセルフコントロールの方法が用いられる。

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