黒川順夫の心療内科  

過敏性腸症候群 (1)
◇ストレスで下痢・腹痛

  何か緊張することがあったり、嫌なことをしなけれはならないときに急におなかが痛くなり、トイレに駆け込むと激しい下痢をする、それも1回きりではなく、断続的に襲ってくるといった経験はないだろうか。

 そんな症状を訴えて私のところへ訪れる患者はかなり多い。腸の潰瘍(かいよう)や腫瘍の有無を調べるため、肛門からバリウムを注入する注腸透視などの検査をしてみても何ら異常はみられない。こんな場合、「過敏性腸症候群」(IBS)という病気であることが多い。精神的な緊張やストレス、嫌悪感などによって、正常な腸の働きをしないために起こる症状である。

 普通、腸はゆっくりとした蠕動(ぜんどう)運動を繰り返し、食べたものを消化していくのだが、緊張したり、嫌なことに直面したりすると腸がけいれんなどを起こし、正常な働きをせず、腹痛を伴った下痢や便秘を引き起こす。  会社員などは出勤前や出勤途上に、学生などは家を出る前などによく起こる。会社や学校へ行くのがイヤだという思い思いがそのような症状を引き起こすのである。

 患者さんは53歳の大手化学メーカーに勤めるサラリーマン。営業部長という責任ある立場である。この人は出勤時間になると、決まっておなかが痛くなり、家でトイレに入ると下痢。それも一度ではない。一度排便しても、残便感があり、腹痛も収まらず、数回トイレに入るという。
 ややおさまって家を出ても、電車の中で再び腹痛が起こり、途中の駅で降り、トイレに駆け込むと下痢。それも複数の駅で降りてトイレに駆け込まないといけないほどだ。

 身体的な検査をしてみたが、何ら異常はない。何が原因かと本人からいろいろと話を聞いてみると、彼は職場で上司と折り合いが悪く、朝起きると「今日もあの上司と顔を命わせないといけないのか。会社へ行くのが嫌だなあ」と思うのだそうだ。
 どうやら腹痛の原因は、精神的な緊張やストレスにあると判断した。

次へ 戻る カルテリストへ  ホームへ TOPへ