黒川順夫の心療内科  

過敏性腸症候群 (2)
◇下痢型

  神経が過敏になるあまり、腸までけいれんを起こしたりし、正常な腸の働きをしなくなり、下痢や便秘を繰り返す過敏性腸症候群という病気は日常的ににかなり多く見受けられる。私の病院を訪れる患者の4~5人にひとりはこの症状であるといっても差し支えないほどである。
 これは、日本人に多い病気であると言えるし、現代がやはりストレス社会であることを物語っているとも言える。この病気のいくつかのケースをさらに見てみよう。

 ある60歳男性患者は、たえず腹痛を起こし、下痢が断続的に続くという。本人の訴えによって、私は様々な内科的な検査を行ったが、異常は見られなかった。エゴグラムといううつ状態を調べる心理テストを行ったところ、注目すべき結果が出た。彼はうつ状態に陥っており、何かにイライラしているふうで、かなり神経が過敏になっているようであった。
 神経が過敏になるのは、彼の僧侶としての仕事が原因であることが話していて分かった。何軒もの檀家を抱え、腹痛や下痢の症状は決まってその檀家まわりの前後や最中に起こっている。特にお盆のころは下痢状態が続くという。

 原因は明らかにこれである。彼はバイクで檀家をまわりながら、その数が多いため疲れを感じ、人と顔を合わせるのがおっくうでたまらなくなると告白した。
 私はその住職に、整腸剤や抗うつ剤などの薬を投与する一方、カウンセリングを施すという治療を行った。カウンセリングでは、負担になっている檀家まわりを軽減できるように相談に乗ったが、その結果、若い僧侶を迎えることや、奥さんが檀家まわりをすることで負担は軽減され、以来症状はみるみる良くなっていった。

 過敏性腸症候群は下痢の場合、便秘の場合、あるいはその両方が交替で現れる場合がある。

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