黒川順夫の心療内科  

 心身症・森田神経質・森田療法(概要)

心身症には、多くの疾患があるが、まず始めに森田療法に関連のある疾患にふれてみる。
神経質(森田神経質)の特徴

 一般にいう神経質とは少しニュアンスが異なる。
 ここでいう神経質は,日本人の特徴でもある几帳面,羞恥心の強さのみならず,自己内省力,執着心,よりよく生きようとする欲望(生の欲望)などが人一倍強い。
 そのため,自分の心身の状態や変調などに過敏に反応する傾向(森田はこれをヒポコンドリー性基調と呼んでいる)がある。
 そして誰にでもある生理現象(例えば食後胃がもたれるとか運動後に動悸がする)に「とらわれ」てしまう。
 その生理現象を自らなくそうと思えば思う程,ますます胃や心臓に注意が集中し,胃のもたれ,心拍に対する感覚はさらに鋭敏となり,不安が強まり,実際に胃の不快感や動悸が強まる(精神交互作用,心身交互作用)。
 また、かくあるべしという観念にとらわれ、よけい事実との矛盾を感じ、とらわれを増す「思想の矛盾」となって,いわゆる神経質症状を呈する。

森田療法の適応疾患
 森田は神経質が、素質やきっかけ、「精神交互作用」、「思想の矛盾」などにより「とらわれ」を起こして生じた神経症を次のように分類している。
(a)普通神経質
 不眠症、胃腸神経症、書痙、性的障害、頭痛、めまいなど。
(b)強迫観念(恐怖症)
 対人恐怖(視線、赤面、表情、排尿など)、雑念恐怖、不完全恐怖、疾病恐怖、不潔恐怖、過失恐怖、尖鋭恐怖など
(c)発作性神経症
 不安神経症、心臓神経症など

このほか、心身症の中にも神経質症状(とらわれ)を基本とした多くの疾患がみられる。
a.心身症(Ⅰ)
 過敏性腸症候群,慢性胃炎,胃下垂,神経性嘔吐,腹部術後障害,胆道ジスキネジー,神経性食欲不振症(とらわれ),発作性頻脈,神経性咳嗽,神経性乏尿,過敏性膀胱,更年期障害,自律神経失調症,片頭痛,外傷後症候群,書痙,筋痛症,パニック障害など。
b.心身症(Ⅱ)
 気管支喘息,糖尿病,慢性肝炎,慢性関節リウマチ,など。

事実唯真
 感情や気分にとらわれて、もの事を虚偽にみるのではなく、事実を事実として正しく認識することが大切であり、「とらわれ」から開放される重要な心構えである。

あるがまま
 森田療法の中では一番大切な言葉であるが、作業などになり切ることにより、「とらわれ」た心を外に向け流れさせることを通して、苦悩、不安、恐怖などがあっても、それらを消そうという努力(はからい)をしなくても、作業などが出来ることを体得した心境をいう。この「あるがまま」を体得したとき、「とらわれ」か解放され、神経質者がもっている「生の欲望」か発揮され、自己実現へと向かって行く。

森田療法(原法)
  「あるがまま」を体得させるため、森田は、絶対臥褥(読書、テレビ、会話、面会などを一切禁止し、食事、用便、入浴のみを許す)を5~7日間実施させ、不安、恐怖などから逃げずに、正面から受けとめる態度の基礎を作らせると同時に、作業意欲を高める手段とした。
 その後は生活の中で軽い作業から重い作業に入って行かせ、作業をどうすれは能率よく、スムーズに行くかを工夫させつつ作業そのものになる体験をさせ、2~3ケ月後、「あるがまま」を体得させて行くと同時に「とらわれ」を開放させる治療法である。

歩行訓練療法(森田療法変法)
 森田療法では作業が大切であり、そのなかで体得すべきものであるが、ビルの特徴をもつ病院での作業は極めて難しい。そこで私は作業に代わるものを思い切って「歩くこと」にのみ限定した「歩行訓練療法(森田療法変法)」を考案した。これは限界があるが、歩行することで「あるがまま」を体得でき、ビル式の病院や外来でも実施可能であり、内科や心療内科で一番実施しやすい森田療法である。
 この療法は、目標地点(駅やバス停が適当)、歩くコース、歩く時刻を決めさせ、一人で徐々に歩く距離を延ばさせ、目標地点に着けば、電車やバスに乗る距離も徐々に増やさせる方法で、外出恐怖を伴う「不安神経症」、「パニック障害」、「うつ状態」に有効 であり、特に「うつ状態」には原法より適切な面が多い。

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