黒川順夫の心療内科  

主人在宅ストレス症候群 3
 ◇主人が単身赴任すると治る慢性肝炎

 大多数のサラリーマンは、ウイークデーの夕方または夜帰って翌朝出かけるまで在宅するという生活を繰り返す。日曜や盆正月はおろか、このような日常的な在宅のパターンでさえ、妻にストレスを与えているとしたら、夫たる者、もはやどこにも身の置きどころがないだろ。

 彼女は47歳、主人は通常勤務型のサラリーマンである。
 はじめ、一家は夫婦と娘一人だけの生活だったが、娘が小学校に入学するころ、姑が同居するようになる。異変が生じるのは、それからだ。
 まず、娘が暗く沈みがちになって、摂食障害を起こしはじめる。続いて、それを気にやんだ彼女が体調を崩す。医者に診てもらうと、どうもストレスによって肝機能が悪くなったらしい。その後の約十年間、母娘とも症状は改善することなく、むしろ悪化の一途をたどった。
 ところが、思いがけないところから転機が訪れる。

 それは、主人の単身赴任。主人は家族を関西に残して、地方に転勤することになった。 主人不在は約三年ほど続く。
 彼女の症状が改善したのは、この間のことだ。悪くなる一方だった肝機能が、嘘のようにみるみる良くなっていったのである。
 しかし、それもつかの間、三年後にはふたたぴ逆もどりした。単身赴任を終えて帰宅した夫とともに、病いも帰って来た。また、肝機能がどんどん悪くなりはじめた。
 当内科へ来院したとき、心理テストはSDS=34、エゴグラムのCP=14、NP=14、A=12、FC=11、AC=15と出た。いずれもとくに問題となる点数ではないが、CPが比較的高いのは、きっちりしないと気がすまないところがあるのかもしれない。
 診断の結果は、慢性肝炎、不安神経症であった。

 B子さんによれば、主人が母親の言いなりになったことがコトの始まりである。母親の言いなりになって、博子さんにこまごまと口出しし、子どもに悪ロを浴びせたことがストレスとなった。そのために肝機能が悪化したという。
 たしかに、ストレスの原因は主人にあるというほかない。主人の単身赴任中に肝機能が回復し、赴任が終わると、また悪化したという事実経過がそのことを如実に物語っている。主人在宅のストレスが、妻の肝臓まで冒してしまうのである。
 ちなみに、このケースでは、姑からのストレスも多少あったと考えられるが、それは主凶ではないだろう。というのも、主人の単身赴任中、姑は彼女と同居し続けていたのに、症状は回復しているのであるから。
 このように、B子さんのストレス解消には主人の単身赴任が効果抜群であった。が、主人が自宅通勤にもどってからは、わずかにストレス解消策は裁縫くらいしかないようだ。
 私としては、例によってなるべく外出するように勧めたいところだが、子どもの摂食障害が続いているし、姑の世話もしなければならない。彼女の置かれた環境はきわめてきびしい。
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