黒川順夫の心療内科  

うつ状態 症例4.生きがいをなくして・・
  うつ状態は”生きがい”と大きな関係がある。「子供たちが独立して夫婦二人だけになった」、「定年退職後、家でブラブラしている」、「第一線から退いて暇でしょうがない」といった訴えを患者たちはしばしばする。こういった訴えの裏側には、長らく自分が生きがいとしてきたものを失ったことの寂しさや失望感などがある。

 現役で仕事をしている人が、仕事のストレスでうつ状態に陥った場合、「今のポストを離れたら症状が良くなるか」と言ってくることがある。だが私は、現在のポストを離れたり仕事を辞めることに反対する。仕事がストレスの原因になっていても、その仕事を離れればいい、とは必ずしも言えない。たたき上げで会社を大きくした社長が、息子にポストを譲り第一線を退いたとたん、うつ状態に陥った例のように、暇もまた大きなストレスの要因となるからである。

 うつ状態は仕事を持っている人だけが陥る症状ではない。家庭の主婦で夫が週休2日制になり、土曜日と日曜日の2日間とも夫が家に居るようになってから、高血圧を伴ったうつ状態に陥ったというケースもある。うつ状態の原因、現れ方はまちまちだということだ。

 また、つぎのようなケースもある。
 31歳の男性。徹夜マージャンをして、出勤したところ、発汗、震え、脱力感がひどく、救急車で病院に運ばれ、緊急入院した。精密検査をしたが、特に異常は見つからなかった。
 2ヶ月後にも同様の症状が起こり、同病院で検査を受けたが、やはり異常は認められず、「自律神経失調症」と放置されていた。数ヶ月後、三たび立ちくらみ、胃の不快感、肩凝り、疲れを訴えて心療内科へやって来た。身体的な検査をあらゆる面から行ったが、何ひとつ異常所見は見つからなかった。ところが、心理テストをしてみて「仮面うつ病」であることが判った。

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