黒川順夫の心療内科  

 心理療法における身体からのアプローチ
ヨーガ療法 Yoga Therapy

心理療法には、大きく分けて、こころの内面や行動に言語的に直接働きかけていくタイプと、身体への働きかけを糸口として心理的作用を引き起こしていくボディー・ワークのタイプがあります。これらは、身体とこころは常に切り離すことができないという心身相関あるいは心身一如という考え方にもとづいています。黒川心理研究所では、ボディー・ワークに関するものとして、ヨーガ療法のグループを常設しています。また、個人カウンセリングの中でも実施する場合があります。
ヨーガ療法とは
 ヨーガ療法は、5000年の歴史の中で継承されている伝統的ヨーガの叡智にもとづき、1920年代からインドにおいて医療の中で組み立て直されてきた治療技法の体系です。ヨーガについての医学的検証が現在でも進められ、最新の画像診断や遺伝子の変化においても効果が実証されつつあります。そのため、インドでは、ヨーガ療法学科がある大学が30校以上あるほどで、現在、ヨーガ療法は統合医療の中で代表的なものとなってきました。
 ヨーガ療法は、身体面への「アーサナ(座法)」「プラーナーヤーマ(調気法)」の実習を通して、筋骨格系の制御と生体エネルギーの制御を行ない、そこでの「意識化」という観察を通して心的作用の制御も行なっていきます。並行して、ヨーガ・カウンセリングストレス・マネージメントに役立つヨーガの理論学習による認知面へのアプローチも行なっていきます。つまりヨーガ療法は、人間観、病理論、治療論が兼ね備わった心理療法体系のひとつなのです。インドでは、身体はアーユルヴェーダ、心はヨーガで統制する、とされています。
 当研究所では、アーサナと呼吸法を中心としたグループを常設しており、個人カウンセリングの中でもヨーガ療法を実施する場合もあります。また、ヨーガ・カウンセリングは個人カウンセリングの中で行ない、理論学習も同時にその中で行なっています。
ヨーガ療法における病気についての考え方
 伝統的ヨーガでは、人間を理解するとき、人間は五つの層(鞘)の分かれていると考えられています。これを、五蔵説と呼びます。第1の層は、肉体の層で食物鞘といい、第2の層は、エネルギー(プラーナ)の層で生気鞘といい、第3の層は、感情・感覚の層で意志鞘と呼びます。第4の層は、知的判断、つまり認知に関する層で理智鞘と呼びます。第5の層は、記憶袋であるチッタ(心素)があり、無意識層ともいえる層で歓喜鞘と呼びます。
 そして、病気には、ウイルス感染や外科的外傷から生じる病気と、理智鞘の「無智」から生じる病気の二つがあるとされています。後者の無智とは、現代心理療法からすると、認知の誤りあるいは偏りといえ、無智から生じる病気とは、認知的判断の問題から生じる病気といえるでしょう。
 この後者の無智から生じる病気には、現代医学における心身症の中に含まれる病気が多数含まれています。心身症は、自律神経系、ホルモン系、免疫系など身体維持機能が絡み、これら機能は、ストレスの影響を受けやすいものです。ヨーガは、このストレス状態に影響を与えていくことを目指します。
 ヨーガでは五蔵説の立場から、理智鞘における無智、すなわち認知的理性的判断の誤りあるいは歪みから、我執というこだわりの状態が作り出され、そのこだわりへの執着の状態から、意志鞘における感情の乱れが生じ、感情の乱れから呼吸の乱れが生じ、それによって生気鞘におけるエネルギー(プラーナ)の乱れが生じ、それが慢性化することによって食物鞘における身体組織が乱され、さらには損傷が生じる、と考えられています。つまり、理智鞘での理智的判断の偏りや歪みから各鞘での不調和が生じ、それが病気となって現われている、と考えるわけです。まさにこれは、現代の認知療法の考えと一致しているといえるのではないでしょうか。ヨーガは、5000年間、このような考えにもとづいて心身の病気に対処してきました。
 ヨーガ療法では、このようなストレス状態に対して、次にように対処します。
 このように、ヨーガ療法は、糖尿病、高血圧、心臓疾患、ぜん息、消化器系疾患、がんなどの各種疾患の中で、ストレスに関連する病態には有効とされ、不安性障害、うつ病などにも有効とされ、現在では、MRIやPETなどの画像診断によっても、その効果が検証されつつあります。
 実際、ヨーガ療法によって、肩凝り・頭痛・めまい・吐き気・頻脈・冷えのぼせ・血行障害・過換気発作などの各種自律神経症状は極めて改善しやすくなります。また、脳の血流改善も促進するため、脳の状態改善にもつながります。心理的には、不安、抑うつ、強迫観念、焦り、後悔などで振り回されにくくなっていきます

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