24番勝負 山田章博・耽美王


今ではまんが家としてよりもイラストレーターとしての方が有名なのかもしれませんね(ファンの方も「山田画伯」と呼んでるみたいですし)。



私が山田章博さんのまんがを初めて読んだのは今から20年近く前(ひえー)、高校生の時。当時の私は「耽美」という言葉が大好きで谷崎や足穂を読んでは「素敵…」と(よくわかってもいないのに)うっとりしているような、よくいる文学少女もどきでございました。そんなイタイ奴がある日書店で見つけてしまったのが山田さんの「BAMBOO HOUSE」。美しく色っぽいその表紙に「まあ素敵…」と中身も確かめずに衝動買いしたのですが、家に帰って本を開いてみてびっくり。まさに当時の自分が求めていた「耽美な世界」がそこにあったのです。「こういう絵、こういう雰囲気のまんがを読んでみたかったんだー!」と狂喜乱舞してしまったことを覚えています。



振り返って考えてみるに、私にとって山田章博さんは初めての「絵から入ったまんが家さん」かもしれません。それまではまんがで大切なのはストーリーであって、話さえよければ絵には多少難があってもいいと思っていたし、逆に絵がいくらきれいでも話がイマイチならダメだと思っていたのですが、山田さんによってそういう「ストーリー至上主義」みたいな考えを覆されました。いや別に山田さんのまんがが中身がないという意味ではなくて(笑)。「絵を見ているだけで満足してしまうまんが」というのもあるのだなあ、ということをこの時初めて知ったのだと思います。



山田さんの絵の魅力(特に初期の頃の)は「余白の美」ではないかと思います。過剰に描き込むのではなく、無駄な線は省いた上での繊細さ、カッコよさ。妖しく微笑む美形のキャラクター達。「こういう絵が描けたらいいなあ」と心の底から思い、何度も真似して描いたものです。と言っても模写する画力はなかったので、上に薄い紙を置いてなぞっただけですが(笑)。


ストーリーの方は、作品によって扱っている題材がかなり違うのですが(大正浪漫的なものから近未来SFものまで)、ファンタジー・幻想・不可思議な世界を描こうとしている点では共通していると思います。あと意外とギャグが多いのも特徴かも。絵があまりにもハイセンスだと緊張を緩和したくなる誘惑にかられるものなのかもしれませんね。



今だからこうやって冷静に(?)分析することもできますが、当時は単純にミーハーに好きでしたね、山田章博さん。彼のまんがに出てくる「小悪魔(魔法使いの弟子)」というキャラクターに惚れてしまい、更にそのキャラを山田さん自身にだぶらせて二重に萌えていました(笑)。もともとメガネキャラには弱かったのですが、山田さんの作品によって更に「メガネ萌え属性」を強化されたふしがあります。あと「山田章博」という名前そのものも大好きです(字面がいいと思いませんか?)。


その昔東京三世社から「山田章博&ひさうちみちお大全集」という本が出ていたのですが、インタビューや対談(なんと森脇真末味さんとの対談も。ページの都合でほんの少ししか載っていないのが残念)、エッセイ、そして仕事部屋の写真が載っておりまして、ミーハーなファンにとっては実に嬉しい内容でした。レトロなお部屋の様子を見て「はー、やっぱりこんな雰囲気の中で描いていらっしゃるのね…」とうっとりしたり。しかし当時既に結婚なさっていて、インタビューの中で奥さんに話しかけているのを見てあっけなく失恋してしまったことも今ではいい思い出です(アホですな)。



ここ数年日本エディターズ等から昔の作品がかなり復刊されているので(初期単行本には未収録の作品もかなり含まれている模様)、今から読んでみたいという方にとっては恵まれた状況ではないかと思います。個人的には初期の作品がおすすめです。(02.9.15)