「ボクの模型棚」

 
「M3 LEE Mk.1」

1/35 TAMIYA M3 LEE



Lastupdate:2006/01/22

【ご注意】
当サイトの情報内容は、予告なく変更されることがあります。
また、このコンテンツ制作者は、当コンテンツの完全性、無誤謬性を保証するものでなく、当コンテンツに起因するいかなる損害の責も負いません。

■ あな恐ろしや、「二階建」中戦車(倶楽部録 2006 1/21から再録)

チンタラ工作していたイギリス軍仕様の「M3 LEE Mk.1」がようやく塗装まで漕ぎ付け、完成しました。てか当初目論んだ「多国籍軍的フィギュア工作」はまだこう着状態なのですけれど、取り合えずUPしてしまいます。ふぅ〜っ!

大戦初頭、フランス戦で完敗し、ヨーロッパから追ン出されたイギリス軍は、損失した兵器や軍需物資の供給先を、豊かな工業力を背景にしたアメリカさんに求めたわけです。当初イギリスさんは「既存の自国巡航戦車をデトロイト辺りの機関車製造工場で大量生産して...」と強かな野望を秘めていたそうですが、アメさんはこれを一蹴!「これでも使いなはれ」と宛がわれたのが「M3中戦車」だったそうです。これは当時戦車設計においては国際的流行であった(であろう)多砲塔戦車の流れを汲んだ運用思想の古い車輌で、車体にじかに主砲を装備していました。イギリスさんは「不恰好やなぁ〜。」と。「せめてお宅さんのM4中戦車にしてくださいな」と。当時「M4 シャーマン中戦車」はまだ最終設計の段階だったそうでして、差し迫った需要を満たす暫定処置の範疇で、渋々この「M3中戦車」を発注していったんだそうです。



一概に「戦車」と言えども、運用する国民性には違いは伴うようでして。英軍戦車は無線機を砲塔内部に〜戦車長の手が届く範囲に配置するんだそうです。この為に「M3中戦車」は砲塔を再設計・大型化しました。これが英軍仕様車輌「M3 グラント」です。工場生産ラインの混乱を防ぐために今までの小型砲塔「M3」を米軍仕様車輌「ジェネラル・リー」と呼んで差別化を図りました。この「ジェネラル・リー」とは、南北戦争総司令官であり、後年ワシントン大学の学長を勤め上げ、未だ南部では敬愛と共に偶像視されている“ロバート・エドワード・リー”に因んで命名されたんだそうです。

後に「米軍装備なら、なんでも後払いで良いヨン!」といった武器援助法(レンダリース法)が米国議会で可決・制定されました。このため米軍標準仕様の小型砲塔「M3 リー中戦車」もイギリス軍に供給されるようになりました。アフリカ・第二次エルアラメイン会戦を経て、対日戦に備えてオーストラリアに送られた後、島伝いの南太平洋戦域や、ビルマ・インドといった極東戦域にも配備されるようになりました。〜今回ワタシが作ったのはこれなのでした。(超マイナー)




ビルマ戦線に送り込まれた「M3 リー」はイギリス軍とインド軍に運用されました。外観的には、車長用機関銃キューポラは撤去され、「グラント」用のハッチが装着されています。これはジャングルで運用する〜、張り出した枝に干渉しない為の処置なのでしょうか?あるいは後部に張り出された無線機アンテナ(真鍮線0.6mm)に干渉しない処置なのでしょうか?

【改造箇所】
● キューポラ・ハッチは、1/35TAMIYA「M3 グラント」から。
● リア・パネルは、1/35TAMIYA「M3 グラント」から。
● 転輪はプレス鋼製の物をドラゴン社「M4A4」から。
● ドライブ・スプロケット・アイドラー・ホイールは、1/35TAMIYA「M4シャーマン」から。
● 発煙筒発射器は、アカデミー1/35「M3 スチュワート“ハニー”」から。
● 車体前面・上面雑具箱等は、イタレリ1/35「カンガルー」から。
● 履帯はモデル・カステンSK-44「M4シャーマン戦車用T-49型履帯(可動式)」を履いています。




また、「M3中戦車」系列の最大の特徴である主砲。キットの武装:主砲は「M2」31口径75mm戦車砲をモデライズしていますが、1/35TAMIYA「M4シャーマン」の「M3」長砲身75mm戦車砲に換装し直しました。そもそもイギリス軍がこのブサイクかつ不恰好な戦車に価値を見出した理由とは、英軍製戦車の戦車砲砲弾は、何と“徹甲弾しかなかった”そうなのです。多種の弾種が用意されていたアメリカ製の75mm砲は、アフリカの闘いにおいて戦車兵の脅威であった88mmや75mmといった敵対戦車砲を「榴弾を用いて遠距離から討ち取る」事が可能でした。また鹵獲したドイツ75mm砲弾を利用して、自家製徹甲弾を作る芸当も出来たとの事。
この死角が多くて図体ばかりでかいヘンテコな戦車を、英軍が「砂漠の守護神」とまでのたまった理由は、どうやらここいら辺に有りそうです。

しかし、この他にも「M6」53.5口径37mm戦車砲×1、更にはブローニング1913A4機関銃が正面に二門(携行機関銃弾薬数 9200発!)ついていますから、なんともアメリカ的な“豪勢な作り”と言うか?“ゴージャスな作り”と言うか?でもその割には戦車地雷など踏むと、リベット留めで構成された車体がバランバランになってしまう事から、強いんだか弱いんだか皆目分からない車輌です。(笑)



 ビルマ戦線において日本陸軍は、インパールやマンダレー、タウングー、ペグーといった戦域で「M3 リー」と本格的に対峙したそうです。敵対した日本軍将兵は、降り注ぐ75mm榴弾もさることながら、この戦車のあまりの巨大さに驚き「二階建」と渾名したほどでした。

(※) 内面図資料が出てきましたが、トランスミッション部の上の階に操縦席があるように見受けられるので、どうも「三階建」ぐらいの感じがします。(笑) 
本来、航空機用エンジンである、コンチネンタル R-975-C1 星型空冷ガソリン・エンジンを何も考えずボテッ!とただ乗せた感じが、如何にもアメリカさん的発想の凄さ。
 最高出力:350ps/2.400rpm。最高速度:41.6km)
 

以前取り上げた「もう一つの陸軍兵器史 知られざる鹵獲兵器と同盟軍の実態」藤田昌雄著 光人社刊 定価(本体¥2.200+税)によると、比較的早い時期から「M三中戦車」と認識し、この戦車の諸元はかなり正確に把握していたみたいです。コレと対するために、従来の「九四式三十七粍対戦車砲」から「重速射砲」「決戦速射砲」などの呼称を冠した「一式機動四十七粍戦車砲」の緊急増産と部隊配備を行いました。
しかし配備が本格的に始まった頃には、「M三中戦車」は標準型から限定標準型、やがて旧式装備兵器と等級が変更され、変わりに主力戦車として新型「M四中戦車」が取って代わってしまったとの事ですので、より撃破が困難になってしまいました。(M4はM3を改造したマイナー・チェンジ版と誤認していた感があり、更にはM4〜鋳造車体型を“新型”と改めて区分していた。)




小型砲塔には、独軍でいう“ピルツェン”のような突起が三箇所存在します。資料が手元にないのですが、起重機か何かで砲塔を吊り上げる際にアイボルトを装着して、ワイヤーか鎖で吊り上げたのかもしれませんね。キットの方は砲塔にピンバイスで大きな穴を穿ち、プラ棒を通して接着固定。乾燥後切り取ってポリパテで溶接痕を再現しました。鋳造砲塔は「サハラ戦車隊」などの映画を丹念に観ますと、だいぶ鋳造肌が残っとるようです。ただしロシア戦車の様に極端荒っぽい処理ではないので、工業用ラッカー・シンナーを平筆で塗りつけ、真鋳製のかなブラシで引っ叩いて表面を荒らしました。乾燥後、紙やすりで荒れた起伏をなだらかに整えました。また事後になって資料が出てきましたが、鋳造する際、砂型には管理番号(天地不明)が振られていた可能性があります。手近の物で何とか再現すると、格好いいかもしれません。

小型砲塔後部には雑具箱が装着(ステーに溶接?)されるようです。Vのレジン・キット「Tank tool&Equipment Boxes」の中にこのプレス・パターンの雑具箱が組み込まれていますが、大型店に注文したにも関わらず、ついに入荷しませんでした。(泣) 輸入物は時期物商品なので、ロッド生産時に優先順位が巡って来ないと、結果市場には出回らないそうです。これを当てにして車体上部でフィギュアを数体配置・展開させようかと思っとりましたが、すっかり頓挫してやる気を失くしてしまいました。まあ気が向いたら作ろうと思っとります。

また車体上面×2(車体左上面と75mm砲上面ハッチの裏側)、 砲塔上面×1と3箇所、マッシュルーム型ベンチレーター(排煙器)が存在します。搭載砲が多いから、砲煙の強制排気は運用上必需だったのかもしれませんね。(南方作戦時などさぞ車内は暑かったであろう) 今回、人身御供となってしまったドラゴン社「M4A4」から。(泣)
車体側面の大型ハッチは、蝶番付近に砲撃が炸裂する(日本軍御得意の弱点射撃)と、衝撃でハッチが脱落してしまう弱点が露呈したそうなので、現地対策として溶接止めが実施されたそうです。エポパテを紙縒り状に捻って隅面に押し付け、爪楊枝を削った物で溶接痕をつけ、乾燥後カッターなどで角を揃えて整形しました。
開いたハッチの内側は資料がないので、デッチ・アップですが作りこんであります。(キットはつんつるてん)特に75mm砲上面ハッチの裏側は、頭をぶつけても怪我をしないように□型保護パッドを用意しましたが、後の資料では凹型でした。(笑)

発煙筒発射器の取り付け位置は随分悩みましたが、現状位置に落ち着きました。ワタクシ的には砲塔右側面に装備したかったんです。そうすれば上部ハッチから手を伸ばさずとも、砲塔右側面配置の鎧窓を開ける、もしくは車体75mm砲上部ハッチから手が届き、引き金に指が掛る。(笑)ところがね。そういう風に装着すると、砲塔12時の方向の際、砲上部ハッチ板が発射器下部に干渉して完全に開かなくなってしまう。側面ハッチが溶接止めされているので、これでは緊急時、脱出ができない。(笑)そこではたと作業の手が止まり、2ヶ月ぐらい真剣に悩んでいたんです。(爆)

ライトはグリグリ刳り貫いてクリアパーツ・レンズをはめ込みました。また配線類も細い真鋳線で再現し、車体から引っ張ってあります。ただね。ライト・ガードの削りこみ。今回自信がなかったので敢えて割愛。m(_"_)m御免!だってシャーマンと同じ型と思っていたら、思いっきり違うのよぉ〜。失敗したら部品のスポット限定生産品は取り寄せが難しそうだし、エッチング・パーツの取り寄せはまた時間が掛りそうだし...。



今回の塗装。英軍の極東(CBI)戦域標準塗装色は「ジャングル・グリーン」だそうでして、これは「濃緑色」や「暗緑色」といった緑の色合いの濃い色だったそうです。ですが、そのほとんどは生産工場から出荷された「オリーブドラブNo.9」のままでいいんだと。(笑)
今回はMr.COLOR 330「ダーク・グリーンBS381C/641」という英空軍機色も候補に挙がったが、結局は136の「ダーク・グリーン(2)」を基本塗装に使用しました。少し明度の明るい色も用意しましたが、思いの外白っぽく塗りあがったので、まるで粉吹いたような仕上がりでして。レンドリースでロシアにいった車輌のようになってしまいましたとさ。(泣) 

時代の流れとは逆行して、チッピングは“銀”です。てか、仕事で弄っているから何となくいつも思うのですが、そもそもハイ・テンション鋼なんて代物は酸素の含有量の多い軟鉄とは違って、塗装皮膜を押し上げてそんなに短期間では錆は浮かないはず。(まっぴら的思い込み) 深層心理的には昔のバーリンデン=“神”を意識したかなぁ〜。(苦笑)
例によってエッジは鉛筆2Bガリガリ擦りこみ。

砲塔のマーキングは竜騎兵近衛第3大隊のものだそうでして、デカールはアカデミー1/35のM3スチュアート“ハニー”から持ってきました。OVM(車外装備品)。鉄部は概ねフラット・ブラック(若干赤を混ぜるとよろし)を使用しましたが、玉掛けワイヤー等、鉛でかしめた部分には、若干メタル・コートなどを使い、艶消世界にあって時々ギラリ!と“押しと引き”というか?メリハリをつけてみました。足回りの汚しは数色のパステルを混色。溶剤に混ぜ込んでベタベタ塗って、凸部は後に拭き取り。



Copyright (C)2002-2009 MAPPIRA GOMEN. All rights reserved.