00.00.はじめに

このサイトに書かれている情報はちょっと変わっている。
図を使って説明することもしないし、読者に対して、決められた動きを強いることもしない。もちろん、美しく動くためのコツが寄せ集まっただけのサイトでもない。

必要なのは身体に対する洞察力

このサイトの中でどのように「身のこなしをキレイにする方法」を提示しているかというと、たとえば、次のような身体に対する洞察が書かれている。

『身のこなしを美しくしようとするとき、忘れてはならないのは、あなたの両腕の存在だ。
肩から指先までを含む読者の両腕が、決定的に、身体の動きやバランス、その美醜に影響を与えているという事実だ。

いったい何のことを言っているのかわからない、という読者もいるかもしれない。
ぜひ、自分の腕が身体の左右に常にぶらさがっていること、そして、その肉の重さを膝や腰、背骨が負担しているという点に注目してみてほしい。

あなたの両腕がその位置や動きを変えるたびに、負担のかかり方は変化する。身体は無意識に、全体のバランスを崩さないよう修正を加える。 腕の振り方やその動きの方向は、あなたの歩き方や姿勢に大きく関係してくる。

このことはちょっとした動作を行うことで実感できる。
ためしに鏡の前に立って、腕を上げ、両方の手のひらを頭の上に置いてみてほしい。指を組み、頭に腕全体の重さを預けてしまうような感じで。

すると、背中のラインが劇的に変わる。そのまま、どんな動きでもいいが、身体を軽く前後に揺らしてみてほしい。上半身の筋肉が機敏に反応するのが感じられるはずだ。背骨がいつも以上に良く回転し、重心の移動がスムーズになる。

この自由な感覚は、あなたの身体が非常にシンプルなバランス環境を得たために起こる結果だ。両腕の重みを、身体の軸の真上に移動させたことで、思うように身体を動かすことができるようになったのだ。

言いかえると、普通の状態では、あなたの両腕は全身にとってかなりやっかいな存在なのだ。頭や足と比べて、両腕はひんぱんに身体の中心軸から大きく外れた位置へ移動する。多様な方向へと動く。
その動きに対して背中や腰の筋肉は、均衡を保つためにいちいち反応しなくてはならない。腕は、全身のバランス制御を複雑にする存在なのだ。

このことは、腕の位置や動かし方を工夫して変化させるだけで、あなたの身体は即座に、良くも悪くも変わり得る、ということを意味している。』

長くなったが、このサイトの最大の特徴は、身体をちゃんと見ようとしている点にある。美しい身体の、その奥にある仕組みを、成り立ち方を、自分の目で見ていこうとしているところにあるのだ。

鏡を見よう

筆者の提案する訓練法には名前が付いていない。それはトレーニング自体の内容が極めてシンプルだからだ。
実際、

「鏡の前で、自由に身体を動かして観察する」

というだけの訓練法なので、名付けるまでもない。形や順番を定めた「型」のようなものもないし、復唱したくなるような規則もない。
トレーニングの中で、どのように身体を動かすのかを決めるのは読者自身であり、私が手足を取って詳細な動作を指示をすることはない。

筆者が訓練法の中身について言いたいことは、本当に単純なことだ。
もっと鏡を見よう、もっと人の動きを細かく意識的に見よう、というただそれだけのことだ。

それはたとえば、ほんの10分でいいから、裸(じゃなくてもいいけど)の背中を鏡に映してみて、いろいろ好きなように動かしてみてほしい、ということだ。自分の、今そこにある、生々しい身体の動きを観察すること。それが何よりも効果的な作業なのだということ。
自分の身体を見る。取替えのきかないたった一つの自分の肉体の動きを見つめ続ける。そしてそこに少しずつ何らかの影響を与え、変化を起し、その結果を見届けること。

どのような意識を持って、鏡に映る自分の動きや街行く人々の身体の使い方を見ればよいのか。筆者の文章に価値があるとしたら、その洞察の仕方、身体の認識の仕方について詳細に述べているからだろう。

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