06.06.美しい歩き方 きれいな歩き方

さて、ここでは「きれいな歩き方」について述べたいと思う。
きれいに歩く人に共通しているのは、何と言ってもその腰まわりの美しさだろう。腰の使い方がうまい。腰が安定しているから、その背筋の伸び方も、大きな歩幅も、なにげない腕の振り方も魅力的に見える。ただ胸を張って歩いても美しくは歩けないし、意識的に大股にしてみてもそれほど効果はないのだ。


ではどうしたら腰まわりを美しくできるだろうか。美しい腰の条件とはどのようなものだろうか。
私は、ひとことで言えば、「バランスが崩れない」ということだと思う。「コントロールされている」と言いかえてもいい。 街に出て、目の前を歩いていく人々を良く観察しよう。そしてあなたにとっての美しい歩き方について考えてみよう。
あなたにとってとは、簡単に言えば、歩くことであなたのバランスが崩れない、という意味だ。
立ち姿はそれなりにきれいなのに歩く姿が醜い、という人はいっぱいいる。その逆、歩き方はきれいなのに立ち姿が美しくない、という人を筆者は見たことがない。歩くという動作は、ただ立つよりもバランス感覚を必要とする行為なのだ。 

もしあなたが、立ち姿ならそこそこ自信があるが、美しく歩くのはむずかしい、と感じているとしたら、あなたに必要なのは、歩きながらでも自分のバランスを保つ技術であり、腰を上手く使うコツだ。

「関節」を見る

美しく魅力的に歩く方法は、その内容だけでワークショップが開かれ、一冊分の本が書かれているくらい複雑なものだ。モデル・ウォーク(キャット・ウォーク)のことを持ちださなくても、読者の多くはその難しさを十分に知っていると思う。その分、「きれいに歩きたいぞ」という思いも強いのではないだろうか。

ここまでの文章を読んできて、「関節を通して人を見る」とはどういうことか、少しはわかってもらえたと思う。今まで、単に「美しい」とか「醜い」くらいにとらえてきた他人の身体が、もっと違って見えるようになったらしめたものだ。

美しい動作を目の前にした時、「あの関節の使い方はなかなか良いな」と思えるようになってほしい。「特に腰の軸がきまってるな」と細かい部分に目がいくようになってほしい。その時感じたことは、あなたの身のこなしをキレイにするヒントだ。

あなたと彼・彼女の総体的な身体特徴には、ほとんど互換性がない。しかし「関節」単位で解釈することができれば、あなたはそれをてことして使って自分の身体に変化を起こすことができる。

街角で暇な時に目の前を歩いていく人達を眺める。雑路で人の関節に注目するのはとても簡単だ。本当にさまざまな身体があなたの前を移動していく。それほどの時間をかけずに美しい歩き方をしている人が目に入るはずだ。きれいに歩く人を目にすることは、それ自体楽しく心地良いものだ。

例えば腕。 腕を大きく振る人もいれば、ほんの少ししか動かさない人もいる。単に、大きく振ればきれいに見える、そう言い切れないのが人の動きのむずかしいところだ。

大きく腕を振っても、そのせいで全体のバランスが悪くなってしまっている人がたくさんいる。腕の役目の一つは、足の動きによって前後左右にブレる重心を相殺するのことなのだが、逆に腕の動きがブレを生みだしてしまう人。

腕を振る方向も実に様々だ。進行方向に平行に振る人もいるし、身体の前面へ巻き込むように振る人もいる。それとは逆に、身体から離れる方向へ振る人もいる。

「肩を切るように歩く」という表現があるが、これはイメージするよりもずっとむずかしい動きだ。回転軸がよほどしっかりしている人でないと、肩まで回転させつつ美しい歩き方はできない(俳優・渡部篤朗はこれが本当に上手い)。
それよりは肩の位置をほとんど動かさないように気をつけて、つまり胸を開いた状態のままで、しっかりとひじを背骨のラインよりも後まで持っていくような腕の振り方をした方が無難だ。 振る方向も、身体の前面に巻き込むことなく足の動きの方向と同じにする方が、見た目がシンプルで自然だ。

まずは下半身から

さて、今あなたが「きれいな歩き方をしよう」と思うとき、いったいどこに一番気を使うだろうか?
足首、膝、腕、胸の張り具合。背骨をスッキリと伸ばす。首の角度、腰の角度。いろいろある。おそらく、その気にする場所はあなたが鏡の前に立って、立ち姿勢をチェックする場所と同じなのではないだろうか。

猫背の人はきっと鏡の前でも歩きながらでも背筋や胸のあたりに注意する。普段から肩が上がってしまうことを気にしている人は、歩く時にも肩のことを気にしている。

しかしここでも最も気にしてほしいのは腰であり、膝であり、足首だ。上半身を綺麗にするためには下半身にまず注目した方が良い。下半身を安定させてこそ、上半身は修正しやすくなるし、下半身がおろそかなまま上半身を綺麗にしても、客観的に見て美しい歩き方はできない。

一般的に腰を中心とした動きは美しいと言われている。特にスポーツや職人の世界では腰の入った動きを良しとする。確かに身のこなしの美しい人はほとんど例外なく腰がきまっている。滑らかに動き出し、吸い付くようにピタリと停止する歩行技術には、腰から歩くイメージが不可欠だ。

しかし、腰を使って歩くとか腰を入れて歩くという言葉は、言うのは易しいが実際に行うのは難しい。「いったいどうすれば、腰を使って歩けるのかよくわからない」という読者もいるだろうと思う。
ただ単に腰を前に出して歩いても不自然なだけだし、腰に力を入れれば良いという問題でもない。そんなに簡単に歩き方は変わってくれない。それは事実だ。
基本的な動きであるだけに、各個人の癖はしっかりと根付いている。意識的に気をつけたくらいで、映画に出てくる俳優たちのように美しい歩き方はできない。

それは筆者も身にしみて経験してきた。むしろ、なにかと猫背ぎみになってしまう筆者の身体は、歩く時に最もその本質をあらわにしてしまうような気がしていた。
現在も、筆者はそれほど自分が美しい歩き方をしているとは思っていない。しかし、少なくとも猫背にはならない。とりわけきれいなわけでもないが、キタナイ歩き方はしていない、その程度のものだ。

ささやかな改善とはいえ、歩き方を変えることができたのは、次のような考え方ができるようになったからだと自分では考えている。

「歩く、つまり、主に下半身を使って前方に移動する動きの中には、上半身のバランスを微妙に狂わせる何かがある。」

「それでもどうにか歩くためには、その何かをどこかで吸収する必要がある。筆者の場合は無意識に背骨がそのバランスを吸収する役目を負っている。どうしてかはわからないが、猫背の方がバランスは安定する。具体的には、背骨を前方向に傾けることで均衡を保っている。」

「そのバランスを吸収する部分を、背骨から別の場所に移すことは可能だろうか?」

上半身を楽にするために腰を使う

試行錯誤の結果、筆者は腰でバランスをとることを学んだ。腰とそれから股関節を可能な限り十分に使うことで、上半身を自由にした。背骨が担っていた役割の一部を腰に負担させることにしたのだ。

軽く腰を回し、前足を普段よりも遠くへおくる。股関節をしっかり使って、後足をいつもより後方に残す。座ることと同様に、上半身を操作するのではなく、下半身に働きかけることで、上半身を、猫背を、改善したのだ。

多くの場合、きれいに歩けない理由は下半身にある。下半身が上手に使われていないから、それをフォローするかたちで上半身に歪みが出てしまうのだ。使われていないのは足首かもしれないし、膝かもしれない。筆者の場合のように腰かもしれない。

筆者は街でよく、かつての自分と同じような歩き方をしている人を見かける。腰を使わない歩き方。「死んだ腰」。後姿、特に腰まわりが何だかドヨンとしている。足の運びの起点が低い。のっぺりとしたお尻。表情のない腰。美しくない歩き方の典型だ。腰を使わないためにストライドが小さく、上半身の自由度が低い。

腰をちゃんと使うとは、腰を振るのではなく、腰を回転させるということだ。猫背の人がきれいに歩けるようになるためのコツを一言で言えばこうなる。
腰を寝かせず、倒さず、背骨から続くラインを保ったままで、ほんの気持ち程度に腰を回転させる。腰が回転することで前足と後足の両方の動きがスムーズに、そして大きくなる。

軸が背骨のラインと重なっていれば、そして適度に腰が動いていれば、猫背の人は自分の上半身にかかっていた無駄な力が抜けていくのを実感できると思う。
それは、腰を使うことによって歩幅が広がり、前後に対するバランスが安定するからだ。猫背は前後のバランスを無意識に保とうとしているわけだから、下半身が安定さえすれば改善はそれほどむずかしくない。腰が立ち、背筋のブレや歪みがなくなり、自然と腰から歩くようになる。

しかし、今まで腰を使っていなかった人が腰を回転して歩きはじめると、左右へのバランスが崩れてしまうことがある。身体が横に振れてノシノシ歩くような感じになってしまう。

歩くという行為の本質は、左右の足に、交互に、体重を(すべてではないが)預けることにあると言ってもいいかもしれない。
考えてみれば、複雑で高度な作業なはずだが、あなたの身体はすでにその体重移動をうまく吸収する感覚を持っているはずだ。

もし、腰を使って歩きはじめたことで、身体が左右にブレるとしたら、それはバランス感覚が新しい変化に対応しきれていないか、腰の回転軸がきちんと定まっていないからだ。せっかく猫背が治っても不自然な歩き方になってしまうのはもったいない。

どうしても必要以上に身体が上下してしまったり、左右に揺れてしまうというのなら、膝と足首をサポート役として使うことをお薦めする。左右交互に移動を繰り返す重心を、膝と足首を柔らかく曲げて吸収することを意識すれば良い。腕の振りを意識することもスムーズにスマートに歩く助けになる。

美しい歩き方をしている人は全体のバランスが良い上に、後ろ足がしっかりと後方へ蹴り出され、歩幅が大きく、安定感がある。ラインも美しいが、安定した下半身が弾みのある動きを可能にしている。

もちろん、歩幅がそれほど大きくなくても美しく歩くことはできる。それでもしっかりと後ろへ足を蹴り出す要点は変わらない。

少し細かい点に注目すれば、後方から前方へ足を運ぶ時に、膝をどのくらい曲げるか、足首をどのくらい伸ばすか、ということも人ぞれぞれなのがわかるはずだ。後ろから見て、足の裏がしっかりと見える人もいるし、ほとんど見えない人もいる。

足首と膝を振り出す方向も、美醜に大きな影響を与える。外側にしろ内側にしろ掻きまわすように振り出す動きはやはりきれいには見えない。キチンと進行方向にブレなく足を運ぶことができている人は意外に少ない。

こうして人を見ていく中で、本当に大事なことは、それら他人の「関節」の動きを見て、自分の膝や足首や腰に、腕や肩の動きに、新しい動きを導入しようと思えるかどうかだ。

「ああやって、足の裏が見えるくらい足首を使って歩いてみよう」と思えれば、あなたの歩き方はほんの少しではあるが洗練度を増す。正確に言えば、洗練された動きに近づく可能性が増大する。

「洗練された動き」を目指すには、多様で質の高い(つまり問題に対してより本質的な)選択肢を増やすしかないのだ。

そして、その中からどれを選ぶのか。

次のページからはこの問題をあつかっていく。 鏡を使って、自分の動きを見る。様々な動きを試す。 他人を見るのと同じように、あなたは自分の身体からさまざまな身のこなしのヒントを得るはずだ。そして同じように、自分の動きの可能性は無限だ、と実感できるはずだ。

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本間晶のショッピングコラム

■ オーブンレンジ 「ビストロ」

ピザやパンを焼きたい、ブラウニーやシフォン・ケーキを作りたいという思いはずいぶん前からあった。
ただ、手ごろな値段のオーブンレンジは、火力不足や焼きむらがあるらしいと聞いていたので、なかなか購入に至らなかった。

水で焼く、というCMでシャープがヘルシオを売り出す中、このナショナルのビストロの評判がとても良いことを知った。
火力、使い勝手、価格、丈夫さ。とにかく使っている人たちがこぞって褒めている。ナショナルってこんなに支持を受けている会社だったんだなあ。気づいていなかった。

購入して正解だった。

レンジ機能は普通でいいから、オーブンは平均以上のもの、という希望をきちん満たしてくれている。いや、レンジの温めも速いし、オーブンの能力は期待以上。何よりも操作性が良い。直感的に使えるし、プログラムされた調理法が豊富な上に自由度がちゃんと確保されている。ここでちょっと温度を高くしたいとか、あと少し時間を伸ばしたいといった微調整が簡単に出来る。
火力十分。かりっと軽く焦げた手作りピザを今日も作ったところ。

おすすめです。


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