手帳あれこれ


 長年いろんな手帳を渡り歩いてきた私が、それぞれについて寸評などを。

【綴じ手帳】
 能率手帳や高橋の手帳など、ごくオーソドックスな手帳群を仮にこう呼んでおく。サイズはせいぜい文庫本までの、ポケットサイズを前提とする。私は7〜8年使った。
 結論から言うと、個人のスケジュール管理を主たる目的とするなら、この手の手帳が最もよい。いつも持ち歩けるし、すぐに取り出して確認できて書き込みもできる。この利点ばかりは何物にも換えがたい。しかしながら、微妙にダサいし、何でもはさめるシステム手帳に比べると機能的に見劣りするのでためらう向きもあるようだ。それでも、旅行のときの荷物同様、「小さな手帳で十分」という方がはるかにスマートに見えるというのは気にとめておいてもいい。
 内容的には、見開き1週間か2週間のものが使いやすいと思う。見開き1ヶ月ではよほど小さい字が書けないときびしいし、一日1ページだと分厚くなりすぎる。国産手帳が気に入らないという人には、クオ・ヴァディスかモールスキンのダイアリーがいいと思う(でも国産が一番)。

【システム手帳】
 ファイロファクスに代表される、便利(そう)な手帳といえばこれ。私は、30mmリングのごついのを十余年、10mmリングの薄手のを三年ほど使った(いずれもバイブルサイズ)。これはスケジュール管理以外に、すべてを1冊にまとめていろいろな情報を管理したい人向けである。TODOや金銭出納やプロジェクトや議事録含めて、何でも入れておけるし、スケジュールにしてもさまざまなレベルでの管理が可能である。近ごろ注目されているクマガイ式夢手帳やフランクリン・プランナーもこのうちに入る。
 それと、これはストック情報を管理するのにも適している。むしろそちらが主であるという人も多い。たしかに業務関係や業界関係の参考資料を現在形で更新しつつ、ふんだんに持ち歩けるのはありがたい。
 また、サイズ的にはバイブルサイズが鉄板。ミニ6穴は小さすぎて勝手が悪いし(私は3ヶ月で挫折)、A5サイズは手帳としては大きすぎる(各種の資料を整理しながら綴じるのには便利)。
 しかしながら、10年以上使ってこんなことを言うのもあれだが、よほど本気の人以外あまりおすすめはしない。そもそも大きすぎる。ポケットには入らないし、分厚いのはカバンの中でも納まりが悪い。第二に、最初のうちは夢も膨らんであれこれのリフィルに手を出しても、結局スケジュールと普通のノート用紙くらいに落ち着く。たくさんの資料が持てて便利でも、そう頻繁に参照するものではない。そうなると、「なんでこんな重いもの毎日持ち歩いてるんだ」という疑問まであと一歩である。
 たくさんのカードや小物もまとめて持てるし、使い込んだ革のカバーは、たしかにかっこいいんだけど。

【PDA】
 ソニーのクリエ(N-750)を丸4年近く使った。これは確かに便利である。PCにあるものならどんなデータでも持ち歩けるし、即座に参照もできる。資料やスケジュールをキーワードで検索するなんてこともお手のものである(あれいつだっけ、あれどこだっけに対する検索機能はどんな手帳にも勝る)。音楽だって聴けるし、通信端末をつなげばウェブも見られるしメールも扱える。おまけにゲームまでできる。ちょっとしたメモなら書き込みも苦にならない。たいていポケットサイズで小さいし(変に高機能なものは除く)。
 これは本当に便利である。ずっと楽しんで使わせてもらった。それはそれは便利なのであるが、実を言うと、これもPCとのシンクロが趣味の域にまでなってるような人でないとおすすめはできない。スタンドアロンで使っても魅力は十分の一くらいしか感じられないだろう。
 それと、一覧性や書き込みの気軽さでは、やはり紙の手帳にははるかに及ばない。PDAも見やすい使いやすいと強弁する人も多いが、これは紙と並行して使ってみればよくわかる。それに、落とすと壊れるとか、尻ポケットは鬼門だとかというのも減点対象である。
 じつは、今年の春まで2年ほど役所のシステム構築の関係で、大手のSEさんたちといろいろつきあいがあったのだが、みんな小ぶりな綴じ手帳を使っていて、せっかくクリエを自慢して喜んでたのになんかへこんだ覚えがある。

 あと、私はキーボード主体のシグマリオンIIIも使っているが、これは手帳としての利用ではないのでここでは触れない。サイズ的にはバイブルサイズのシステム手帳とぴったり同じだし、MSOutlookとシンクロするし、起動もスタンバイも一瞬なので手帳として使えるような気もするが、紙とボールペンの手軽さには遠く及ばない。

【デスクダイアリー】
 A5やB5のノート型のやつ。A5のシステム手帳もここにはいる。
 これはたくさん書き込めて便利そうだが、その名の通り持ち歩くものではない。かばん持ちを連れ歩けるような人なら別だが、そうでないなら手帳とノートを別に持つほうがずっと現実的だろう。

【超整理手帳】
 以前、クリエの合間に3ヶ月ほど使ったことがあって、今年度復活。
 じつをいうと、これは手帳ではない。ただのA4用フォルダである。A4を四つ折りにすればなんでもはさめるので、仕事の資料から何から、全部縮小コピー両面コピーを駆使してはさんでおくことができる。切る手間も穴をあける手間もない。
 メーカーは、先のほうまで見渡せるとかいいながら蛇腹式のスケジュールリフィルを推奨しているが、あれは案外使いにくいので固執する必要はない。
 私は自作のスケジュール用紙とメモ帳(A5のノートを縦に切ったやつ)を中心に、資料をあれこれはさんである。
 実は、この春職場が変わって、月間スケジュールだけでも自分のもの以外にグループ別や事業別に複数枚持ち歩く必要が出てきたのでこれにしたのである。そんなものいちいちシステム手帳に書き写してられないし、PDAに取り込むのも面倒である(縦30日横20人のローテ表などそのまま持つに如くはない)。
 普通の長財布より幅は細いし、いろいろ入れても厚みは1センチほどだし、即座に気軽に書き込めるし、1ページがA4丸々なので一覧性は天下一品だし、大量の電話番号簿でもカレンダーでも青空文庫のプリントアウトでも、簡単に自作して穴あけもなしにはさめるし、とりあえず私の現環境での利便性では非の打ちどころがない。
 ただ縦長で不細工なんだよなあ、これ。すくなくとも一生使いつづける気にはなれない。ファイロファクスもクリエも、気に入っている間は「一生これでいくかも」と思えたのに、超整理手帳だけはまったくそんな気にならない。それだけはすごい難点だと思う。

(12/02/2005 up)


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