三段組
「沖縄文芸年鑑」2000年12月
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★(紅葉)

なるほど、
エンピツが轟音たてて、どこをよぎっていったって?
カーソルじゃ、
そうはいくまいって、スクリーンが、
言ってたって?

雨は、
雲じゃない、水溜まりじゃない、まして、
白玉の露など。
ただ、切り裂くもの、切り裂く、無数の線によって、呼びおこし、
呼び覚まされて、浸透してくるもの。
そう、キャベツが、言ってた。

ワタシはうつし。
ワタシはあやかし。

生まれてくる、箱がいってた。
流れていく、細胞がいってた。


★(星)

アタリ、ヨッカズ、ヒコ、ゴンべ……
ショウコちゃん、ヤエちゃん、カコちゃん……
みんな、みんな、星だった。
みんな、みんな、星のような、ものだった。


「なつかしい、ひとの名前は、
この世の、ユニバース。
ちいさな、ちいさな、ユニバース」


トシヒコ、サネオ、ミユキ、ミチヨ……


「なつかしい、ひとの名前は、
この世のブラックホール、
ちいさな、ちいさな、ブラックホール」


★(河原)

夕日のにじむ、
薄墨いろの岩のうえに、
きれいなきれいな真円を重ねた、ヘビをみている。
(おそらく、そうだろう。
そういうことなのだろう。)
うす水色の、透けるような、
くちなわ。


夢からさしだされた潜望鏡のような鎌首が、
〈あちら側〉でもない、
〈こちら側〉でもない、
場所をみつめて、じっと、しずまって、いて。
みられた、この世に、
みる目の、からだごと、あらわれたような、
痛々しさが、染み渡り。


河原に、
はだしで立っている、
誰?


まがまがしい、
哀しい、
いとおしい、
その透けるような、うす水色の、
誰?


二十世紀最後の、
秋の空。
発狂寸前の
舟の、
あかり、
が、
音もなく、
にぎやかに、
ゆきかいながら。


(おそらく、そうだろう。
そういうことなのだろう。)


★(闇)

(ソンザイニ、
(ジットナガメラレテイル
(ウシロメタサ ※

…………
風をふるわせて、
光年をわたってくる、
ハニヤ、ユタカ、さんの、謎めいた〈言の葉〉が、
微光、します。
遠い、火の、
匂いにも、にて、
います。


(受信、できるでしょうか)


ケータイの、
ワタシ、
タチ。








※ 埴谷雄高「不合理ゆえに吾信ず」より、カタカナにて引用。