井上喜代司
PUNCTUM PHOTO GALLARY
「モロッコ MAROC-褐色に灼かれた大地-」写真リスト




















<モロッコ-褐色に灼かれた大地->

 褐色に染められてしまった砂漠のオアシス・ワルザザード。バスで乗継いできたワルザザードの帰路、空港から螺旋階段をのぼるように飛び立ったプロペラ機 の窓から一面褐色の大地をみた瞬間、太陽は大地をも灼いてしまったと確信した。
 スペインから地中海を渡ったモロッコ入口の港町タンジェから内陸のワルザザードまで、大地の色、すなわちその土を練って造った建物の色は、通過する町ご とにあたかもグラデーションのように変わっていた。
 港町タンジェを目前に船舶のタービンが停止した。予定よりおくれた出航で昼のコーランの祈りの時間に引っかかった。おかげで小高い丘に広がるタンジェの 町の風景を堪能させてくれ、小さなスピーカーから絞りでるようなコーランさえ我慢すれば時間が経つのも忘れることができた。ここはアフリカといいきかせな ければならぬほどスペイン風の白い建物が多い。ひときわ背の高いイスラム教の礼拝堂(モスク)だけは独特のモザイク模様を主張している。
 高速道路でもないのに、バスは砂ぼこりをあげてタンジェをあとに走った。着いたのはティトワンという小さな町で本{来のモロッコ人、ベルベル人が多く住 むという。ティトワンは、ベージュ色だった。ただちょっとくすんでいた。
そこから走ること6時間のモロッコ第3都市の古都フェズは、美しいベージュの世界だった。モロッコの都市は、千年の歴史を持つメディナ(旧市街)を中心に 発達してきた。アリの巣のように入り組んだ大迷路の細い通路をいくと、生活するのに必要なありとあらゆるモノが作られ売られている。肉、野菜、果物、家庭 用品はもちろん、羊の革をなめし染色するスーク(職人)、糸を染めるスーク、銀やしんちゅうをたたいて器にするスーク。薄暗い6畳くらいの狭い土間で9人 も10人も、カナヅチで石ををたたく石工。汗と石の粉塵とで真っ黒な顔をした10歳前後の子供ばかりだ。「前近代的家内工業」を絵に書いたような光景。モ ロッコの「モノうり」の活発なのは、昔から売り買いが盛んなゆえだけでなく、われわれの生活からは考えられない貧困にも原因ということか。                  
 マラケッシュは、モロッコ第4の都市。商業都市としてはモロッコ一番で、そのメディナの中心の広場は、大道芸や余興に集まるひとの群れで埋められてい る。フェズに負けず劣らず、マラケッシュの子供もよく働ュく。山のような荷を背負うロバの優しい目も、主人のムチに、じっと耐えているようだ。マラケシュ の建物がレンガ色に近い赤褐色ならワルザザードの土は、まさに褐色そのもの。アトラス山脈が太陽の熱気が逃げるのを遮るかのように、その標高***`メー トルの山を越えると熱せられた乾いた風景が広がる。大地のひだに、あたかもその褐色の大地に溶け込むかのようにひしめく土造りの住居。「保護色」の中に生 活を営んできたモロッコ人。「熱い太陽」をうけいれ、生きているかの印象をもつ。それが太陽の神をアラーと崇めるイスラムの最西地、モロッコか。

                                               井上喜代司

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