---男女平等政治の実現を---

中国新聞社 「中国論壇」掲載 H.12.10)

人間は女と男から成っている。一方の性だけでは、成り立たない。男女が共に相手を大切にし、協力しあいかたち造る社会=男女共同参画社会が唱えられるのもこのためだ。
 しかし現実には、それを可能にする政治的仕組みがない限り、共同参画の実現は難しい。そこで最も効果的なのがクオータ制だ。これは公的機関の議員・委員枠を男女半々近くになるよう強制的に割り当てることで、男女間に残る格差を積極的に是正する制度である

戦後、女性も参政権を得た。日本国憲法は男女平等を保障している。けれども、以来半世紀以上過ぎたにもかかわらず現在の国会、地方議会、各種審議委員会など、そのほとんどが男性だ。もしも「日本の国会議員の九割近くが女性で、半分近くの自治体に一人も男性議員がいない」としたら、何とも異常な状態ではなかろうか。こういう状態で民主主義の国といえるだろうか。お気付きかとおもうが、比率を逆にしただけの、今の日本の姿である。
 政策決定の場が一方の性に偏れば、偏った社会となり、ゆがみや問題が生じる。十四歳・十七歳の事件はひとごとではない。昨今の、幼児のママゴト遊びから、父親役は消え、母親役が嫌がられ、一番に人気のある役はペット役という世の中は、どこか変だ。

 十四年前、ノルウェーで半数が女性の内閣誕生、という写真入りの記事を見た。ノルウェーではクオータ制を採用と知った。最初はクオータがなぜ半数なのかわからなかった。知れば知るほど、日本はクオータ制の実現でしか改革できないと、確信をもてるようになった。三年前から、実現をめざす会の設立を呼びかけるが、なかなか話が通じない。大きくキャンペーンをはるようなお金は無い。
 とにかく行動しなければ始まらない。三人以上は会だということで、昨春、見切り発進。秋には福山市で発足できた。個人の資格で参加する会員の会費で運営し、パネル展示などの機会をとらえては宣伝している。試行錯誤の一年だったが、反響は大きく、活動の輪は、波紋のように広がっている。

 日本は先進国首脳会議国の一員だが、男女平等の達成度は世界三十四位。これは三年前の国連調査結果だ。日本以下だったフランスは既に男女同数法=50%クオータを成立させた。上位四カ国は、早くからクオータ制を採用している北欧諸国だ。環境や福祉の先進国は、同時に男女平等政治の先進国でもある。
 クオータ制を日本に紹介している三井マリ子さんによると、発祥の地ノルウェーでは「低下していた出生率は2.0近くまで回復。過労死など無い。健康で長寿な男性が多い」ということだ。1.0近くまで減った出生数、中高年男性の自殺が増加中の日本とでは、どちらの社会が住み良いかは明らかだろう。
 クオータ制は欧州諸国以外にも広がり、既に南アフリカ共和国、インドなども採用。韓国も次の比例区選挙からの採用が決定した。それに較べて、比例名簿を非拘束にする、しないということでもめている日本の政治レベルは、かなしいくらい遅れている。

 オゾン層の減少、温暖化、自然破壊、種々の汚染物質で失われるのは生物の多様性であり、それが警告するのは人類の未来だ。今、まさに私たちは、時代の転換点にいる。
 過去、初の人権宣言国のフランスでさえ、「人」とは男だけのことで、女の人権を唱えたオランド・ド・グージュさんは、断頭台で処刑された。対等と認めないからだ。いじめもセクハラも、根底にある意識は同じだと思う。
 女と男とは補完的で、そして平等な存在だ。これは地球が動いているのと同じくらいの真理である。


 目先の利益ばかりを追い、国の大借金で将来が危ぶまれる今の日本。子どもらに負の遺産ばかり、残してはならない。現実を直視して行動していく勇気が、問題を解決していく。その第一歩となるのがクオータ制の実現である。

(クオータ制の実現をめざす会 代表  神永れい子)

 

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