イラストで読む ブレヒト演劇
 ブレヒト名言集
ブレヒト演劇の特徴は『逆説の文学』です。

社会の矛盾や問題をとりあげて、「どうすれば平和な世の中になるのか、みんなで考えようよ」という考えるエンターテインメントがブレヒト演劇です。
「考えるチカラ」をUPして、めざせ!声優

ガリレイの生涯


英雄のいない国は不幸だ!

違うぞ。英雄を必要とする国が不幸なのだ。

ガリレイの生涯

ガリレオ
うまくいけば、地球が太陽の周りを回っていることが教えられるようになるだろう。
アンドレア
でも、その話は間違ってますよ。僕はこの目ではっきりと見たんです、朝 太陽は一つの場所から昇って夕方違う場所に沈みます。太陽は止まってはいません。見ればわかります。
ガリレオ
お前は何も見ていないよ。お前のしたことはぽかんと眺めていただけだ。ぼんやり眺めるのと見るのとでは違う。

ガリレイの生涯

私の意図は、私が正しかったことを証明することではなく、私が正しかったか間違っていたかを調べることにある。
(弟子たちに)
いいか、君たちは一切の希望的観測を捨てて、観察にかからなくっちゃいけない。
一足飛びに魔法の靴で七マイル飛ぶんじゃなくて、かたつむりの歩みをすること。見つけたいと思っていたものが見つかったときこそ、なおさら疑いの目を向ける。
要するに、地球の静止を証明するという(私が間違っていたことを証明するくらいの)厳しい決意をもって、太陽観察に取りかかることだ。
セチュアンの善人

善人であれ、しかも生きよと言う
あなたがた神様のご命令が、稲妻のように私をまっぷたつに引き裂きました。
わたしは、人にも自分にもいい人間であることはできませんでした。人も自分も同時に助けることは難しすぎます。
ああ、あなた方の世界は本当にむずかしい。苦しみと絶望が多すぎます。
貧乏人に手を差し伸べれば、その手を貧乏人はもぎとってしまいます。見捨てられた人を助ければ今度は自分が見捨てられてしまいます。

善の掟の重荷は私を押し潰しました。
しかし不正を働きだすと、肩で風を切り、いい生活ができるようになりました!

あなた方の世界はどこかが間違っています。

どうして悪い人間がほうびをもらい、善い人間に厳しい罰が下されるのでしょうか。

三文オペラ


誰だってみな善人でいたい 人に施しもしたい
善の世界は神の御国さ 神の恵みは受けたいさ

誰だってみな善人でいたい
でもこの人間世界じゃ 掟は厳しく残酷

誰だって穏やかに生きたい だが世間は甘くねえ
残念だけどその通り 人間は皆悪人ばかり

この世を天国にしたくねえ奴があるかよ?
だがこの世のしくみがそうさせるかい?

だめだ!そうはさせちゃくれねえ

善はいいさ 残酷より
でもこの世のしくみが そうさせねえ

屠場の聖ヨハンナ


こういう仕組みが分かってきました。表面的には
ずっと前から知っていたことですが、全体とのつながりが分かっていなかった!
それがいまはっきりわかってきました。

上の方には少数の人が、
下の方にはたくさんの人が坐っています。
上の人は下の人に向かって
上がって来いと呼びかけます、みんな上で
暮らせるように、

でも、よく見ると上の人と下の人たちの間に
邪魔なものが横たわっています、
それはシーソーの板なんです。
この仕組み全体が
二つの端をもったシーソーなのです、

上の人は上にしか坐らない、
数の多い下の人が下に坐っているからです。
下の人が下にいる限り上の人は上にいます。

もしも
下の人が、自分の下の席を捨てて
上の方にやってきたら、そのときはじめて
上の人が上に坐っていられなくなる、

だからこそ、少数の上の人は、
下の人が永久に下に坐り
上に上がってこないようにしておこうとせざるをえないわけです。

それに下の人の数は、上より多くなければいけない
でないとシーソーは静止していません。それがシーソーってものでしょう。

三文オペラ


住むところが無いもんで
他人の家に押し入る野郎たち

ベソをかくよりはと人の悪口を言う
中傷者、その中でも特に図々しい

パンの皮を盗んでいった女たちは

君らのお袋かも知れないのだ!

厳しさが足りぬだけかも知れないのだ――

お願いだ、あの連中を許してやってくれ

小泥棒たちをもっと労ってやってくれ
だが君らに無理やり戦争や強姦をさせた

大泥棒たちにはそんな必要はない。

君らを血みどろの石の上に寝させ
君らに人殺しや追剥ぎを強いながら

今さら「許し」を乞うている奴らには――
君らの美しい町にまだ残っている埃を

奴らの口にのこらず押し込めろ
そこで忘却について話している奴を

そこで寛容について話している奴を――
そいつらの面をみんなひっぱたけ

重たい鉄のハンマーで。

ガリレイの生涯


真理を知らぬ者は馬鹿だが、真理を知りながらそれをウソだと言う者は犯罪者だ!

肝っ玉おっ母とその子供たち


戦争も初めは馴染めないものかもしれないわね。

いいことっていうのは何でもそういうものかも。


だけど一度花を咲かせれば、あとは満開。

平和と聞いただけで、ギョッとするようになるよ。


ギャンブルと同じね。やめたら負けた分の勘定、払わなきゃならないもの。

戦争をイヤがるのは最初のころだけさ、一旦馴染(なじ)んでしまえば、あとは・・・。

肝っ玉おっ母とその子供たち

(アンナは聞き耳を立てていたが、だんだん腹立たしそうに)

あれは無能な司令官に違いないわ。

なぜだい?
勇敢な兵隊が入り用だって言ったからよ。作戦計画のちゃんとした司令官なら、なんで勇敢な兵隊なんぞがいるの?並の兵隊で十分なはずでしょ。手柄の美談なんぞがたくさん必要だなんて、どこか腐っている証拠よ。

うまくいっている証拠だと思ってたがね。

いいえ、どこか腐っている証拠よ。
司令官や王様が愚かで部下を窮地に引っ張り込むから、決死の勇気なんていう美徳が必要になるし。ケチで少ししか兵隊を募集しないから、兵隊はヘラクレスみたいに強くならなきゃならない。

上に立つものが能なしで配慮が足りないから、兵隊は死なないように、蛇のように賢くならなきゃならない。人に頼りすぎるから、特別な忠義が入り用になる。ちゃんとした国や、いい王様や司令官なら、必要のない美徳ばかり。

いい国には何の美徳もいりはしない。誰もが普通の中ぐらいの人間でいい、臆病者でもかまわないのよ。
暦物語の解説より
ヒトラーが権力を手にしたとき、ブレヒトは唇を噛んだ。「ナチに投票するほど国民が愚かだとは思っていなかった」。
当時のエリートや知識人は、理性しか目に入らない視野狭窄(しやきょうさく)だった。大衆だけでなくヒトラーをも過小評価していた。
だがヒトラーのほうが上手(うわて)だった。

「大衆は馬鹿だ。感情と憎悪だけでコントロールすることができる」。どの感情のボタンを押せば、大衆を動かせるのか、心得ていた。

アンティゴネ


どうか皆さん、最近、似たような行為が私たちにあったのではないか、いや、似たような行為はなかったのではないかと、心の中をじっくりさぐって頂きたい。

セチュアンの善人


お客様、お腹立ちになりませんように。
わたしらにもわかっちゃいるんです、こいつがまっとうな結末じゃないってことは。
どうしたら解決できましょうかね?
どうか、みなさん、ご自分で結末を探してみて下さい!
きっといい結末があると思います、あるはずなんです、きっと!きっと!きっと!
ブレヒト劇に出演した俳優たち
「セチュアンの善人」西田敏行
「セチュアンの善人」松たか子
「セツアンの善人」大竹しのぶ
「三文オペラ」西田敏行
「三文オペラ」沢田研二(蜷川幸雄演出)
「阿呆劇三文オペラ」沢田研二(串田和美演出)
「肝っ玉おっ母とその子供たち」仲代達矢
「母・肝っ玉とその子供たち-三十年戦争年代記」大竹しのぶ
参考文献
ブレヒト戯曲選集第3巻「ガリレイの生涯」 白水社
ガリレオの生涯 光文社古典新訳文庫
戯曲ガリレオ 績文堂
ブレヒト テクストと音楽「セチュアンの善人」 花伝社
ブレヒト戯曲選集 第3巻「セチュアンの善人」 白水社
ブレヒト戯曲全集 第5巻「ゼチュアンの善人」 未来社
ブレヒト戯曲全集 第2巻「三文オペラ」 未来社
三文オペラ 岩波文庫
三文オペラ 長崎出版
三文オペラ 光文社古典新訳文庫
ブレヒト戯曲全集第3巻「屠場の聖ヨハンナ」 未来社
ブレヒト戯曲全集第5巻「肝っ玉おっ母とその子供たち」 未来社
母アンナの子連れ従軍記 光文社古典新訳文庫
アンティゴネ 光文社古典新訳文庫
暦物語 光文社古典新訳文庫
ブレヒト戯曲全集第8巻「例外と原則」 未来社



演劇青年だったミヒャエル・エンデ【モモなどの著作で知られる作家】は、『肝っ玉おっ母』のミュンヘン公演で端役をもらった。
演出はブレヒト自身。じつに尊大で、感じの悪い演出家だったらしい。
しかしエンデたちは大物ブレヒトに興味があった。
劇場の中庭にブレヒトの車が止めてあった。古いポンコツなのに、こっそりボンネットを開けてみると、積んでいたのは、なんとメルセデス製の、ピッカピカのエンジンだった。
資本主義の悪口を言い、世界の変革を口にしても、本気で考えていたのか疑わしい。ずるいところも、ブレヒトの魅力なのだ。
ソ連を賛美し、アメリカを軽蔑したけれど、十数年にわたるナチスからの亡命期間中、ソ連には住もうとせず、アメリカ合衆国で暮らすことを選んだ。
ブレヒトにとって重要だったのは、おもしろい芝居 であって、世界の変革や教育ではなかった。世界の変革や教育は、芝居のネタや小道具にすぎない。
ブレヒトがやったのは、お説教や教育ではなく、演劇の革命だった。厚化粧の感動や陶酔にゆさぶりをかけ、考えることをエンターテインメントにした。

しかし、ちょっと考えれば誰でも「正解」にたどり着けるような問題は、それなりに楽しい。
しかも、それまで当然だと思っていたことが揺さぶられて、認知の逆転や新しい発見につながれば、強い快感が生まれる。
それに、ちょっと考えるということが癖になれば、「悪の凡庸さ」に陥ることもないだろう。【注】ハンナ・アーレントが、ナチス戦犯 アイヒマン裁判のレポートで導入した概念。「誰もが同じ状況になれば同じことをする可能性がある」と説いた。

「今を忘れて夢を見る」ではなく、「夢の中に今を見て」ちょっと考える。それが、ブレヒトの提供するエンターテインメントの方式だ。

状況をクリアに浮かび上がらせるブレヒトの異化は、古い脳(低次脳)ではなく、新しい脳(高次脳)をねらった新種のカタルシスといえるかもしれない。
「暦物語」の解説より 光文社古典新訳文庫
最後に・・・
ガリレオじゃないじゃん。
ヒトラーじゃないじゃん!
これでいいんです!
なぜなら演劇とは、ものまねではなく、作者のメッセージを観客のみなさまにお伝えするにはどうすれば?( 21世紀になって主流となったハンス=ティース・レーマン言うところの原作の自由な使用をうたった「ポストドラマ演劇」の現在(※)「三文オペラ」光文社古典新訳文庫 谷川道子氏の訳者あとがきを参照では、いろんな表現や解釈で作者のメッセージを伝えていく) と考えることが大切だと思うからです。
ヒトラーは【悪】だ。そんな悪者を指示した当時のドイツ国民はどうかしてる、と考えるのではなく
ヒトラーの戦略が、もし現在でも使われたら大変だよね、気をつけよう。というように。
カムイ伝 ヒトラーの関連性
カムイ伝 第一部のもうひとりの主人公・正助は、農民たちの幸せを考えて行動し、そのおかげで農民たちの暮らしは劇的によくなります。

ところが正助は農民たちに殺されてしまうのです。

領代官【武士】のほうが一枚上手だったんです。「大衆は馬鹿だ。感情と憎悪だけでコントロールすることができる」。ヒトラーの言葉をほうふつさせる物語が、カムイ伝第一部です。そう考えると、カムイ伝もウルトラセブンのように、ブレヒト的です。
  • だけど正助は、庄左ヱ門と名前を変えて生きてました。よかったですね。
参考文献
決定版 カムイ伝全集 第一部 小学館
決定版 カムイ伝全集 第二部 小学館
見慣れたことを見慣れぬように
当たり前のことを不思議なように
原則さえもおかしいと考えてほしい。
ブレヒト演劇「例外と原則」より

Voice actor labo 声優演技研究所