イラストで読む 演技のテクニック
カタチから入るのも必要?
演技のテクニック

演技と茶道の関連性
誤解されたことはありませんか?

自分の正直な気持ちを伝えたら、相手に誤解された。
ということは・・・
役の気持ちを正確に読み取って演技をしても、誤解されてしまう可能性だって考えられます。
だからこそ、誤解されないように、役の気持ちを正確にお客様にお伝えする『テクニック』が必要なんですね。
step 1

イラストを使って演技のテクニックをご説明します。
無表情にみえる左のイラストと、右のややゆとりの感じられる表情のイラストに

眼を細めたイラストを重ね合わせると

こうなります。
イラストのイメージが変わりましたね。
変えたのは眼だけです。他の部位は変えてません。でもイラストから受ける印象はまったく変わるんです。

このテクニックは、映画やテレビドラマの撮影現場では、ごくふつうに使われています。
小学校低学年くらいの子役に、目をぎゅっとつぶって、顔をくしゃくしゃにして、口を半開きにして、両手を目の位置までもっていってごらん、というと、泣いているように見えます。
もちろん子役は、そういうポーズをとっているだけです。そこに【感情】はありません。
でも感情がないのに、「泣いている」ように見せてしまうのが演技のテクニックなんです。
step 2

それでは順を追って考えてみましょう。
まず、感情をこめない無表情の棒ぜりふ「おはよう」をつかいます。

このイラストに
棒ぜりふで「おはよう」といわせるのと

下のイラストでは・・・
まったく同じ棒ぜりふの「おはよう」をつかっても受けるイメージは変わります。

つまり、感情をこめない棒ぜりふでも、アニメなどの絵でセリフの印象を変えることは【ある程度】可能なんです。
step 3
もちろん、無表情の棒ぜりふだけでは限界があります。
そこで・・・
声のトーンはやや低めで、
声の大きさはふつうに「おはよう」
このイラストに当てはめると「嫌われてるのかな…」と感じますね。

下のイラストでは
声は高め、少しリズミカルに「おはよう」

「仲がいいお友達」といった感じがしますね。
お気づきのように、声のトーン、大きさ、リズムなどは、喜怒哀楽に代表される感情(人間の気持ち)ではなく、テクニックに分類されます。
しかし、イラストの表情とテクニックを合わせると、あたかもそこに感情があるように人は錯覚してしまうんです。不思議ですね。

これをさらに細分化すると
走ってきたように息を弾ませて、声は大きく、トーンは高めでリズミカルに、下のイラストで「おはよう」

走る、は「行動」。息を弾ませる、は走るという行動で生じた「結果」であり、感情ではありません。
しかしそのテクニックをつかってセリフを言うことで、「うれしい・楽しい」といった感情が、見る側に感じられてくるんです。
茶道と演技の関連性
茶道には、たくさんの細かな決まり事があります。

それはなぜなのか?
決まりごとの通りにお茶をたてられれば、きれいに優雅に見えるからなんです。
つまり昨日今日お茶をはじめた人でも、決まり事さえ守れば、ちょっと見たぐらいでは素人だとは見破られないよ、といったマニュアルでありテクニックなんですね。
ちなみにアルバイトなどのマニュアルは、これの応用です。マニュアルどおりにやれば手っ取り早く戦力になるからです。
これを世間一般的には、「カタチからはいる」などと呼んでいます。
もちろんテクニックだけでは、いずれ化けの皮がはがれてしまいます。だからこそ、「茶道の心」を学ぶ必要があるのです。
演技も同じです。
わたしたちは、「メソッド演技」で役へのアプローチの方法を学び、ブレヒト演劇から「当たり前だと思ってることが本当にそうなのか?常識を疑え」という日常の観察を演技に応用する方法を学んでいます。
しかしだからといって、テクニックが必要ないのか、というとやはりそれは違います。
多かれ少なかれ、人には調子の波があります。「集中しよう」と頑張っても、どうしてもうまくいかないことはあるんです。

そんなときにテクニックは威力を発揮します。
そうすれば、「調子が悪くてうまくいかなかった」という事態は減りますよ。

テクニックと演技の真髄、その両方を学んでいくことは大切ですね。
メソッド演技とブレヒト演劇につきましては、声優演技研究所のサイトで解説しています。下のイラストからどうぞ。【無料です】