ブラームス:交響曲第3番 へ長調 作品90

/スクロヴァチェフスキー指揮 ハレ管弦楽団

(1987年録音)

〜 この演奏、とにかく「響き」がすごい! 〜

 交響曲第3番、実はブラームスの作品の中で私が最も好きなものである。初めての出会いは大学のオケに入って2年目の春。春の定期演奏会のメイン曲がこれだった。初心者で入った私はまだ交響曲のティンパニなどやらせてもらえるはずもなく(できもしない!?)当然舞台袖で聴くこととなったのだが、このときの演奏は忘れられないもののひとつ。小松一彦先生の指揮だったのだがオケともども燃える演奏で「触れたら火傷するぜ」とでもいうぐらい熱い演奏となった。終演後ある先輩が「完成度はともかく、いい演奏だったなぁ〜」としみじみ語っていたのが印象に残っている。まあ、「ブラームスがそんな若い演奏でいいのか?」という意見もあったようだが・・・・・・・それ以来情熱的かつ感傷的で、ブラームスには珍しく歌謡的な旋律にあふれたこの曲にとりつかれている。

 最初の出会いが強烈だったせいか、この曲に関しては「熱い演奏」が好きだ。とくに第1楽章の展開部、第4楽章の主部などはグイグイと前に引っ張っていくような若い演奏を好む。人生も終わりにさしかかろうという老人の曲にそれはどうか、という気がしないわけではないけれど、この曲にだけはそれが許される気がする(その理由として、この曲はブラームスの「恋」が込められていると考えているのだが・・・・詳しくは拙著『世紀末音楽れぽおと』にあります。以上宣伝)。

 で、今まではワルター指揮コロンビア響、スウィトナー指揮ベルリン国立響といった、表現が若々しく響きも少し爽やかな(軽い、という意味ではない)演奏が愛聴盤だったのだが、最近この中に入ってきたのがこのスクロヴァチェフスキー盤。

 一部では結構有名な演奏らしく、また以前に評論家宇野功芳氏が著書の中でこのCDを推しておられた(講談社現代新書『交響曲の名曲・名盤』p170)のを読んだことがあったため、一度は聴きたいなあと思っていた。最近思いがけずものすごい廉価(480円!)で手に入れることに成功し、はやる気持ちの中お気に入りの第4楽章から聴いてみると

「なんじゃ、こりゃ!」

なんかいつも聴いているものと感じが違う・・・・そうか「響き」が妙に固いのか!というぐらい妙に響かない録音。音に広がりがないためなんか安っぽい演奏なのだ。お気に入りのスウィトナー盤の豊饒な響きとはまったく正反対だったので「これは失敗かな」と最初は思った。(この点に関しては先の宇野氏の本文中にも言及されてます)

 とりあえず第4楽章を終え、今度は最初から聴いてみようと第1楽章から順に聴いてみることに・・・・そして全曲が終わった40分後。

「・・・・これ、思ったより良い演奏だわぁ」

 とにかくこのCDの魅力は「響き」だ。というのは楽器の組み合わせ方。全楽章「おぉ!」と思わせる部分がたくさんあり新鮮。特に第2楽章は絶品。暖かくもどこか寂しげな雰囲気が「響き」だけでこれだけ伝わってくるのは私にははじめてだった。もちろん第3楽章も良い。とくにホルンでテーマが再現される直前の弦と管の響き、そして一瞬の「間」はグッと胸にくる。そういった意味でこれは「老成し、孤独な」ブラームスを楽しむ演奏だといえよう。楽器間のバランスがこれほど考えられている演奏はそうないのではないか。オケを細部までコントロールしてるのが本当によくわかる。もちろん情熱、若々しさも十分にあり第1、4楽章もほどよい熱っぽさ。そういった面も十分堪能させてくれます。いや、恐れいりました。

 ただ欠点もあり、まずは音の「広がり」のなさ。そしてそのためもあるが、ハレ管の技術的な問題が耳につく。弦楽器などはもっとうまく弾いてほしいなぁと思ってしまう(これがドイツのオケだったら・・・・)。そしてそういった録音故、この演奏はこの曲を知り尽くした人向け。最初に聴くものではなくいろんな演奏を聴いた後接するべき演奏だろう。そうでないとこの演奏の面白みは半減する。最後に、まあ普通の人は気にならないかもしれないが、ティンパニがかなり「サボッた」演奏。音はいいんだけど・・・・・私はこういう(ロールの)叩きかたはキライです(といってもわかる人しかわからないか・・・)。

 しかしそれらを補ってすごい演奏なのは間違いない。今スクロヴァチェフスキーのブルックナーが結構話題になるのもなるほどと思った。これだけ「響き」にこだわる人だったら、それこそ「響き」が重要なブルックナーはすばらしいものだろうなぁ・・・・・・・でも、私は大のブルックナー嫌いなのだった。まずはほかの作曲家から良いのを探してみようっと。

(99/5/30)

前に戻る