<西本智実“讃”〜全国アマチュアオーケストラフェスティバルに参加して>
さる8月3日から5日にかけて名古屋にて『第29回全国アマチュアオーケストラフェスティバル』が開催されました。このイベント全国のアマチュアオーケストラから奏者を集め二つの臨時オーケストラを作り、2日間の練習・3日目に本番といういわば本当に「お祭り」な演奏会。そして今年の内容は<オール・プロコフィエフ・プログラム>。Aオケは西本智実指揮、安永徹コンサートマスターで『ロミオとジュリエット』抜粋。Bオケは外山雄三指揮、三浦章広コンサートマスターで『交響曲第7番嬰ハ短調(渋!!)』。
毎年全国各地で行っているのだけど、今年いよいよ名古屋開催。しかも会場はかつて知ったる「愛知県芸術劇場コンサートホール」ということで、今回はじめて参加を思い立ちました。
「さ〜てどちらのオケを選ぶかな?」この選択にかなり悩みました。というのも曲目と指揮者の好みがまったく逆になってしまったことが原因。
まず演奏してみたかったのはBオケ『交響曲第7番』〜結構私のお気に入りの作品でCDは当然所有。そして学生時代東京にまでこの曲の演奏会を聴きにいってしまったぐらい。打楽器の使い方が見事なので「いつかやりたい!」と思っていたのだけど・・・指揮者が外山雄三というのがひっかかりました。正直言ってこの人あまり好きじゃないんだよな〜
逆にAオケは指揮者の西本智実が「面白そう」。以前から興味があった指揮者だし、若い人だからきっと一生懸命指揮していただけるのでは・・・・と期待。ただ曲が『ロミオとジュリエット』。これ、プロコの中では苦手な曲のひとつ。打楽器大活躍の『タイボルトの死』もなぜか好きになれない。
どちらも「一長一短」・・・・そんなこんな考えて、結局決めたのは「Aオケ」。その理由は・・・
○『ロミオとジュリエット』は西本智実がデビューCDで録音している曲。かなりつっこんだ面白い指導をしてくれるのではないか?
○『交響曲第7番』・・・やはりどう考えても外山雄三には曲がにあわないような気がする。
○そして・・・やはり西本智実に会ってサインをもらいたい!(最大の理由)
という、本当に真面目なんだか冗談なのか自分でもよく分からない思考回路の出した結論。とりあえず正式な申し込み出しました。
事前の予備調査の結果では「定員を越えている」とのこと。もしかすると「参加お断り」という事態もありえたのだが・・・・でも幸いに6月ごろの事務局からの返事は「参加OK」。
しかし・・・「おお!」と喜んだのもつかの間、担当楽器は「トライアングル」・・・楽譜を確認すると『げ!』なんと全6曲のうちトライアングルがあるのは第1曲『モンターギュ家とキャピュレット家』のみ。しかも出番は中間部のわずか1分たらず。打楽器大活躍の『タイボルト』も自分は参加できず・・・・今回できる限り多くの人に参加してもらおう、ということでこういう楽器配分になったよう。
でも、これにはかなり落ち込み。わずか1分程度の出番・・・正直「3日間自分の時間を費やす価値があるのか?」とも思い、「こんなことなら」と出場の辞退を考えたぐらい。しかもその後追いうちをかけるような出来事が生じる。会社でいきなり上司に呼ばれ「清流君、8月4日の昼間は空いている?」と休日出勤の御達し。最初は「空いていません」と断ったのだけど、「・・・今回はまずいねえ。必ず空けといて」・・・・・・「それなら『空いている?』なんて疑問形で聞くなぁ!!」と心の中で叫びつつ承諾。
「練習にもフルに参加できない・・・」このときは本当に辞退を考えました。その後楽譜をもう一度見たり、また買ってきた西本智美のCDを聴いたり(しかしこのときはチャイコばかり)・・・いろいろ悩んだ結果、ついに思い立って事務局に電話しました。
「・・・すみません。4日の練習が出られなくても、5日本番出させてもらえますか?」
全国から来る打楽器奏者に会ってみたかったこと、そしてやはり一度楽譜受け取ったのならやはり演奏しなければという思いから、出場を決意。ただ不規則な参加が「不可」だったら、やめるつもりだったのですが・・・・事務局の返事は「まあ、いいでしょう。仕事ならしょうがないですね。」・・・これで正式に出場が決定。
・・・と今回の演奏会、音楽的には多大な期待もせず、どちらかといえば「めずらしもの見たさ」「いろんな人々との交流」が目的での参加でした。ですので表HPの演奏会情報にも掲載しなかったし、しかも今回のこのネタ、あえて「見・・聞・奏録」ではなく、この(久々の)雑記で記事を書いているわけです。
ところが・・・「やっぱり行ってよかった!!」打楽器の方たちとの交流も面白かった。久々に交響曲第7番が生で聴けたのも良かった。しかし、なんといってもAオケの「練習および演奏会(および懇親会)」!これはもう予想以上の収穫がありました。そう、題名にもあるとおり『西本智実さん(讃!)』です。久々に『すごい!』そして『良い!』指揮者に会うことができて感激。この方は本当に『素晴らしい!』人でした。
(・・・ああ、前置きがすご〜く長くなってしまった。1週間たっても忘れられないあの3日間の感激、本当は続きを書いておきたい。のですが、これから出かけなくてはいけないので今日のところはとりあえずここまででUP。どうもすんません。後編(西本さん関連の記事)は14日にUP予定です。)
(01/8/12)
「すらっとした黒の特注(?)タキシード」5日の演奏会本番、指揮者西本智実さんの姿です。そして指揮台にあがりきびきびした動作で棒を振られる様子はもう「カッコイイ」の一言。幼少にバレエを経験されており、また尊敬する指揮者としてカラヤンをあげてみえるそうですが、実際のその美しい姿と魅せる動きをみて納得。「まさに『宝塚』だな〜」と思いつつ舞台上で見とれておりました。(・・・その後、他の出演者や演奏会を聴きにきていた人と話をすると、皆一致して出てくる言葉が「まるで『宝塚』みたい」・・・・う〜ん誰でも考えることは一緒やなぁ)
というわけでその指揮姿でもファンになってしまうのですが、私の場合はそれだけではありません。演奏に参加したものの特権でもありますが、やはりその練習風景でまず「この人いいなあ」と気にいってしまいました。
8月3日の午後2時半すぎから全体合奏の初練習。白のシャツ姿で登場された西本さん、挨拶の後はまず様子見といったところで全体の通しです。
さすがに全国からいわゆる「腕自慢」が来ているだけあって臨時オケといっても底力は十分。この難曲、部分的な乱れは多々あるものの音楽の流れは止まることなく進んでいきます。最大の難曲『タイボルトの死』のプレストでも大きな崩壊はなく最後まで行ってしまう。「う〜・・・さすがだなぁ。岐響だったら絶対こうはいかない」と思いつつ聴いておりました。
さぐりをいれつつ指揮を振られる西本さんを観察していると、これが面白い、というか「さすが」といったところ。デビューCDの録音曲だけあって完全に楽譜を把握しているのはもちろん、主要な旋律での歌い方とか途中入ってくる重要な楽器のところではかならず指示が入ります。そしてするどい「眼光」・・・指揮者ならあたり前じゃないかという方もいるかもしれませんが、これが本当に「ぞくっ」と来る・・・・ただ「怖い」というよりなんか「う、良い音を出さないとまずい」というプレッシャーをかける光ですね、あれは。ある種のカリスマ性、もしくはオーラを持った人なのは間違いないと思いました。
そして一通り通した後はいよいよ細かく口頭での指示。それがまた面白い、というか感心したところです。当然リズムが甘いところとか、音程等がおかしいところを指示されていくわけですが、それが単に「オケがヘタクソだから、ちゃんとあわせて!」という感じの指示ではなく、自分の音楽観、自分が作り出したい音楽の形に照らし合わせた言葉でしゃべられるのが印象的でした。例えば『バルコニー』冒頭のジュリエット主題の後、物音が聞こえてくる場面での低弦の動き。「リズムと音程が甘い」というのは簡単ですが、そこで『そこは本当に効果音。もっとびっくりさせるような感じを出して』といった感じ。また『別れの前のロメオとジュリエット』終わり近く、コントラバスによって予告される『死のテーマ』でも「次(墓の前の場面)に続くテーマだから、ここは音程をしっかり。そして歌って聞かせて」という感じで「音程の狂い」を注意していきます。指示に対して明確な目的を持っているので、私も「なるほど」と勉強になるし、またその後の曲の聴きかたも変わってくる。聞いていて楽しかったですね。
またその指示が打楽器に対してもどんどん出てくるのが驚きでした。バスドラム一発にしても「そこ、ちょっと遅れています。次のホルンにつなげるのでちゃんと決めて、ホルンを出やすくしてください。」スネアドラムに対して「その装飾音はすべて前に出す感じ。曲が切迫していくところなので、積極的にどんどんオケを先にすすめてあげてください」など。打楽器に関してはそれぞれの奏者まかせで、全然指示をだされない方もみえるのですがこの方はどんどん注文をつけてくる。しかも曲全体を作る意味での指示でしたのですごく刺激的でした。
打楽器といえば余談をひとつ。自分(トライアングル)の出番は最初1曲の予定でしたが、第5曲『墓の前のジュリエット』で一箇所出番が増えました。譜面では「スネア」がロールのクレッシェンドによって曲を盛り上げ全合奏のフォルテにつなげる部分があったのですが、そこが先生の指示で「トライアングル」がやることに。原因は配られていた譜面が組曲版であり、そこでは「スネア」になっていたのですが、西本さんは基本的に全曲版の楽譜を使用されていた。ですので、全曲版に従って楽器が変更ということです。
そして本番。その場所も近づき立ち上がって楽器を持って構えると、ちゃんと直前に西本さんの指示がこちらに飛んできました。普通こんな出番では指揮者が気にされることあまりないのですが。「うわ!覚えている」と思いつつトレモロでクレッシェンド。心の中は少し緊張、そしてちょっと「うれしかった」ですね。閑話休題。
話は戻って一番驚いたのが休憩時間。楽器を置いてスコアを見ていたら突然後方で西本さんの声が。振り返るとスネア奏者と楽譜を確認しながら打ち合わせしているではないですか・・・どうやら休憩の間控室に戻らずいろんな奏者のところに直接行って指示を出したところなどの確認をしているようでした。自分たちが指揮者のところに行って確認するのは当たり前ですが、指揮者の方から奏者のところに行って確認されているのはかなり珍しいことだと思います。まあ確かに西本さん自身が若い方ですので、奏者の方が年上といった場合があるからなのでしょうけど・・・・でもやっぱり指揮者から動かれるというのはプライドの問題とかあるはず。自分が奏でる音楽を大切にしている、と同時にその尊大ぶらない態度には本当にびっくり。「一生懸命で“本当に”良い人だな〜」
そして練習後に全体のレセプションがありました。さてここで最大の目的である「西本さんのサインをもらってくる」・・・・というわけで、同じ岐響のOsw君、Nks君、Hrさんとともにごあいさつすることに。
・・・いやぁ、ちょいと緊張してしまいました。やっぱり近くで見ると美人です。用意していたCD差し出して「すみません、ここにサインお願いできますか」「いいですよ」とすんなり応じていただけました。らっき〜(サインの画像はこちら)目的達成。
その後少し話をさせていただきましたが、本当に気さくな良い人でした。まったく尊大ぶることなく丁寧に応対されますし、表情もやわらか。練習中のするどい「眼光」とのギャップに私の方が「あれれ」と思ってしまったぐらいです。「“先生”だなんて呼ばないで・・・」という言葉にはこちら「う、どうしよう」と思ったぐらい・・・(ですので、文中も西本“さん”にしてしまいました)。最後写真をとらせて頂いた後、「よろしくお願いします」と握手までさせていただきました。(右がその写真。左からNks君、私、西本さん、Hrさん。西本さん曰く「なんかでかい人ばかり〜」・・・うわ、本当にそうだな、こりゃ)
私の思い込みかもしれませんがこの方は本当に音楽が好きな方であり、そしてその好きな音楽を一生懸命やっている人に対しては誠実に〜練習も普段のときも含めて〜応対してくれる方ではないだろうか、と思います。直に会って話した結果「一生懸命で“すごく”良い人」というのが私の最終的な感想です。
そしてもちろん音楽的な面でも大変素晴らしい方だと思います。
本番の演奏、『タイボルト』でのちょっとした事故などアラがなかったわけではありませんが、音楽の流れや歌い方など西本さんの意図にそったものが出来上がっていたと思います。自分の出番はあまりありませんでしたが、同じ舞台上にのっていて「良かったなぁ」と素直に思いました。
そして今回演奏に参加してこの『ロミジュリ』が好きになりました。特に終曲『ジュリエットの死』は舞台上でも感動・・・・・本当に泣ける素晴らしい曲という認識に変わりました。演奏会後、その感動が忘れられず何度もCDで聴いてしまったほどです。
こんな風に曲の魅力を思い知らされたのはかなり久しぶり。しかも私だけでありません。「演奏会後MDに録音したプロコ、あれから何度も聴いてしまった」人とか「秋に東京で実際のバレエの公演があるけど、ついチケット買ってしまった」人とか、(逆に)「7月に名古屋であった(ロミジュリの)演奏会形式の舞台、やっぱり行けばよかった〜」という人など・・・・演奏会後プロコの『ロミジュリ』が気にいってしまった人がかなり大勢います。参加している人にその曲のよさを改めて伝え、そして演奏ではそのよさを引き出すことができる・・・・なかなかめったにできる体験ではないはず。それを実現してしまう西本さん、すごく素晴らしい指揮者だと思います。
もしチャンスがあれば、ぜひまたこの人の棒で演奏したいです。そしてふたたび音楽を作る面白さ、素晴らしさを体験できればと思います。さきのレセプションで「アマオケはどうです、振りますか」との問いに「ぜひ」と言ってみえました。岐響に呼びたい!!
・・・・西本さんばかり書いてきたので、他のことも書かないと失礼ですね。まずコンマスの安永さん。もうこの人は予想どおり「すんばらしい!」。まず音・・・・終曲でのソロでは本当に「うるうる」ものでした。
そして指導の場面でも、やはり人格者。西本さんの指示が音楽的なこと中心ですので、それをフォローする形で技術的な指示をされることが多かったのですが、安永さんも命令形でなく物腰低いしゃべり方。でもその指示の仕方が見事。最初に必ず我々の「悪い弾き方」を真似して演奏し、「こうではなく、こうやりましょう」と今度は「良い弾き方」を示される。そのおかげですごく分かりやすいですし、またすんなり受けとめることができる。やはり一流の方は教えかたも一流だな、と感じました。
打楽器陣。いやぁ、みなさんいい意味で「バカ」ですね。それぞれの音にこだわりがあるのはやはりどの打楽器奏者も同じ。しかもみなさん、ちゃんと自分自身を追求されているなぁ、と感じました。
そして、ひとつのことに真剣な方というのは、大概面白い方たちばかり。2日目にパートの宴会がありましたが、全員パワーがあるというか、楽しい人たちばかりでした。「やはり打楽器は独特のバカばかり」という自論をまたも確認することができました。
今回の演奏家後打楽器パート内でMLが出来上がりましたのでコミュニケーションがとりやすくなりました。今後も情報交換等有益な交流を続けていきたいと思います。
終演後、ふたたび西本さんの楽屋に行って今回の演奏会のお礼をしてきました。そのときの西本さんの言葉「いい音楽が今回できたと思います」。いや、こちらこそです。本当にありがとうございました!
(01/8/14〜15)

(オマケ)レセプションの時に、もうひとつ西本さんにサインをもらいました・・・なんと「ウチワ」。栄の路上でもらったもの。ついつい調子にのって「これにもお願いします」・・・・結果は右の写真。大変失礼なことさせて本当に申し訳ありませんでした(後から赤面。そして至極反省・・・)でもちゃんと大切にします。